ためらいのリアル医療倫理 ~命の価値は等しいか? (生きる技術!叢書)
- 技術評論社 (2011年9月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784774148373
作品紹介・あらすじ
延命治療をすべきか否か、人工妊娠中絶は正しいか正しくないか…イエスかノーかの二者択一をせまる命題は、医療の現場にはそぐわない。我々のとるべき態度とは、白い黒かの二元論から離れ、ためらいの口調で静かに対象と向き合うことではないか。3.11被災地における体験を縦糸に、命の価値をめぐる考察を黄糸に、数々の修羅場をくぐりぬけてきた感染症医がその経験知をもとに贈る、患者も含め医療にかかわるすべての人に読んでもらいたいリアルな医療倫理の手引き。
感想・レビュー・書評
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タイトル通りの話。理想論を持つ事は重要だけど、実際の医療現場でそれを振りかざすのは逆に悪になりかねない。白黒で決着つけられない世界だからこその難しさがある。正解がないって怖い。患者さんとためらいながら真摯に向き合って、その都度ベストな選択をしていける様努力しなきゃなぁ。
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「リアル」であることに重きを置くと、ある種の人からは嫌われることがあると思う。それはたとえば原理主義的な人。言うまでもないことだと個人的には思うのだけれど、現実は一つの原理で割り切れるほど単純なものではない(その原理がいかに論理的に正しいものであるにしても)。特に「倫理」においてはこれが正解という統一見解など得られないと思う。「倫」の旁である「侖」は❝輪❞を表すから、「倫」とは「人と人との輪(つながり)」のことを言う。そのつながりにおける理屈が「倫理」なわけだから、「倫理」は人と人との具体的なつながりの状況=コンテクストにおいてその都度その理=意味を変えて当然のはず。
筆者もこうした文脈主義(なんて言葉があるかは知らないけれど)に立ちながら(たぶん)、医療現場における「倫理」を考察していく。その結果得られる結論が「ためらい」であるという、タイトル通りの本である。「倫理」に絶対的な正しい原理が存在しえないのだとしたら、その場その場の「つながり」の中で「本当に私は正しいのか」という「ためらい」は必ず生じざるを得ないから。
余談だけれど、医師志望や教員志望の人ってだいたい「患者さん/生徒に寄り添える医師/教師になりたい」って言うんだけれど、現実のリアルなところは〈寄り添えない〉って苦悩をベースに面接で喋ることができたら評価高いと思うんだどなあ。 -
今週は、養護教諭のみなさんにこのテーマで講演します。それにしてもブクログとアマゾンではどうしてこんなに書評が割れるのでしょうね。面白いです。
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語り口が内田先生に似過ぎていて少し苦手でした。内容は平易で、家庭医療学んでいる人なら当たり前なことですが、自力でこういう考えにたどり着くためにはよっぽど試行錯誤されたんだろうなと思いました。
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自らの命よりも大切なある価値、死の価値は距離と時間で変動
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通常の医療場面で考えさせられる倫理について書いています。
医療者にとってあまりにも近すぎて素通りしていた視点です。
http://ameblo.jp/nancli/entry-11624663558.html -
これもフラリと入った図書室で目に入って借りた本。
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命を考える、生活を考える、価値を考える。一概に言えないですよね。
程度として捉える、ためらいつつ捉える。
別著の人が『マニュアルは、現場の個々の問題を無視してる』を具体的に表した本だと思います。 -
理想論を語るのではなく、どれだけ現実にフィットした倫理として考えることができるかを考察した本
白か黒かのように絶対的にならず、相対的に個々の価値を考えること。そして「程度」を吟味する、「どのくらいグレーか」を吟味することが大事、ということ。
患者の気持ちなど分かりようがないという認識を持ったうえで、想像力を強く働かせ、相手の価値観を考慮することで必然的に「ためらいの」姿勢で真摯に向き合うことになる。
著者の本は知識として知ることよりも、「考え方」を得ることができます。その要素に強い魅力を感じます。