献体 ―遺体を捧げる現場で何が行われているのか (tanQブックス)

著者 :
  • 技術評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774146997

作品紹介・あらすじ

医療従事者の教育・研究のために、解剖体として遺体を捧げる「献体」。この献体を希望する人が増加し、密かに世間の注目を集めている。どうすれば身体を提供できるようになるのか?遺体はどのように解剖され、最後はどうなるのだろうか?デリケートなテーマだけに、語られることが少なかった献体。本書は、その現状を真正面から伝える初めての書籍である。

感想・レビュー・書評

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  • 献体というものを知らない人向けに、丁寧かつ簡潔に説明している書。何より、遺体と向き合う心構えが強調されていた。しかし、「人間の心」というものを大事にしながらも淡々と事実を述べていく様は、読者それぞれの状況や解釈の余地を残すものであった。また、献体のみならず、献体の目的である解剖学についても触れられており、読者の純粋な好奇心をくすぐる。
    また、書の後半の日本・世界の解剖史(解剖学史)は、「どのような流れがあってこの結果になっているのか」を簡潔に示しており、歴史が苦手な私でも非常に理解がしやすかった。時代が下るにつれ解剖の技術の向上していく期待感が史実からもよくわかった。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=24002

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB06336843

  • 坂井建雄 著「献体」、2011.7発行。医療従事者の教育・研究のために解剖体として遺体を捧げる「献体」。プライバシーに関わるデリケートなテーマを扱った書です。献体された遺体は保存処置をされ(1年以上)、解剖される。(正常解剖)(他に、病理解剖と法医解剖が)数ヶ月かけて隅々まで解剖される。終わると火葬され遺族に遺骨が返還される。(大体、献体して2~3年後)献体は、無条件・無報酬だが、献体すると自分の身体をとても大切にするようになるそうです。そして死んだ後も社会の役に立つと。

  • 良く知らないので読んでみた。
    順天堂大学での実態から、海外事情へと話は膨らみ。
    解剖学の歴史にもさらりと触れてある。
    主な主張は医学生の解剖は数が足りてきた。
    次はコメディカルや研究目的に遺体が使いたい。
    まあ、そんな話。

  • ・献体の意味の歴史的推移
    ・各国の献体事情もふまえ、献体の適用範囲について考える

  •  献体の実際と正常解剖の概要。献体された遺体がどのような処置で保存され,解剖学実習がどのように行なわれるのか,かなり詳しい。人体解剖の歴史も概観。
     人体解剖には,正常解剖,病理解剖,法医解剖の三種類がある。医学生・歯学生の教育・研究目的の正常解剖は,95%が献体された遺体で行なわれる。昔はもっと不足していたが,献体に対する理解も広まり,現在では十分な数の献体登録がなされているという。
     献体は無報酬。大病をしたとかで,医学の世話になった人が恩返しのために登録するケースが多いようだ。献体登録していることを誇りにして充実した日々を過ごしている人も少なくない。日本には献体登録してる人たちの交流の場である献体団体があるが,これは世界でも珍しいらしい。
     歴史好きなので,人体解剖の歴史も面白かった。西洋のと日本のと。江戸時代の人体解剖(腑分け)は,死罪の付加的な刑として,刀剣の試し斬りに代わるものとして行なわれた。切腹はもちろん,下手人や磔・獄門は対象外。下手人っていうのは最も軽い生命刑で,遺体は遺族に返還するからできない。
     諸外国の献体事情についても述べてて,かなり意外なことも。アメリカでは医学以外の献体利用もあるらしい。「自動車事故での人体損傷を調べる実験に利用されたり、防弾着を改良するために弾丸や爆弾で人体を攻撃する実験に利用されたりといった事例が報告されている」(p.114)には心底驚いた。航空機エンジンのバードストライク試験で,死んだ鶏を使うのは知ってるけど…。献体って考えたことないけど,アメリカでは絶対に献体したくないな。
     アメリカでは献体者の遺族に報酬を払うことが法律で禁止されているが,日本ではそういう規制はない。無条件・無報酬ということが倫理規範として機能。ほかに,ドイツでは埋葬費用節約のためのプラスティネーション希望者が結構いるらしい。国によって様々だなぁ。
     やはり自分が,家族が献体することを考えると,かなり抵抗があるな。医学には必要だし,死んだらおしまいなので,べつに嫌がる理由もないんだけどね。遺骨が二三年帰ってこないので遺族は少し困るかな?放射能を無闇に怖がる風潮はなんだかなあと思っていたけど,案外同じような心理なのかも知れない。

  • 死後に、医療のために遺体を寄贈する献体についての本。

    言葉としては知っているけど、費用のこととか、実習後のこととか、実務面のことは全く知らなかった。こんなに丁寧に、真摯に扱ってくれるなら、選択肢の一つに充分成り得るな。
    結果的には年齢層はどうなっているのかなーというのがちょっと疑問。若くして亡くなられた人と、老衰で亡くなられた人では実習で得られるものも違うような気もする。医療は身近にあるものなんだけど、専門外の私にとっては未知の世界だなと改めて思った。

  • 臓器移植が知られるようになっている裏で下火になっているかと思っていた献体だが、実はその数も増えているらしい。その裏には献体を支えてきた白菊会をはじめとした献体希望者・家族の会や医学部などの尽力によるところが大きい。
    アメリカなどではモノ扱いにさえ思えるようなことも横行しているのに対し、日本の献体制度はいわば献体希望者という一介の人々たちの良心に基づく行動によって良質の仕組みが維持されている。遺体を医学等の発展に役立てながらも遺体の尊厳を守るやり方は、身体一元論になじむ日本人ならではのものともいえそうだ。

  • 献体に関しての情報が よくわかった。新聞でも 取り上げられてたが、最近は、献体を希望する人が多くなっているのだとびっくりした。私も 献体を 考えてみたいと思った。

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著者プロフィール

順天堂大学保健医療学部特任教授
1953年 大阪府生まれ;1978年 東京大学医学部卒業;東京大学医学部助教授、順天堂大学医学部教授を経て2019年より現職
主な著訳書:『カラー図解 人体の正常構造と機能』(総監修、日本医事新報社);『図説医学の歴史』(医学書院);『人体観の歴史』(岩波書店);ガレノス『解剖学論集』(共訳、京都大学学術出版会);ガレノス『身体諸部分の用途について1』(共訳、京都大学学術出版会)

「2022年 『身体諸部分の用途について2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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