レファレンスと図書館 ある図書館司書の日記

著者 :
制作 : 小林 昌樹 
  • 皓星社
3.30
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本棚登録 : 410
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774407180

作品紹介・あらすじ

図書館は、本を貸すだけの場所じゃない!


「与謝蕪村全集はありますか?」「ワニの捕まえ方を書いた本はありますか?」「昭和が終わったらどうしたらいいでしょう?」……
レファレンスカウンターには、毎日いろんな人がやってくる。
昭和最晩年、レファレンス現場の「ジグザグ」な実態を描いた名著、『ある図書館相談係の日記』を大幅に増補復刊。


――当時レファレンスは、貸し出しの付属サービスだと思われていた。そうではなく、レファレンスは、 サービスを通して社会全体の情報資源を有効に活用するためのもの。もっと言えば、ひとびとの生活や仕事、地域社会をよりよいものにしていくと同時に、「知る権利」をはじめとする憲法的な価値を実現するサービスだという、今のぼくの考え方に近い考えを、当時持ちはじめていた。これは今の社会の中で非常に重要な考え方だと思う。(解説対談より)

感想・レビュー・書評

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  • 図書館司書を仕事にする方へおすすめしたい、レファレンス事例集+αです。
    日々、司書がカウンターや電話で受ける質問や相談ですが、その内容は十人十色、千差万別。
    とても難しく奥が深いのです。
    著者の様々な経験や失敗談、補足説明やインタビュー、役立つ内容が満載でした。
    司書になりたいな、司書でよかったなと思える一冊。

  •  まだまだ現在のようにネット社会、ユビキタス社会(死語)になる前のレファレンスの方法や光景が、手に取るようなリアルさで書かれている。実際、リアルをそのまま書いたのだから、そりゃ凄いはずだ。この膨大な事例集は、どのレファレンス本よりも濃密で、凄まじい本だと言える。大串氏しか書けない、そして大串氏も長年のメモなしでは書けない、天下の一書であり永久保存のドキュメンタリーだと思う。
     大串氏はこう述べている。
    【これからのレファレンスサービスは、書誌情報重視という基本を踏まえて、インターネット上と商用オンラインデータベース提供の書誌情報も対象として、世界、日本、地域の書誌情報をきめ細かに探索して、提供すること、また利用者が自分で図書館を使って調べることができる仕組みを整備して、利用者が自分で調べることをすすめ、それを援助する。さらに、例えば利用者が調べた結果をまとめて、発表、発信するところまで援助するなど、サービスを拡張することも考えなければならない】(P.218)

     大串氏は日本文学学校に所属しており、新日本文学会での長谷川龍生や鈴木志郎康について触れている。私も大阪文学学校にいて、長谷川龍生とは何度かしゃべったので、著者に親しみを覚えた。「君ね、そういう堅気の仕事に就くんだったら、もう文学はやめた方がいい」と長谷川に言われて文学を辞めることにしたのはとても興味深いエピソードだ。私は長谷川はそんな真面目な人間には見えないのだが、大串氏は真面目な人と評していて面白い。

  • 図書館員のレファレンス業務の実態がよく分かる本。正直、司書になったとしてもこんな質問に回答できるのかと不安を覚えるような問い合わせが多数よせられる実態が分かり、レファレンス業務に腰が引けてしまう。司書の専門性の高さと、レファレンスの奥深さを垣間見た。
    レファレンスが、情報を利用者に有効活用してもらえる様に提供して社会課題の解決につなげるとともに、憲法の知る権利、基本的人権の実現にも寄与する社会的機能であるという言に、改めてその意義を学んだ。

  • 『ある図書館相談係の日記 都立中央図書館相談係の記録』の増補版。昔図書館で借りて読んだが、今回は購入。索引や当時の都立中央図書館のレファレンスマニュアル、国立国会図書館小林晶樹氏の解説対談もある。以前も読んでレファレンス事例に驚いていた。今回は著者の特別区協議会調査部での調査事例に特に驚く。特別区協議会は各区の行政問題の協議や財政調整などを行うところであり、協議する上で様々な資料が必要だった。そこで著者は事前に協議会で設定されたテーマを調査し、論文・記事検索、調査レポートの作成、重要な論文・記事等のコピーを付けたそう。図書館司書の本気度がうかがえる。自分もそれぐらいしないと…。所蔵目録を「小説のように読め!」というようなエピソードもかなり好き。

  • 図書館学の授業を思い出した。インターネット以前の検索は分類カードで調べたりして、不便だったのだなぁ。家に居ながらにして情報を得られる時代に感謝。

  • 司書さんの仕事をちゃんと知った一冊。
    今はネットが普及しているのでかなり方法は変わっているけれど、知りたい情報を正確に早く見つけるという任務は今も変わらない。
    また自分も含め、学生の利用教育不足はこの時代から顕著であり、もっと問題視されるべきである。

  • ここで描かれるレファレンスの現場は昭和と平成の端境期で、インターネット前夜の話だ。しかし本書を読み進めながらレファレンス業務の実態を掴んでゆくと、誰もがインターネット経由で世界中の情報に触れられるはずの現在でも、レファレンスという存在が重要であるということがわかってくる。
    おぼろげな情報、質問者の背景や気持ちと膨大な知識、プロセスを結びつけ必要な情報へと掘り下げていく知恵にはただ驚くばかり。
    一方で、犯してしまった失敗や横柄な態度をとられたことにより感じた不快感など人間的な部分についても書かれており、実にリアルな「レファレンス」業務の実態が垣間見える。

  • 裏話的なおもしろさ。
    レファレンスって大変よね。。

  • 1994年刊行の『ある図書館相談係の日記』増補版。東京都立図書館でレファレンスを担当していた職員の、1988~1989(昭和63~平成元年)の記録。
    調べ方に、やはり時代の違いがある。調査手段は参考図書やカード検索がメイン。コンピュータ検索は、不完全なタイトルを部分一致で検索できて便利といった感想が述べられている。現代で言えばGoogleであたりをつけるような感覚だろう。整理の遅れにより引けない部分が多いという話も、過渡期ならでは。
    助詞の「を」は「お」で検索とか、外国人著者名は姓・名の順序といった、当時の検索ツール基礎知識でのつまずきが度々出てくる。そんなことユーザが知る訳ないのだからツールの側がなんとかしてよ、と思ってしまう。逆に言えば、実際そういう点が裏側で改良されてきた先に、現在の環境がある訳だ。

    時代が違うから本書での調べ方自体をそのまま覚える訳にはいかないのだが、考え方を学ぶ素材になる。図書やカードというモノを使い分けることによって、書誌調査なのか事実調査なのか、今何をしているのかが、当事者のメモながら俯瞰しやすい。また、たとえば自館の作った索引やOPACならば、○年以前のデータは引けないといった仕組みの制約に通じることができる。内容は変われど「『を』で検索したらヒットしない」といった問題は現代のツールでも起きているが、見えにくくなっている。裏側の仕組みが何の説明もなく日々変わるGoogleなどは、その意味では最悪かもしれない。

    本書は「日記」なので、調査過程のみならず、クレームやわりと率直な感想まで書かれているのが生々しい。レファレンス事例そのものは、現在はレファレンス協同データベース等で随分人目に触れるようになっているけれども、このレベルの生記録は色々な意味で公開できないだろう。その点でも、ある程度古くなったから出せる情報ではある。
    都立図書館のレファレンスだが、地方在住の人から電話がかかってきて地元の図書館に相談するよう言う、あるいは学生に、大学図書館を案内するという場面がしばしば見られる。このあたりの傾向はどう変化したのだろう。

    解説対談つき。こちらは著者の職業人生振り返り的な面もあり、図書館史としても読める。

  • 東京都立図書館のレファレンス担当だった著者の現場での実態を日記風にまとめたもの。1994年に刊行された「ある図書館相談係の日記」を2019年に増補改訂したもの。1988年の出来事を扱っているので内容的にはやや古くなっている箇所はある(Internet普及以前なので、今ならもっとネットが活用されているだろう)だろうが、具体的な手順やノウハウは興味深い(ただ索引が揃っている図書館という施設を最大限に活用した調査法なので、個人の調べ物にそのまま適用できるかは微妙なところか)し、業界内幕的な読み物としても楽しい内容。
    読んでいて一箇所気になるところがあって、都立図書館では子供に変わり親が図書館に調べてものの相談にくることを「有栖川の母」と呼称しているという記述があって、これの元ネタが判らない。図書館に相談してみるべきか?

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著者プロフィール

1948年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業後、東京都立中央図書館勤務、特別区協議会調査部、東京都企画審議室調査部をへて、昭和女子大学へ。現在、昭和女子大学名誉教授。著書に『レファレンスと図書館』(皓星社)、『図書館のこれまでとこれから』『挑戦する図書館』『調べるって楽しい!』『これからの図書館・増補版』『図書館の可能性』『文科系学生の情報術』『世界文学をDVD映画で楽しもう!』『DVD映画で楽しむ世界史』(いずれも青弓社)、共著に『図書館概論』(学文社)、『触発する図書館』(青弓社)、編著に『読書と図書館』(青弓社)など。

「2021年 『まちづくりと図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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