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本 ・本 (32ページ) / ISBN・EAN: 9784776401537
作品紹介・あらすじ
「きのうの よる ゆきが ふりました。しずかに しずかに ふりました。」というはじまりの言葉に、しんとする。
舞いおちる雪のように淡々と流れていく詩のようなストーリー。
静かに、深く、祈りをこめて、遠い星をながめているような気持ちになる絵本です。
感想・レビュー・書評
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クリスマス絵本特集、その12。
表紙の、光り輝く銀色に囲まれ、雪結晶の舞う中、消えずに燃え続ける、ロウソクの火には、何か人間でいう感情や表情といった、確かな存在感が見え隠れしているようで、とても印象に残る。
きのうの よる ゆきが ふりました
しずかに しずかに ふりました
あさひが ゆきを てらして
きょうというひの はじまりです
きらきら まぶしい はじまりです
あたらしい セーターを あみました
きょうというひに きる ために
あたらしい ぼうしと マフラーを あみました
きょうというひに にあう ように
ロウソクに ひを ともします
しずかに あかるく
きょうというひを てらします
序盤は、その女性の、新しいものたちに包まれてロウソクに火を灯す姿に、自分自身への祝福とともに、どこか静謐で厳かな雰囲気も漂わせていたのが印象的で、それはクリスマスツリーを連想させる、彼女の帽子からも感じ取れた、『きょうというひ』に懸ける思いのようであった。
そとは つめたい くうきです
ゆきで ちいさな いえを つくります
なかに ロウソクが はいるくらいの
ちいさな いえを
たくさん たくさん つくります
できた いえに ロウソクを ともします
ちいさな あかりが
チリチリ ゆれています
きえないように きえないように……
荒井良二さんの絵は、とても自由で、それは子どものイタズラ書きのようなものから、花を模した柄を編み込んだもののコラージュまでと、様々でありながら、絵全体として見ると、不思議な統一感があることに加え、どんなタッチで描いても感じられた、その素朴で温かい雰囲気の中、原初的な自然の厳しさに囲まれながら、ただ直向きに、小さな家を作り続ける彼女の後ろ姿が忘れられない。
そして、それらひとつひとつに、ロウソクの火を灯し続ける彼女の『きえないように』という、その祈りに込められた思いとは、いったい何なのだろうか?
おそらく、それは彼女自身の祈りだけではなく、それを見た人(読み手)によっても様々であり、それは、自分自身のことであったり、大切に思う人のこと、はたまた、世界各地で起こっていることに対しての祈りでもあるのだろうと思われた、そんな同じ世界に生きる全てのものに対するような、慈愛の精神を彼女の後ろ姿に感じられたからこそ、忘れられないのだろう。
祈りというものは、個人が唱えて完結するものではないことを改めて実感し、本書に於いては、その火が消えない限り、次にそれを見た人が、それに込められたものを感じ取り、また祈る。消えない限り、それは永遠に繰り返されて、その祈りの輪は、次から次へと広がっていき、やがてそれは大きな力へと変わっていくことを、荒井さんは表したかったのではないかと、私は思う。
それは本編に於いても、彼女がロウソクを灯し続ける中、既に点灯されている家に佇む人達の絵からも感じられた、人から人へと繋がっていく素晴らしさであるとともに、きっと、それを見たとき、何かハッとさせられるものを呼び起こすであろう、その火は、もしかしたら命であったり、自然環境であったりして、だからこそ、どんなに小さな火でも消えないことに意味がある。
しかし、現実にはロウソクの火はいつか燃え尽きてしまうことから、その希望には、所詮は絵空事といった儚さを窺わせるようでもあり、消えないように保ち続けるというのは、おそらく現実世界の、耐えられないような辛いことに擬えることが出来そうで、そう考えると、却って、それらの絵にも悲しみが宿ってきそうに思われる。でも燃え尽きたら、また次のそれを灯せばいいだけの話だし、その火は、自分自身の中で消えないようにすればいいといった、心の祈りでもあることを、本書の絵から感じられた時点で、もう充分なのだといった、私達自身の心構えの問題だとも思うのである。
そして、その希望も決して儚いものではないことは、本書の始まりの、どこか絶望的な暗さだった、夜の雪景色の絵と、もうひとつのそれとの明らかな空気感の違いからも分かり、何故ならば、それを生み出しているのは、どんなに小さいながらも消えずに灯し続けている、小さな祈りの結集した、大きな私達の力なのだから。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
今日という日のために、雪で小さな家をたくさん作り、そこにローソクをともします。消えないように、消えないように…。今日という日の小さな祈りが消えないように、消えないように…。クリスマスの時期に読んでほしい、心にしみる厳粛な雰囲気に包まれた絵本です。4~5歳くらいから
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荒井良二まつり。
クリスマスだとは明示的には書いていないけど、クリスマス絵本として読んでも違和感ない。
冬のある特別な日に、雪の家を作りロウソクを灯す話。ロウソクが、祈りの灯火が、消えないように祈る。しんしんと降り積もる雪と繰り返しのあるフレーズに静けさを感じる、癒しの一冊。-
shokojaianさん、こんにちは。
荒井良二祭り、改めてその作品の多さに驚かされます。
そして本書は私も昨年読んでいまして、とても思...shokojaianさん、こんにちは。
荒井良二祭り、改めてその作品の多さに驚かされます。
そして本書は私も昨年読んでいまして、とても思い出深く感じているのは、その絵から醸し出されるような厳かで凜とした静謐な雰囲気でしたので、レビューを読んでいて共感できましたし、祈るということについて、襟を正すような気持ちになったことも覚えており、クリスマスにこうした絵本を読むのも良いなと感じました。2024/12/08
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静かな一冊。冬の日、雪が降った次の日、そして祈りを捧げる。気持ちが静かに落ち着く。
きのうのよるにゆきがふりました
しずかに しずかに ふりました
きょうというひの はじまりです
セーターをあんで、ローソクにひをともして、ロウソクの家を何個も作り、中にいれる。
きえないように
きえないように…
そらを みあげて いのります
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荒井良二さんの絵、かわいくて大好き!
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きょうというひがあることに感謝したくなる。ロウソクの家を一つひとつ作り、火を灯して小さく祈り続ける彼女の後ろ姿は神々しく感じた。
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出版されたのは2005年なのだけど、3.11のことを思ったあとに読むとそのための祈りのような気がしてくる。
それ以前にもこういう悲しい出来事はたくさんあって、そういう出来事たちのための祈りの絵本なのだろうか、と思った。
可愛らしい絵に、読みやすいひらがなの文章。そこにたくさんの小さな祈りが溢れてて、読んでると何だか涙が出てきます。 -
私の「今日」の純度は低い。
たいがいの年寄りと同じように
一日が長い、と言いながら、
年末に、もう正月!と驚いている。
ろうそくの灯りが消えないように
消えないように
そうやって大切に
毎日を生きていけるといいのだけれど -
きえないように きえないように…
なんだかちょっと泣きたくなるような。
なんだかちょっとうれしくなるような。
なんだかちょっと切なくなるような。
祈るような気持ち。
荒井良二さんは、なんでこんな絵と文を書けるのだろう。
優しくて切ない、でも大事にしたい言葉たちが集まった一冊でした。 -
音読する。娘がきえないように を一緒に繰り返す姿が愛しい。息子は詩的すぎて関心持たず。
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