だから、日本人は「戦争」を選んだ (オークラNEXT新書)

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  • オークラ出版
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784775519592

感想・レビュー・書評

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  • 【コメント】
    本書の主張は「日本が大東亜戦争を戦った理由は、人種差別への
    憤りと差別の撤廃であった」ということである。
    主張の筋道のたてかたは、読んでて納得いくものだった。

    白人が植民地で現地人に酷い扱いをしたことや、アメリカの
    日本人に対する不当な扱いを紹介し、当時の世相を伝えている。
    また第一次世界大戦後のパリ講和会議の国際連盟委員会では、
    日本が積極的に人種差別撤廃に動いたことや、大東亜会議を
    開催し参加各国の代表者の会議にかけた思いなども紹介して
    いる。

    【内容】
    本書では日本が大東亜戦争を戦った理由はなんだったのか
    著者の考えを述べている。著者の主張は「人種差別への
    憤りと差別の撤廃を目指した」戦いだったということである。
    当時、白人たちは世界中に植民地を広げ原住民である有色人種に
    過酷な使役を負わせ、激しい差別と虐待があった。
    そんななか日本も植民地にされかねない状況で、どう振る舞った
    のかが語られている。

  • 昭和天皇独白録のお言葉「この(戦争の)原因を尋ねれば、遠く第一次世界大戦後の平和条約の内容に伏在している。日本の主張した人種平等案は列国の容認する処とならず、黄白の差別感は依然残存し加州移民拒否の如きは日本国民を憤慨させるに十分なものである。又青島還付を強いられたこと亦然りである。かかる国民的憤慨を背景として一度、軍が立ち上がった時に、之を抑へることは容易な業ではない」を引き、多くの日本人がこぞって戦争を選んだ理由は、人種差別への憤りが「人種差別撤廃」「植民地支配打破」という大義に昇華したものであるとする。
    著者は、領土的野心、経済的理由等様々な理由があったことも事実であり、「人種差別撤廃」「植民地支配の打倒」と言った大義も、度重なる日本人への侮辱に対する憤りに端を発したものであり、日本が純粋理想のみを追い求め続けてきたとはいえないものの、我々の父祖が掲げた「大義」それ自身に誤りは無かったはずだとする。
    実際、大航海時代から第二次世界大戦まで欧米国家が有色人種を白人と同等とは見なさず、有色人種の国家、地域を植民地支配し、これに対抗しうる有色人種国家は日本だけであったといえるだろう。
    従って、アメリカを初めとして欧州各国に対し大義の戦争であったという主張はできるのではないかと思う。
    しかしながら、中国や、韓国に対し、だからこの戦争は間違っていなかったとはいえないのである。日本人はこの地域を植民地支配し、漢民族、朝鮮民族を差別したのである。
    開戦が欧米諸国との関係の中でやむを得ない事であったとしても、その遂行については大義とは裏腹の行いであったと考えざるを得ない。この主因が軍部の独走であったとはいえそうにも思うが、これを許したのはやはり、国民の義憤であったのだろう。
    そんなことを考えると、今の中国・韓国と同様ではないかと思わないでもない。中国は国民の憤り、憤慨を抑えることができず、現状の問題を第二次大戦の日本人の責任とし、領土の拡張主義を進める。韓国は国民の怒り、恨みの感情を反日に向けるのである。
    これは東アジアに共通する民族性なのであろうか。

  •  戦後に育った我々の知っている戦争の共通の認識として、かの戦争は軍人の驕りとリアリティの欠如が愚かで無謀の戦争を起こしたということである。しかし、戦争への渇望とその空気は当時の知識人や文化人の著書から読み取れる。なぜ、日本人は戦争に走ったのか、戦後歪曲された歴史観の中で、どれが真実なのかという疑問が生じる。そこで、本書では、昭和天皇の言葉から考察している。
     「この戦争を尋ねれば、遠くは第一次戦争后の平和条約の内容に伏在している。日本の主張した人種平等案は列国の容認する処とならず。黄白の差別感は以前残存し加集移民拒否のごときは日本国民を憤慨させるには十分なものである。また、青島返還を強いられたことまたしかり。かかる国民的憤慨を背景として一度、軍が立ち上がったときに、これを抑えることは容易な業ではない。」と。パリ講和会議で日本が提案した、人種差別撤廃条項が多数決で勝ったにもかかわらず、全会一致で賛成と見なしたウィルソンによって否決されたことが、先のカリフォルニアで起こって日本人排斥運動での日本人の憤怒に拍車をかけることとなった。つまり、民族の解放を目指した日本だったが、米英の植民地侵略と白人至上主義により民族としての誇りを否定された。先の戦争は、このような民族的屈辱が発端だとしたら、今教えられている歴史は、真に日本人としてのアイデンティの崩壊を招くものではないかと改めて思ってしまう。

  • 一般的には、侵略のためにアジア諸国にひどいことをしてきたと、自虐的に批判される大東亜戦争(太平洋戦争)だが、黄色人種への人種差別、日本人国家としての独立自尊という切り口で、日本人にとっての大義名分はなんだったのか、なぜ大多数の日本人が対米開戦に賛成したのか、当時の日本人の気持ちについて説いている。
    ちょっと右寄りかも知れないが、当時の日本人の気持ちに触れられたような気がして、少し安心させられた。

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著者プロフィール

昭和58年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院修了。現在、拓殖大学客員研究員。専攻は政治哲学。著書に『だから、改憲するべきである』(彩図社)、『政治とはなにか』(総和社)、『逆説の政治哲学 正義が人を殺すとき』(ベストセラーズ)等がある。

「2015年 『人種差別から読み解く大東亜戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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