- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784774313634
作品紹介・あらすじ
「これがほしいの」宿奈がさしだした手の上に、千広が売った小石がのっていた。「疫病に効くとか大神のご加護とか、全部、空言なんだぜ」「知ってる。それでもかまわない。つるつるしていて、まるで水晶みたいでしょう。水晶のこと、氷石ともいうのだって…」ひたむきさを失いかけた少年に訪れる、天平九年の夏の出会い。
感想・レビュー・書評
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過去の恨み辛みを力にして生き抜く千広と、現在をめいっぱい感じきる宿奈。
心地よい時も、命が消えそうなときも、宿命にあらがわず身を委ねる宿奈がとても印象的でした。
そんな宿奈に出会って、千広も世界の見方が変わってきます。
とっても素敵なお話でした。二人には末永く幸せでいてほしいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
奈良時代のお話。解説の先生がお茶目。
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「これがほしいの」宿奈がさしだした手の上に、千広が売った小石がのっていた。「疫病に効くとか大神のご加護とか、全部、空言なんだぜ」「知ってる。それでもかまわない。つるつるしていて、まるで水晶みたいでしょう。水晶のこと、氷石ともいうのだって…」ひたむきさを失いかけた少年に訪れる、天平九年の夏の出会い。
(『あなたもブックトーク』京都ブックトークの会にて紹介)
奈良の都にい疫病が流行っていた。疫病除けの霊験あらたかな石、といって、河原で拾った小石を売る。千尋の考えた金儲け法だ。坊さんの薬草とどっちが効くのだろう?
(『キラキラ子どもブックガイド』玉川大学出版部より紹介)
「これがほしいの」宿奈がさしだした手の上に、千広が売った小石がのっていた。「疫病に効くとか大神のご加護とか、全部、空言なんだぜ」「知ってる。それでもかまわない。つるつるしていて、まるで水晶みたいでしょう。水晶のこと、氷石ともいうのだって…」ひたむきさを失いかけた少年に訪れる、天平九年の夏の出会い。 -
久保田香里さんは、いつも難しい(資料があまりなさそうな)時代を舞台に子ども向けの小説を書く人だが、これも天然痘のエピメディックが起こっている天平九年(737年)の平城京を舞台にしている。
父は遣唐使となって唐に行ったまま戻らず、母を天然痘で亡くした少年千広が、生き抜く姿を描く。
コロナの流行で疫病を描いた小説が注目されたんだから、これもそうなればいいのに。
虐待されながら藤原家で働く少女宿奈との交流は、傷ついた心を持つもの同士が惹かれ合う切なさに胸が熱くなる。
今のような医療もなく、もちろんワクチンなどもなかった時代、それでも生き延びた人々がいたからこそ、今の私たちがあるのだ。
遣唐使とか平城京とか、歴史の教科書で覚えただけの知識が、この物語を読むことで血肉を伴った人間の営みとして感じられるようになるのも、久保田さんの作品のいいところ。
巻末の研究者の解説もとても良い。 -
コロナ騒ぎの最中読んだのでなんだか苦しい
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55点。期待はずれ。可もなく不可もなく。
これ読むなら「鬼の橋」とか「えんの松原」とか読んだほうがよっぽどおもしろいし、歴史に興味がわくと思う。
スイーツ寄りの子なら荻原規子のシリーズとか。
(気は乗らないがつづきはまた今度) -
図書館で書名が気になって手に取った作品。天然痘が蔓延していた天平九年の日本(奈良時代?)を背景に、千広という少年の生き抜く日々を描く。疫病で母や従兄弟を失い、天涯孤独になる千広は深い絶望に苛まれつつも、新たな出会いとそこから生きる希望を見出だしていく。ふわりと香る恋もあり。個人的には安都(あと)のキャラクターが大好き。実際に発見された、その時代の木簡(木の札)や書かれた文字も小説に盛り込まれていて設定に深みを与えている。この物語自体はフィクションでも遠い昔の時代に実際に存在した木簡があるのだと思うだけで、どこか繋がっている気分がする。
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第38回日本児童文芸新人賞受賞:
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天平9(737)年の平城京。父は遣唐使船で唐に渡っていったきり、母は伯父に家を追い出された上もがさ(天然痘)で亡くなり、傷つき孤独のうちに荒んだ気持ちの少年千広が、様々な人たちと出会い支えられながら希望を取り戻して成長していく物語。時代考証をよくされていて細かく描写されているので知るよしもない平城京での暮しが目に浮かぶようでした。物語の構成もしっかりしていて丁寧さを感じる作品です。
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天平時代、母を疫病でなくした千広。遣唐使として唐に行った父は、いまだ帰らない。疫病に効くと嘘をつき石を売っていた千広は、大きな屋敷の下働きの少女・宿奈や施薬院で働く法師・伊真と出会う・・・。
(14才)