完全版 マウス――アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語 (フェニックスシリーズ)
- パンローリング株式会社 (2020年5月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
- / ISBN・EAN: 9784775942215
感想・レビュー・書評
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アウシュヴィッツの過酷さが漫画で描かれる。漫画だからこそ伝わる相手、伝わる事実もあるのだろうか。ユダヤ人はネズミ、ドイツ人はネコ、など動物に例えられている。
「夜と霧」で読んだ内容が、ここでも描かれる。どうやって生き延びるか、そして仲間を監視、虐殺する立場を与えられた者。いずれにせよ過酷という言葉だけでは伝えきれない気がする。
この機会に調べてみると、ドイツによるヨーロッパユダヤ人の犠牲者は600万人、戦前に950万人だったとされていて、2/3が犠牲になったことになる。しかし、世界のユダヤ人を絶滅させるのは非現実的で、一体、いつから何を目的に、この虐殺が始まったのかは、個人的には調べてみないと分からない。ただ、ドイツ本国の犠牲者よりも、ポーランドの犠牲者が圧倒的に多い。ポーランドを併合してから始まった?
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第二次世界大戦を生き延びたユダヤ人の父から
語り聴いた物語をマンガ化し、マンガ作品として
初めてピューリッツァ賞を受賞
アウシュビッツを生き延びた父は悲惨な思い出を語ろうとはしないが、マンガ家の息子のため、また後世に語り継ぐために重い口を開く
ユダヤ人はネズミ、ポーランド人はブタ、そしてドイツ人はネコで表現されている
ユダヤ人がポーランド人に化けるときはブタのマスクを被っている、ただそれだけで誰も、ナチスもユダヤ人だとは気づかない
ナチスは600万人ものユダヤ人を虐殺したけど、ユダヤ人の外見とかで殺したわけじゃない、“ユダヤ人”とレッテルを貼った人間を殺したのだ
エアロバイクを漕ぎながら訥々と語る父が愛おしい
物語はアウシュビッツへ -
なんと!肝心なところで終わってしまう!この後どうなるのか気になりつつも、息を潜めて、命の危機にさらされて怯えながら生きるということがどういうことか、漫画ながらもリアルに描いており、息苦しくなる。父親に当時のことを聞き取る様子もリアルだ。
現在と過去を行き来しながら読むことができ、その時代に入り込み過ぎず、時々現実に引き戻される。 -
著者の父親から聴き取ったアウシュヴィッツの話を獣化して描くという変わった作品なので一読の価値はある。父親は彼の語る思い出のみで描かれるわけではなく、現在の彼も著者の視点から容赦なく描かれているので、彼を良い面もあり悪い面もある一人の人間として読むことが出来る。また、生きのびた人間の視点なのでサバイバルの要素も強い。私は後半を読んでいて、個々の人間の愚かさは変わらないが、積み重ねた歴史に学ぶことで少しはマシになるのかなと思った。
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アウシュビッツを生き延びた父母を持つユダヤ系アメリカ人による漫画。父親から聞き取った話を漫画にしているのだが、80年代(聞き取っている時期)の親子のコミュニケーションのエピソードと、WW2当時の話が複層的に語られる。
ユダヤ人をネズミ、ドイツ人をネコ、ポーランド人を豚、フランス人をカエル、アメリカ人を犬と、国籍/人種よるパターン化を行っている点は、日本の戦中漫画「のらくろ」と共通している。ユダヤ人がポーランド人に扮して行動するときは豚のお面をつけて行動するというのは漫画ならではの表現。
アウシュビッツから生き延びた父親は、現代においてはアウシュビッツからともに脱出した前妻とは死別し、再婚した女性(彼女もアウシュビッツサバイバー)との不仲に悩み、極端な吝嗇で周囲を困らせている人物。
彼の詳細な記憶に基づくアウシュビッツの描写は絵によって説明がされるため、とてもビビッド。彼は、金時計などの蓄え、機転と要領、語学力(英語)があったため生き延びることができたが、何十万人もの人々は声を残すことなく殺されたということに戦慄する。 -
アウシュビッツの悲劇と普通の庶民の日常問題を絡めたストーリーで、何が人の人生の苦しみかを考えさせる。でもやはり戦争が最も人間を愚かにすることは間違いない。
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薄いマンガと思っていたら内容がぎっしりと詰まっていたアウシュビッツに送られたポーランドのユダヤ人の体験記であった。
マウスが主人公となっているがとてもよくわかる。
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