このページを読む者に永遠の呪いあれ(ラテンアメリカ文学選集 1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784773890013

作品紹介・あらすじ

ニューヨークに暮らす老アルゼンチン人と彼に付添うアメリカの青年。全編を貫く二人の会話を通して、人間が抱える闇の世界と人の孤独が浮かび上がるプイグ晩年の佳作。

感想・レビュー・書評

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  • 昔の喋くり漫才のような、ダブルボケの笑い飯のような、そこに文学を足した独特の笑いにハマる!間の取り方や力の抜き方がうまくて、絶妙な笑いに転じる。プイグは会話を書かせたら超一級だ。声が聞こえて来る。こんなに信頼できない語り手も珍しい怪作!

  • 無謀にも本書を読もうと考えた人は2種類だろう。
    A.『蜘蛛女のキス』の著者だから。
    B.タイトルがイケてるから
    もしかして
    C.ラテンアメリカ文学が好きだから
    というプロっぽい人もいるかもしれないが、本書を巻置く能わざるってな感じで読んだもの好きな人はまあ、Cさんくらいだろう。

    奥付は1990年とあり、24歳だった自分が高価な本(2800円+税)を買った理由を思い起こすに、
    ①当時よく読んでいた筒井康隆、大江健三郎らがラテンアメリカ文学を絶賛していたから
    ②編集プロダクションに勤めていたため本は経費で落とせたから
    ③タイトルがかっこいいから
    である。

    で、当然ながらこの30年のあいだに数回の挫折があり、今回ようやく読了に成功、しかしもう一度読みたくなるかというと全然そんなことはなく、古書店行きの段ボールにGOGOGO!
    99%が会話、1%が短信という構成の本書、ごめん俺退屈。
    読了できたのは、「なんかこの調子でいけば最後まで行きそうだが、おそらく今後このようなチャンスはないだろう」と感じて頑張ったから。

    読了後に「解説」読んで「ははぁん、なるほどね」と納得すればいいだろうと思って「解説」読んだら、ラテンアメリカ運額と著者の経歴めいた内容に筆が割かれており、本書に関する解説は数行。しかも読み終えた人なら誰しも思う内容で、腰が抜けた。なんだこれ。
    私には、ここの作品紹介にある「人間が抱える闇の世界と人の孤独が浮かぶ上が」りませんでした。

    ひとことで言えば、「かっこいいタイトルはダブルミーニングだった」という本であった。

  • 図書館で借りた本。タイトルに惹かれて借りてみたが、なぜこのタイトルなのかは最後まで読めば分かる。車椅子の老人と介護する青年。2人だけの会話で話が進んでいくのだが、老人は記憶障害を伴っているから話が全く噛み合わない。今言った事を忘れてたり妄想したり疑ったりの繰り返しなので読了するには忍耐が必要だった。作家の作品見てたら蜘蛛女のキスを書いた人なのか〜と分かり、この会話形式のストーリーもなるほど。と思った。

  • 正直なところ僕にはこの小説のよさは少しもわからない。にも関わらず、この人の他の作品も読んでみたいと思うのは何なんだろう。

  • みんな言ってることだけど、タイトルが素敵。
    老人とその付き添いの青年の対話だけで話は進んでいく。序盤から互いの会話は微妙に噛み合ってないが、読み進むにつれ互いの妄想が入り混じり…スリルのある混沌という感じ。
    内容は混沌としているが、会話体なので読みやすい。
    ラストはただただうんざりする(褒めてます)。

  • タイトルに惹かれて読んだのですが、内容にそれ同等の刺激はありませんでした

  • まず読むと呪いをかけられそうな題名に惹かれる。全篇において、車椅子の老人とそれに仕える青年との会話だけで成り立っているのだが、嘘をついたりいきなり罵りだしたりで、不穏な雰囲気に包まれた棘のあるかけ引きの物語だった。2章からは哲学を感じさせる話になったり、少し幻想っぽくなったりするがあからさまに説教くさい所も無く面白い。

  • な、なんという物騒な物言いだこと、『蜘蛛女のキス』や『ブエノスアイレス事件』のプイグが、こんなタイトルの小説を書いているとは、すこしも知らなかったのですが、実はおはずかしい話、わたしの部屋のふだんあまり近寄らないもう何年もさわってもいない本棚から、この本は発見されたのです。ということは、知らない振りして、自分で集めた本なのになさけないですね。ええっと、ホラーっぽいおどろおどろしい内容かと思いきや,ぜーんぜん、例によって地の文をすべて省いた会話でなりたっているのですが、またまた他のどの作品とも違う感じで興味深いのです。ニューヨーク。けっして老人とは呼びたくないような円熟した年を重ねた人と、文字通り青年との会話。政治犯で刑務所にいたこともあるアルゼンチン人のラミーレスは、少し精神に異常のきざしがみえるようで記憶が明らかではなく、介護のパートで来たアメリカ人のラリイと様々な話をするのだけれど、自分の行方不明の記憶を探り出すようにラリイのことをあれこれ聞こうとする。ラリイの経歴はラミーレスの中で同化され混合したかたちで話されるものだから、ラリイは当惑する。過去と現在もごっちゃになって、ますます話がややこしくなる。しまいには夢か現実か妄想なのかもわからなくなってくるというお話。あくまでも会話で押し通すちからわざには、ほとほと感心しますし、小説でももちろんすばらしいのですが、ひょっとして俳優を通した肉声で演じられればまた違った凄さが表現できるかもしれません。気になるタイトルですが、最後の最後で、ちゃんとそれにまつわるオチもついていますから、ご心配なく。

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著者プロフィール

1932-1990年。アルゼンチンの作家。ブエノスアイレスの大学を卒業後、イタリアへ留学し、映画監督・脚本家を目指すが挫折。ニューヨークで書きあげた長篇『リタ・ヘイワースの背信』を1968年に出版、帰国後発表した『赤い唇』(69)はベストセラーとなるが、『ブエノスアイレス事件』(73)は発禁処分、極右勢力の脅迫もあってメキシコへ亡命。世界各地を転々としながら、『蜘蛛女のキス』(76)、『天使の恥部』(79)などの話題作を発表。巧妙なプロットと流麗な語り、現代的な主題で幅広い人気を博した。

「2017年 『天使の恥部』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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