興奮する匂い 食欲をそそる匂い ~遺伝子が解き明かす匂いの最前線 (知りたい!サイエンス)

著者 :
  • 技術評論社
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本棚登録 : 38
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774150130

作品紹介・あらすじ

香水に「臭い」成分が入っていたり、麝香を化学的に作りだせたり、アーモンドの香りなのに「毒」だったり…、匂いはとっても複雑怪奇。そんな匂いの謎を遺伝子の力で解き明かす。太古の生物は匂えたのか?興奮する匂いは?味と匂いの関係は?…など匂いの不思議に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 491.376-ニイ 300219847

  • [ 内容 ]
    匂いは人の歴史に深く関わっています。
    ムスクやジャコウなど、とても高価な天然香料に魅了されたり、シャネル5番やメントールといった、化学合成によって世界的な商品となった香りもあります。
    そんな匂いですが実は最近まで謎に包まれていました。
    しかし遺伝子研究によって大きく前進します。
    嗅覚は味覚と違って危険を察知できないことや、ある人にとっての異臭が、無臭に感じる人もいます。
    動物との違い、配偶者選択と匂いの関係、ヒトフェロモンはあるのかなど、本書ではそんな匂い研究の最前線をご紹介します。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • <私たちがこれほど多くの種類の匂いを感じ取ることができるのはなぜか?>

    「匂いの科学」を解説する本である。
    体裁としては入門書なのだと思うが、かなり突っ込んだ内容にも触れられていて、非常におもしろく読んだ。

    「五感」という言い方があるが、本書によれば、感覚が何種類あるかに関しては、実はコンセンサスはないのだという。通常、8種程度(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚、平衡感覚、固有感覚、内臓感覚)に分類するのが一般的であるらしい。

    生物が外界のものを感じ取るには、原因となる刺激とそれをキャッチする受容体が必要である。多くの場合、刺激と受容体は、一対一対応であることが多い。
    だが、研究の結果、わかってきたのは、匂いの原因物質と受容体が多対多対応であることだった。

    嗅覚を解明するには、嗅覚受容体を捉えることが必要である。この研究に取り組んでいたバックとアクセルは、「嗅覚受容体より先に解明が進んでいる光受容体に似た形であるだろう」、なおかつ、「匂いの種類が多種多様であることから、大まかな構造が同じで細部が異なる嗅覚受容体が多数存在するだろう」とあたりをつけ、嗅覚受容体を見事に見つけ出し、2004年、ノーベル賞を受賞した。

    こうしてわかってきた受容体の数は約1000種類。匂い原因物質は、一説には40万とも言われている。
    嗅覚が特殊なのは、これらの多くの原因物質と受容体の「組み合わせ」が匂いを作り出していることである。A、B、C、D、Eという5つの原因物質と1、2、3、4、5という受容体があったとして、Aが1にしか結合しないのではなく、それぞれ、Aが1と3と4に結合し、Bが2と4に結合し、Cが1と5に結合し、Dが2に結合し、Eが2と3と4に結合した結果、匂いが生じるということである。刺激も受容体も多い上に、組み合わせで匂いが生じるため、匂いの種類は膨大となる。
    しかも、各受容体は感度が異なり、通常、1と3と4に結合するAが、量が少なければ1と3にしか結合しなかったりする。そのため、多ければ悪臭と感じられるスカトールが少なければ芳香と感じられたりする。

    その他、生物進化と嗅覚、フェロモンの話にも触れられている。
    最終章では味覚についても簡単に述べられる。我々が通常、「味覚」といっているものは、本来の味覚に嗅覚や触覚なども加味されたフレーバーであることからである。

    著者によれば、執筆時の構想は、化学受容という観点で、色覚と対比させながら説明する形だったという。紙数が予定を大幅に超えてしまったため、色覚に関する本は同じシリーズから出版される予定になっているとのこと。こちらも楽しみに待ちたい。


    *バックとアクセルの元の論文は、Linda Buck and Richard Axel, Cell, Volume 65, Issue 1, 175-187, 5 April 1991。嗅覚受容体発見の経緯は、分子生物学のパズルを思わせる手法を駆使して行われており、いやぁ、賢いなぁと思わせる(それと同時に、手間が掛かる力技であり、分子生物学の泥臭さを思わせるものでもあるのだが)。

    *光受容体も嗅覚受容体もGタンパク質共役受容体(GPCR)と呼ばれる膜貫通型タンパク質である。2012年のノーベル化学賞はGPCRの機能と構造を解明したレフコウィッツとコビルカが受賞している。

    *著者は、紹介する研究に合わせて、基礎知識も解説している。親切で簡潔な解説だとは思うのだが、いかんせん、広範囲な研究のバックグラウンドをこのボリュームの本で解説するのは少々無理があると思う。光学異性体、PCR、ゲノム解読の解説の項などは、この分野に馴染みのある人は読み流してしまう部分であり、畑違いの人は眉に皺を寄せつつ「・・・む?」となりがちであるように思う。意欲ある高校生、学部学生あたりが想定読者なのかな・・・?

  •  最近、「スメルハラスメント」という言葉を見かけて、何だそれと思った。その心は、体臭や口臭によって周囲に不快感を与えることだ。いろいろなハラスメントがあるものだ。嫌なのが、終電間際に乗ると酒のにおいがする人が乗ってきてたまらない。それに香水のきつい男女も違う意味でたまらない。

     においに敏感な時代だから、女子力の高い香りのソフラン、匂いが取れるレノア、銀を使った殺菌力で匂いを取るスプレーなどが売れるわけだ。モクモク羊も汗をかくので、出かける時は、ロールオンタイプのものをぬってから外出する。

     今回の本は、匂いにまつわるさまざまな話題が取り上げられている。人や動物を惑わすフェロモンや、味覚、匂いの遺伝子など匂いとは何かを知るのにちょうど良い1冊だ。

     匂いに関することでまだ分からないことはあるそうだ。ある程度、解明されたら新たな視点で、匂いをテーマにした本を書いて欲しいと思った。

  • 「匂い」を感じるメカニズムについて解説したもの。
    最先端の遺伝子研究について言及している一方、文学や歴史にも幅広く触れており、著者の教養の深さを感じさせる。
    文系の自分にとっては、少し分かりにくかったところもあるが、どうやら嗅覚受容体遺伝子というのが肝心な模様。化学的側面や遺伝子学的側面等、多方面から丁寧に記述されており、非常に面白いと思う。
    本書を読めば、きっと遺伝子研究を始めたいと感じる理系高校生は多いのではないか。高校の課題図書に是非取り上げてはいかがか。

  • 2階書架 : WV301/NIM : 3410156379

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