人生に大切なことはすべて絵本から教わった

著者 :
  • 現代企画室
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784773810042

作品紹介・あらすじ

すえもりブックスを主宰し、国際児童図書評議会(IBBY)国際理事としても活躍した編集者の末盛千枝子さんが語った、宝物のような絵本の数々と素晴しい人々との出会い、そして自らの半生。代官山ヒルサイドテラスで1年にわたって開催され、大好評を博したセミナーシリーズを一冊の本にまとめました。人間の生き方のなかに本当の美しさを見据えて伝えようとする「希望の言葉」と出会ってください。



【主な内容】

タシャ・チューダーとの出会い/仕事のしあわせ—ゴフスタインから考える/生きる知恵—シャーロット・ゾロトウとともに/女性の生き方を考える—「ねずみ女房」を入り口にして/家族の風景—The Family of Man/クリスマスの絵本—贈り物について/即興詩人の旅—安野光雅さんと外/アレキサンドリア図書館をめぐって—松浦弥太郎さんと語る/勇気と好奇心—ピーター・シスの絵本を中心に/友情について

感想・レビュー・書評

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  • 長年絵本の編集に携わってきた末盛千枝子さんの、10回に渡るセミナーをまとめたもの。
    東京都渋谷のヒルサイドテラスで2008年4月から2009年3月まで開催されたという。
    優しく親しみやすい言葉でつむがれる、壮大なブックトークのよう。
    幸運なことに登場する本・映画はすべて既知のものだった。
    私が好きなお話を、末盛さんも次々に絶賛される。
    それが嬉しくて嬉しくて、読みながら何度胸の中でVサインを出したことやら。

    お話は、編集のお仕事で出会った作家さんたちの話から入る。
    ターシャ・テューダ、ゴフスタイン、ゾロトウ、など女性作家さんの生き方や人となりを紹介しながら作品のガイドもしていく。一緒にカメラにおさまった写真も。
    ターシャの家には泊めていただいている。
    羨望のあまり卒倒しそうだが、帰るに帰れない距離だったということだ。
    何しろターシャの家の周囲30キロから40キロほどは、一軒の家もないらしい。
    そこを開拓し、ひとり美しく住まうことなど到底できるものではない。
    解説で、静かな中に確かな意志を秘めた人柄が伝わってくる。
    ゴフスタインがキーツと親しかったことや、ゾロトウがセンダックの本の編集者だったことなどにも触れている。

    ことに面白いのは安野光雅さんの講演で、こんなにお話好きな方だったのかと新発見。
    人前で話なんて絶対しないよ。でも「即興詩人」の話なら別だよ。
    というご本人の弁で、本当に鴎外の「即興詩人」の話をされている。
    松浦弥太郎さんとの対談は「アレクサンドリア図書館」の話から入る。
    末盛さんともども、長田弘さんを心底敬愛されているらしい。

    良い話があったとしても、それを生かす優れた編集さんと出版社が存在しなければ本として完成しない。原本を見て、何としてもこれを生かしたいと苦労された話もたくさんある。
    良い本と、伝えようとする意志と確かな技術。
    そのどれもがあって、私たちの手元に良書が届く。
    「美しい」という言葉が数多く登場する本書は、著者の生き方の反映のよう。
    人間の生き方の中に本当の美しさを見据えて、それを出版を通して人びとに伝えようというお仕事なのだ。だから末盛ブックスは、みな美しい。

    子どもの本には希望がなければいけない。
    完全なハッピーエンドではなくとも、悲しんでいる子どもの傍に寄り添うこと。
    将来に希望をつなぐ本に出会っていれば、大人になってからでもかなりのことに耐えていけるのではないか。大切なのは子どもの頃の刷り込みだ。
    満ち足りた状態が幸せなのではなく、色々なことがあっても希望を失わないでいける。
    人を愛していける。
    幸せとはそういうことを言うのではないか。
    甘いと笑われて私はずっとそう思い続けている。
    末盛さんもまさに同様のことをお話されていて、あらためて深く安堵した。

    自身の半生を語る中でも、いつの間にか本の紹介に繋がっていく。
    どれもが宝石のように輝く、清々しい言葉たちだ。
    各ページ下部に、登場する本のリスト付き。
    子どもの本に関わる方、あるいは子どもの本がお好きな方。
    絵本は子どもだけのものじゃないと知っている方全てにお勧め。

  • 絵本という種を播き続けた絵本プロジェクトの10年 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/nisshi981

    現代企画室
    https://www.jca.apc.org/gendai/onebook.php?ISBN=978-4-7738-1004-2

  • 末盛先生の講演を聞く機会がありましたが、
    大好きなゴフスタインや末盛ブックスのお話しがあまりにも少なかったので借りてみました。

    ゴフスタインも、ゾロトウも、素晴らしい芸術には、悲しみのひとはけが塗られているという、子どもの悲しみに寄り添っているという、そんなところがあるのだと。

    ゾロトウって編集者でもあったのですねー。

    壮大な末盛先生の人生のほんの一部を見せて頂きました。

  • タシャ・チューダーと会ったことがあるなんて、
    それだけでわたしの好奇心のアンテナがビビビビ!
    講演内容を文章に起こしたスタイルで、すごく読みやすく、内容も幅広くて面白かった!

  • この本にあった 悲しみのひとはけ ということば。

    よい絵本にはどこか少し悲しさがある。悲しみのひとはけ が塗られている。という表現にぐっときた

  • これを読んで、絵本を選ぶなんて素敵だな。作者さんのことを書いてあったりするから、その絵本に対してより深いところから入れる気がする。
    沢山読みたい本が増える!本への愛情が湧く。

  • 素晴らしい絵本の出版に長く携わってこられた末盛千枝子さんの絵本のセミナー10回分の内容が、沢山の絵本やがそれにまつわるエピソードとともに紹介されています。

    とはいえ、単なる良い絵本を紹介している、という内容ではなく
    人とのかかわりあい方、家族、人生の困難に立ち向かう希望というものが盛り込まれていてタイトルの記す通り、心に深くしみ込んでいくような一冊になっています。

    特に、私の好きな絵本作家でもあり優れた編集者でもあったシャーロット・ゾロトウ。
    彼女のことをもっと知ることができてよかった。
    日常の中の誰もが似たような経験を絵本の中に見つけてほろっとしたり、くすっと笑ったり、そういった優しい光に包まれているかのような雰囲気・・ソロトウの絵本について書かれた著者の思いは、確かにこの本にも共通するものがありました。(Y)

  • 絵本の出版社『すえもりブックス』の代表、末盛千枝子さんの講演をまとめた本です。

    長年多くの絵本作りに携わってきた経験の中から特に優れた作品を紹介されています。

    大人の方にも絵本の世界の奥深さを感じて頂ければと思い、並べてみました。

  • たくさんの絵本が紹介されていたので
    出来る限り読んでみたいです。

  • この方自身が素敵な文章を書くのだけど、そんな素敵な方が読まれてきた絵本たちがその作者のエピソードとともに紹介されているので、今後読みたい本をたくさんストックできてよかった。
    絵本の中から学んだことをこうやってまとめること、大事だなぁ。

    「悲しい本」
    大事な人が亡くなった時、めちゃくちゃ悲しむ、だんだん受け入れていって何度もゆり返しながらやがて静かな悲しみの祈りの気持ちになっていく。

    他人が悲しみや喜びを感じなら生きていくさまを絵本から学ぶって、想像力を高める上で大事なことのような気がする。

  • 資料ID:21100832
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著者プロフィール

1941年彫刻家の父・舟越保武、母・道子の長女として東京に生まれる。彫刻家・詩人の高村光太郎により「千枝子」と名付けられる。 4歳から10歳まで父の郷里・盛岡で過ごす。慶応義塾大学卒業後、絵本の出版社に入社。8年間、主に海外への版権販売を担当する。「夢であいましょう」などの音楽番組で知られる NHKディレクターと結婚、2児の母となるが、夫の突然死のあと、ジー・シー・プレスで絵本出版を手がける。最初に出した本のうちの1冊『あさ One morning』がボローニャ国際児童図書展グランプリを受賞、ニューヨーク・タイムズ年間最優秀絵本に選ばれる。その他、M.B.ゴフスタインなど国内外の絵本を出版。1988年、 すえもりブックスを立ち上げ、独立。まど・みちおの詩を美智子さまが選・英訳された『どうぶつたち THE ANIMALS』やご講演をまとめた『橋をかける―子供時代の読書の思い出』など、話題作を次々に出版。1995年、古くからの友人と再婚。2002年から2006年まで国際児童図書評議会(IBBY)の国際理事をつとめ、2014年には名誉会員に選ばれる。2010年、岩手県に移住。2011年から10年間、「3.11 絵本プロジェクトいわて」の代表を務めた。2023年、市原湖畔美術館で「末盛千枝子と舟越家の人々―絵本が生まれるとき―」展開催。
主な著書に『人生に大切なことはすべて絵本から教わった1、2』(現代企画室)、『ことばのともしび』(新教出版社)、 『小さな幸せをひとつひとつ数える』(PHP研究所)、 『「私」を受け容れて生きる』(新潮社)、『根っこと翼・皇后美智子さまという存在の輝き』(新潮社)などがある。

「2023年 『出会いの痕跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

末盛千枝子の作品

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