ためらいのリアル医療倫理 ~命の価値は等しいか? (生きる技術!叢書)

著者 :
  • 技術評論社
3.78
  • (8)
  • (14)
  • (7)
  • (1)
  • (2)
本棚登録 : 148
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774148373

作品紹介・あらすじ

延命治療をすべきか否か、人工妊娠中絶は正しいか正しくないか…イエスかノーかの二者択一をせまる命題は、医療の現場にはそぐわない。我々のとるべき態度とは、白い黒かの二元論から離れ、ためらいの口調で静かに対象と向き合うことではないか。3.11被災地における体験を縦糸に、命の価値をめぐる考察を黄糸に、数々の修羅場をくぐりぬけてきた感染症医がその経験知をもとに贈る、患者も含め医療にかかわるすべての人に読んでもらいたいリアルな医療倫理の手引き。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • タイトル通りの話。理想論を持つ事は重要だけど、実際の医療現場でそれを振りかざすのは逆に悪になりかねない。白黒で決着つけられない世界だからこその難しさがある。正解がないって怖い。患者さんとためらいながら真摯に向き合って、その都度ベストな選択をしていける様努力しなきゃなぁ。

  • 「リアル」であることに重きを置くと、ある種の人からは嫌われることがあると思う。それはたとえば原理主義的な人。言うまでもないことだと個人的には思うのだけれど、現実は一つの原理で割り切れるほど単純なものではない(その原理がいかに論理的に正しいものであるにしても)。特に「倫理」においてはこれが正解という統一見解など得られないと思う。「倫」の旁である「侖」は❝輪❞を表すから、「倫」とは「人と人との輪(つながり)」のことを言う。そのつながりにおける理屈が「倫理」なわけだから、「倫理」は人と人との具体的なつながりの状況=コンテクストにおいてその都度その理=意味を変えて当然のはず。
    筆者もこうした文脈主義(なんて言葉があるかは知らないけれど)に立ちながら(たぶん)、医療現場における「倫理」を考察していく。その結果得られる結論が「ためらい」であるという、タイトル通りの本である。「倫理」に絶対的な正しい原理が存在しえないのだとしたら、その場その場の「つながり」の中で「本当に私は正しいのか」という「ためらい」は必ず生じざるを得ないから。

    余談だけれど、医師志望や教員志望の人ってだいたい「患者さん/生徒に寄り添える医師/教師になりたい」って言うんだけれど、現実のリアルなところは〈寄り添えない〉って苦悩をベースに面接で喋ることができたら評価高いと思うんだどなあ。

  • 今週は、養護教諭のみなさんにこのテーマで講演します。それにしてもブクログとアマゾンではどうしてこんなに書評が割れるのでしょうね。面白いです。

  • 自分が働き出して3年が経つがそこで感じるようになったことは、医学など科学は如何に曖昧な部分が多いかということ、また医学的な「正しさ」というのは何処まで患者に適応できるのかということだ。インフォームド・コンセントの際や日常診療での患者からの質問に、それはこれこれこうです、と断定口調で話せるのがかっこいい、プロだ、と初めは思っていたけど、そう簡単に断定できるものはほとんどないと強く感じるようになった(知識不足は論外として)。超高齢者への(利益の少ないと予想される)積極的医療、透析を拒否する高齢者との対話など、何を大事にするかという価値観は人様々であり画一的な答えなんてないと確認できた。またコレステロールや尿酸値などの数字がちょっと高いことなどを理由にして、ただでさえ内服薬が多い患者にどこまで医学的正当性を理由に勧めればよいのか、またはそこまでの権利があるのか。「医学的正当性をあえて選択しないことが許容されるとしたら、それはどのような条件下においてか?」このような問いの立て方はこれから自分が医療・患者に向き合っていく上で大事なヒントとなってくれたような気がした。岩田健太郎先生とは一度もお会いしたことはないが、今や私のロールモデルとなっています。

  • 語り口が内田先生に似過ぎていて少し苦手でした。内容は平易で、家庭医療学んでいる人なら当たり前なことですが、自力でこういう考えにたどり着くためにはよっぽど試行錯誤されたんだろうなと思いました。

  • 自らの命よりも大切なある価値、死の価値は距離と時間で変動

  • 通常の医療場面で考えさせられる倫理について書いています。
    医療者にとってあまりにも近すぎて素通りしていた視点です。

    http://ameblo.jp/nancli/entry-11624663558.html

  • これもフラリと入った図書室で目に入って借りた本。

  • 命を考える、生活を考える、価値を考える。一概に言えないですよね。
    程度として捉える、ためらいつつ捉える。
    別著の人が『マニュアルは、現場の個々の問題を無視してる』を具体的に表した本だと思います。

  • 理想論を語るのではなく、どれだけ現実にフィットした倫理として考えることができるかを考察した本

    白か黒かのように絶対的にならず、相対的に個々の価値を考えること。そして「程度」を吟味する、「どのくらいグレーか」を吟味することが大事、ということ。

    患者の気持ちなど分かりようがないという認識を持ったうえで、想像力を強く働かせ、相手の価値観を考慮することで必然的に「ためらいの」姿勢で真摯に向き合うことになる。

    著者の本は知識として知ることよりも、「考え方」を得ることができます。その要素に強い魅力を感じます。

全23件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業。神戸大学都市安全研究センター感染症リスクコミュニケーション分野および医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。著書に『コロナと生きる』(朝日新書、内田樹との共著)、『新型コロナウイルスの真実』(ベスト新書)、『僕が「PCR」原理主義に反対する理由』(集英社インターナショナル新書)ほか多数。

「2022年 『撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岩田健太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×