それぞれのファン研究: I am a fan (ポップカルチュア選書「レッセーの荒野」)
- 風塵社 (2007年7月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
- / ISBN・EAN: 9784776300359
作品紹介・あらすじ
体温差のある叙情。これは、社会学研究者6人が紡ぎだす「fan」というせつなさの森である。
感想・レビュー・書評
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「ファン」の行動を研究した本。
「そこまでして何が楽しいのかねー?」と、ファンという人々に懐疑的な視線が向けられることは多いだろう。
答えは、享受している作品であることも、それ以外の同じファンとの交流といった要素であることもある。
その「何が楽しいのか」を、ジャンル毎に、記述しようと試みた本である、というと、上手に説明できる気がする。
具体的には、
・同人誌
・ボーイズラブの二次創作
・エロゲー
・総合格闘技
・宝塚歌劇団
・ジャニーズ系アイドル
の6つの分野が取り上げられている。
正直なところ、筆者が違うだけに、学術的な記述としてのクオリティだったり、文章としての納得感には大きな幅があるのだけれど、また別の分野のファンである自分の目から見ても、全編通して親近感?のようなものを感じる。
「幅がある」ということは、今一なのもある一方で、質の高いものもある、ということ。
個人的には、同人誌とジャニーズ系アイドルのファンの記述がそれ。
同人誌は、主に「コミケ」という場の運営者に焦点を当てていたのだけれど、無償スタッフがスタッフ活動そのものを楽しみにしている、という事実に、「コミックマーケットと言う場には何が求められているのか?」という必要性から迫れていたのが見事だと思った。
一方、ジャニーズ系アイドルのファンについては、嫌いなファンを誹謗中傷する「怪文書」についての量的な分析を行っている。それ自体は、豊富なデータを収集した妙でしかないのだけれど、面白いのが、その「ジャニーズファンをやめたい!」と考えても仕方ないようなケースを、「ジャニーズアイドルとの親近感」という楽しさの裏側と言うか付随するものとして位置づけている考察。とても納得感がある。
本書の中でも言われていることだけれど、こういったカルチャー研究が陥りがちな、ジェンダー論や、「サブカルチャー=反抗だ!」という議論を意図的にだろうが、上手に避けられていて、読みやすく好印象であるのと同時に、納得感もある。
日本人って、そんなもんなんだろうな。勿論、良い意味で。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白いです、特にヲタクが読むと。
先生のファンになったきっかけのひとつ。