- 本 ・本 (48ページ)
- / ISBN・EAN: 9784776404347
作品紹介・あらすじ
子ども時代のピーターは、いわれた通りに絵を描き、いわれた通りに考えていた。ビートルズなど自由な世界がはいってきて…。自由を夢見るピーターの前に、かべは厚く立ちはだかる。
冷戦下のチェコで育った作者ピーター・シスの自伝的絵本。
感想・レビュー・書評
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角川武蔵野ミュージアムの中東欧棚に置いてあり、中東欧世界にも絵本にも今興味があるので読んでみた。
ピーター・シスは1949年チェコスロバキア生まれの絵本作家(2012年には国際アンデルセン賞画家賞)。本作は自伝的作品で冷戦時代におけるソ連支配下のチェコを記録。
読んで気づいたのは、2021年に練馬区美術館で開催されていた「ピーター・シスの闇と夢」の作者だということ(気になったけど行けなかった)。2020年には日本とチェコの交流100周年だったのを記念してチェコ共和国大使館も後援していた。
ポスターに載っていた、空飛ぶ自転車がスポットライトを浴びる絵が印象的だったんだけど、本作に出てくる一枚だったとは。そして、「空飛ぶ自転車」は「西の世界に自由に飛び立つ」希望の象徴であり、「スポットライト」は「反逆者を監視する社会」の風刺だったんだ…と理解した。
「ピーター・シスの闇と夢」解説ページより
日記に基づく自伝的絵本『かべ 鉄のカーテンのむこうに育って』を発表し、チェコ出身の絵本作家として世界的な評価を確立します。ソ連下の故郷で表現の自由を制限された辛い経験や、その中でも夢や希望を抱き続けていたことなどを描写した本作は、シスのアイデンティティーを想起させる記念碑的な作品と言えるでしょう。
https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202107021625192960詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第二次世界大戦後、東西冷戦時代のチェコスロバキア。<ベルリンの壁>を建設したソ連の「鉄のカーテン」に閉ざされた共産党支配のもと、自由を束縛されながら悩み、成長し、夢を追いかけた著者の暗い時代の自伝的絵本。 モスクワからの指令に従うチェコスロバキア政府、ロシア語の授業(強制)、政治的教育(強制)、国家への忠誠(強制)、宗教的慣習(妨害)、電話の傍聴、郵便物の開封、密告、謀殺・・・。ペレストロイカ(再構築)とグラスノスチ(情報公開)の儚き夢の果てのロシア、その行方が懸念される警告の書として読む。
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マドレンカシリーズの絵本作家ピーター・シスの自伝的絵本である。1949年にチェコスロバキアで生まれた作者は、少年時代を共産主義政府の監視下で過ごす。鉄のカーテンの向こう側で、国家への忠誠を示し、教わったことに何の疑問を持たずに絵を描いていたシス少年は、やがて、教わらないこともあることを知り、ビートルズを知り、プラハの春を迎えるが、さらなる試練を迎えることになる。
青少年時代を悩み、夢を追い続けた絵本の中のシス少年の不安げな表情から、冷戦時代の東欧の少年たちの心情を察することができる。本の装丁は、段ボールに穴を開けた手作り風、表紙の星型の壁の中にいる少年は、監視されていることすら知らないようである。本文に出てくるシス自身の日記は、冷戦時代を知る貴重な資料である。2008年コールデコット・オナーブック受賞。 -
絵本の体裁ではあるが、大人向け。共産主義の社会が実際どのようなものだったかを、子ども(から青年)自身の立場で描いている。描いている現在はアメリカ在住の大人であるから、もちろんその視点も加わっている。
「チェブラーシカ」で、ピオネールが赤いスカーフを首に巻いて奉仕活動し、それを見たチェブラーシカが「ぼくもピオネールに入りたい」と憧れるシーンがあったが、実際にはピオネール参加も奉仕活動も強制であったこと(しかしジプシーの少年は入れてもらえなかった、つまりあからさまな差別があった)などが描かれる。密告を奨励し、資本主義は腐敗しているとの洗脳を幼いころから教育として受けるので、疑う気持ちなど微塵もない。『スターリンの鼻が落っこちた』と合わせて読むといいと思う。
この本ではさらに、どんなに政府が規制してもビートルズやストーンズやギンズバーグといった自由な資本主義文化が入ってきて、敏感な若者たちはそれを求めずにはいられない様子が生き生きと伝わってくる。
ジーンズは、初めは労働者の作業服という理由で許されていたが、欧米に憧れる若者が着るようになったら、西側諸国の退廃のしるしだと禁止されたとか、吹き流しの絵を描いたら、風はどっちから吹いているのか(西から東に吹いていたら西側のイデオロギーの侵入を認めたことになる)、政府に確認され、「君の風は正しい方向に吹いていた」と言われた、など、笑い話としか思えないようなことが実際にあったというのは、歴史の証言として貴重だ。
シス自身の幼いころからの写真や、作品、日記がふんだんに使われており、中身のぎっしりつまった大判のこの本が1600円なら安いと思う。 -
忘れてはならないコトがここにも、、、、
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難しいなぁ。
なかなか難しいなぁ。
娘にどういうこと?って聞かれて、上手く答えられなかった。
漠然と分かるんだけど、言葉にして説明ができない。
社会科の先生に来てほしい。
でも、「子供を洗脳することは簡単だ」ということと、「みんなで夢を持つことが希望につながる」ってところが心に残る。
教育なんて洗脳よね。
子育てだってある種の洗脳よ。
何かがおかしいと気付ける教育をしないといけないって思ったよね。 -
寒々した読みごたえ。悲惨さが伝わってくる。
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「冷戦下のチェコで育った絵本作家の軌跡を描く自伝的絵本。いわれた通りに絵をかき、いわれた通りに考えていた子ども時代。 やがて、ロックンロールやビートルズといった自由な世界の音楽が入ってきて、世界は少しずつひらけはじめる。 1968年プラハの春。そしてその終わり……。自由を夢見るピーターのまえに、かべは厚く、大きくたちはだかっていた。 」(BL出版書籍紹介より)
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ひこ氏 中
著者プロフィール
ピーター・シスの作品





