- 本 ・本 (39ページ)
- / ISBN・EAN: 9784776400172
感想・レビュー・書評
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文・絵ともに、有名な『世界を動かした塩の物語』と同じコンビ。
絵本でここまで可能なのかと、驚くほどの力作だ。
日本人にとってはマグロやサンマ、エビやウナギの方が身近に感じるかもしれないが欧米の歴史上重要な役割を果たしてきたのはタラだという。
それが、精密な絵と力強い筆致で語られている。
表紙絵を見て、これがタラだとは分からなかったワタクシ。
特徴は、斑点だらけの身体と顎の下にヒゲのような触手をぶら下げているところ。
口に入るものなら何でも飲み込むから、釣り上げるのは簡単らしい。
そんなタラの生態から入り、海の仕組みや漁のできる場所についての説明もある。
そしてバイキングがタラを利用して活動していた話に展開し、バスク人もピルグリムファーザーたちもみんなタラを食べて大西洋を渡り、世界の歴史が動いていく。。。
冷凍技術もなかった頃、タラは塩干しにしてかちかちに乾燥した状態で各地にもたらされた。
これが相当な利益を生み、あちこちでタラを中心に貿易が行われ、タラが世界の歴史や経済を動かしていったという
ウィットに富んだ絵でタラの料理法もいくつか紹介されている(中には頭の揚げ物もある!)
どれもみな、初めて聞くような料理法ばかり。三百年以上も前の食べ方だものね。
いくら何でも捕りすぎではないかと問題になった時もあったらしい。
ところが、おびただしい数の卵が生まれるのだから、船で運べる限りはいくら捕っても構わないだろうというのが、19世紀末頃の科学者たちの見解だったとか。
その後タラをめぐる戦争が起き、排他的経済水域である200海里が決まっていく。
何でもそうだが、気づいた時は失われている時で、もはや間に合わないのかもしれない。
最後は、タラが絶滅することで起こる生態系の変化に眼を向けている。
冬の間、切り身を入れて鍋料理にした家庭もさぞ多かったことと思う。
そのタラが、ひとの歴史にひと役もふた役も買っていたとは驚きだ。
北欧の海を旅するようなはるかな感覚で読んでいると、現実につき戻される。
魚にとって、最大の敵は人間だったとはね。
新鮮な視点で読める壮大な歴史本で、子どもよりも大人にこそおすすめ。
描きこまれた絵が素晴らしい。これを見ないのは本当にもったいない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦争の原因にもなったことのある魚、タラについて詳しく綴られている大人向けの絵本です。
ニシンと同様に経済を揺さぶる力を持つ生物であり、その生態や歴史や漁法等が素晴らしい絵と共に解説されています。
かつては大量にいたようですが、産業革命以降の漁獲量増加により個体数が減少しているようです。
命ある生き物ですが、人間にとっては貴重な食料資源でもあります。
理由はどうであれ大事にしなくてはなりませんね。 -
大人の絵本ですね。
「世界を変えた塩の絵本」と同じ匂いの本でした。
資源というのは何事にもよらず限りのあることを伝えないといけないのでしょうね。それなら日本のクジラ捕鯨だって、保護しながらとっていることを認めてもらいたいなあ・・・ -
664.65 : 漁労.漁業各論
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タラと人類の歴史。
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鱈(塩鱈)が奴隷貿易に深く関係していたことを初めて知った。17世紀にはもう奴隷貿易をしていたとはヨーロッパ(そしてアメリカも)の豊かさは血塗られているんだなぁ。
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司馬遼太郎先生も書かなかったのは知らなかったのか?鱈を干魚にして遠洋航海の保存食糧としたバイキングの子孫がヨーロッパに定住して遠洋渡海しなくなったのち、勇敢なバスク人は北アメリカ沿岸漁業で獲れた鱈を塩漬けにして食べやすくして売出し大儲けした。漁場は秘密にして海浜地帯に拠点も作って住んだ/ピルグリム・ファーザーズがやってきて漁業も知らず農業も苦手、原住民からトウモロコシを分けてもらったり奪ったり/フランスとイギリスが北アメリカ大陸は(ずっとあとに来た)コロンブスから継承した領土と主張してバスク人を締め出した
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マーク カーランスキー (著), S.D. シンドラー (イラスト), 遠藤 育枝 (翻訳)
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2015/2/17 & 2015/2/24 2週間続けて
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世界をかえた魚が「たら」
疑ってしまう題名だが、あらためて人類の歴史の
ふしぎを思った。おもしろかった。
絵本であるが、大人が楽しむ本だと思う。