生きるって、カッコワルイこと? (読書がたのしくなる・ニッポンの文学)

著者 :
  • くもん出版
3.78
  • (2)
  • (3)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 32
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774313450

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 古典アンソロジー。
    「古くって新しい。たしかに、うんと昔に書かれたものではある。けれど、いま読んでみても、魂が震える。そんな作品が、ニッポンの文学ーずっとずっと「読み継がれてきた」とは、そういうことだ」(背表紙のコトバ)

    ●蜜柑(みかん)
    芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)
    1892-1927 東京生まれの小説家。夏目漱石に師事。主な作品に『羅生門』『鼻』『芋粥』『地獄変』『蜘蛛の糸』『杜子春』『河童』『歯車』など。
    ・この作品は1919年「新潮」に、『私の出遭った事」の総題で『沼地』とともに発表された。作者は横須賀の海軍機関学校に英語教師として勤務していたので、そのころ体験した通勤時の鬱々とした思いがもととなり、この作品が生まれたそうだ。
    暗闇に映し出された「空から降ってきた蜜柑」は、「暖かな日の色」に染まったかの様。その一瞬の感動が鬱々とした「私」の感情を一変する。

    ●一房のぶどう(ひとふさのぶどう)
    有島武郎(ありしまたけお)
    ・1878-1923 小説家、評論家。東京生まれ。志賀直哉、武者小路実篤らと「白樺(しらかば)」を創刊。主な作品に『宣言』『カインの末裔』『或る女』『小さき者へ』『生まれ出づる悩み』など。
    ・この作品は1920年「赤い鳥」に発表された。幼くして母親を失った三人の我が子のために有島武郎は童話を書いた。『一房の葡萄』を収めた童話集は、自分の体験をもとに創作され、表紙や扉に葡萄をあしらってみずから装丁した。主人公の少年が西洋絵具を盗む行為は、作者が英和学校で実際に犯したことである。その時の恥ずかしさと後悔とが、少年の視点で描かれた作品。

    ●猫の事務所
    宮沢賢治(みやざわけんじ)
    1896-1933 岩手県生まれ 児童文学作家、詩人。主な作品に『春と修羅』『雨ニモマケズ』、童話『よだかの星』『注文の多い料理店』『セロ弾きのゴーシュ』『風の又三郎』『銀河鉄道の夜』など。生存中に書籍として発行したのは『注文の多い料理店』『春と修羅』だけであり、没後にその才能が認められる。
    ・この作品は1926年「月曜」に『寓話 猫の事務所』の題名で発表された。猫の事務所のありさまから、人間社会の仕事上の縄張り、有能な同僚へのねたみ、上司へのへつらいなどを皮肉った作品。同僚に嫌われる猫は現代のいじめ問題にも通じる。

    ●牛をつないだ椿の木
    新美南吉(にいみなんきち)
    ・1913-1943 愛知県生まれ、児童文学作家。雑誌「赤い鳥」出身の作家のひとり。主な作品に『ごんぎつね』『手袋を買いに』『おじいさんのランプ』など。
    ・この作品は1943年没後に刊行された童話集『牛をつないだ椿の木』に収められている。南吉は、自分の周りの生活の中から拾い上げた素朴なエピソードをもとに、物語として脚色したり、ふくらませて仕上げる。

    ●形(かたち)
    菊池寛(きくちかん)
    ・1888-1947 香川生まれの小説家、劇作家。芥川龍之介らと、第四次「新思潮」の同人となる。1923年、「文芸春秋」を創刊。主な作品に戯曲『父帰る』、小説『恩を返す話』『恩讐の彼方に』『入れ札』など。寛の昨比には歴史上の人物や古典にヒントを得た作品が多くある。これは『武将感状記(ぶしょうかんじょうき)』『常山紀談(じょうざんきだん)による。
    ・この作品は1920年「大阪毎日新聞」に発表された。社会や人間の生き方にとって「形」がどんな意味を持つのか、問いかける。

    ●蠅(はえ)文
    横光利一(よこみつりいち)
    1898-1947 福島県生まれの小説家。関東大震災後、川端康成(かわばたやすなり)、片岡鉄兵(かたおかてっぺい)、中河与一(なかがわよいち)、今東光(こんとうこう)らと新感覚派運動を興し、その先頭に立つ。主な作品に『日輪』『上海』『機械』『寝園』『罌粟(ケシ)の中』など。
    ・この作品は1923年文発表。
    大切な荷物を積んだ馬車が崖の下に墜落。沈黙してしまった人間と、悠々を青空へとびあがっていく一匹の蠅の存在。

    ●檸檬(れもん)
    梶井基次郎(かじいもとじろう)
    1901-1932 大阪生まれの小説家。高等学校在学中に結核になり、療養生活を送りながら創作活動を行う。主な作品に『城のある町にて』『Kの昇天』『冬の日』『桜の木の下には』『のんきな患者』など。
    ・この作品は1925年「青空」に発表されたもの。自分の置かれた苦しい状況から抜け出して、今とは違う生活を送りたいという夢想を、創造の世界の中で満たそうとする、心の行為としての小説。

    ●高瀬舟(たかせぶね)
    森鴎外(もりおうがい)
    1862-1922 石見国(いわみのくに。現在の島根県)生まれの小説家、文学博士。軍医として生活を送りながら、創作、評論、翻訳、随筆などの筆を取り続ける。主な作品に『舞姫』『青年』『雁(がん)』『山椒大夫(さんしょうだゆう)』『最後の一句』など。
    ・この作品は1916年「中央公論」に発表された。徳川時代、京都の高瀬川で行き来していた罪人を、大阪へ五平する高瀬舟。その高瀬舟で運ばれる罪人喜助の静かな語りと、同心庄兵衛の自問の中入り込んで、人が生きていくこととはどんなことなのか、読み手も深く静かに考える。現代の「安楽死」の問題にも通じるテーマである。

  • 知っている人ばかり。だけど、はじめて読む人ばかり。
    新美南吉さんと森鴎外さんがよかった。

  • 芥川龍之介の「蜜柑」はなんてーか…人は見かけじゃねえ、っていう…。
    有島武郎の「一房の葡萄」は私の性格が悪いせいかこんな優しい世界あるんかい…ってちょっとびびった…お育ちのいいおぼっちゃんめ…。
    宮沢賢治の「猫の事務所」はまた虐げられる優秀な弱者ものだよ~~~~~~悲しい…と思ったけどこれはちゃんと救出オチ?だった…。
    新美南吉の「牛をつないだ椿の木」は何度読んでも切ないな…一人の善意と行動が誰かの冷たい心を溶かすのかもしれない…。
    菊池寛の「形」は道徳の教科書でもおなじみのあれ。結局人間って形から入るんだよ、っていう。
    横光利一の「蠅」は酷かった…世界の不条理と人間の愚かさを虫だけが見ていた…。
    梶井基次郎の「檸檬」はいついかなる時に読んでも変わってんなこの人・・・いや分かるけど…っていうの。
    森鴎外の「高瀬舟」はやっぱあの刃傷沙汰シーンの描写リアルでウェッてなるし歯痒い兄弟愛に沈黙するしやっぱすげーな…めちゃ暗いけど…。

  • 小中学生向けに解説付き。梶井基次郎の檸檬とか国語で習ったのに、まったく内容を覚えてなかった自分にびっくり⤵国語だけは得意だったのになぁ
    森鴎外の高瀬舟がよかった。
    宮沢賢治は私には?( ̄▽ ̄)?
    まー名作を読んでおくか、的な一冊。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

1892年(明治25)3月1日東京生れ。日本の小説家。東京帝大大学中から創作を始める。作品の多くは短編小説である。『芋粥』『藪の中』『地獄変』など古典から題材を取ったものが多い。また、『蜘蛛の糸』『杜子春』など児童向け作品も書いている。1927年(昭和2)7月24日没。

「2021年 『芥川龍之介大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

芥川龍之介の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×