- Amazon.co.jp ・本 (49ページ)
- / ISBN・EAN: 9784776404446
感想・レビュー・書評
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英国生まれの短い素話で「だんなも、だんなも、大だんなさま」というのがある。
ひとりの娘を女中に雇っただんな様が、家じゅうの色々なものに独特の名前を付けていく。
その名前の奇抜さに笑っているうちに、話はきりきりと進んでいく。
この本は、その素話へのオマージュのような味わいがあり、なんとも愉快な一冊。
作者は【マドレーヌ】のシリーズで有名なルドウィッヒ・ベーメルマンスさん。
文章も絵もシンプルでちょっととぼけた味があり、読みながらくすくす笑いが漏れる。
そして翻訳は江國香織さんという素敵な組み合わせ。
オーストリアのメルクという小さな町に住む、善良なバティストさんは65歳。
かつては多くの王様たちの下で忠実な執事として働いてきた。
さてある日、新聞広告で九番屋敷のハンガーブルグ=ハンガーブルグ伯爵が男性執事を
求めている事を知る。
さっそく応募して採用されるが、この伯爵が「大だんな様」だったというわけ。
身の回りの様々なものに、独自の名前を付けていくその可笑しさ。
【この世のすべてのものがひどく間違って名づけられていることに胸を痛めている】からと
【犬】は【互いに互いの友達】で、バティストさんは【何か持ってくる】という名前に
なったりする。
さぁ、いっぱいある変な名前を、覚えるだけでも大変。
そしてこの後、とんでもない展開になっていく。
最後はとても笑えないのだが、やっぱりしみじみと可笑しくて笑いがこみ上げる。
オチもよく出来ていて、何だか子どもの頃の自分を思い出してまた笑ってしまうのだ。
私もまた、身の回りのあらゆるものに自分だけの名前を付けていた。
「自分だけのもの」が欲しくてやっていた、ひめやかな遊びだったので
伯爵とはだいぶ違うが、オチは酷似している。
バティストさんの優秀な執事っぷりも拍手大だし、伯爵の世間からのズレっぷりも見事。
バティストさんと伯爵と犬と猫は、この後幸せに暮らしたんだろうな、と十分に想像させる。
おっとりした静かな出だしとは裏腹の展開も、おおいに楽しい。
翻訳された江國さんも、楽しかっただろうなぁ。
大人向けの、ちょっと品のある人間喜劇。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ベーメルマンスにしては、オチとしてわりと分かりやすく落としてると思う
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ザ・忠実な執事のバティストさんの新しい就職先の
ハンガーブルグ伯爵はちょっと変わった人。
「この世のすべてのものが、ひどくまちがって名づけられている」と言い、いろんなものの名前を付け直しますが…
みんなが伯爵に振り回される姿に笑えます。でもこのオチでいいのか…(kei)
名前付け直しのエピソードとオチまでがちょっとまだるっこしいかなぁ。でも付け直す名前のセンスはステキ!(i44) -
ハンガーブルグ=ハンガーブルグ伯爵の屋敷ではたらくことになったバティストさん。犬のことは「互いに、互いの、友達」、ベッドのことは「夢の箱」というように、いろいろなものを違う言い方で言うよう、伯爵に言われ…。
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イラストは可愛らしくて、おはなしも楽しくてわくわくしたけれど、オチがこざっぱりしすぎている感が…。
このくらいがちょうどいいのかなぁ。 -
言葉のテンポがよく,ちょっぴりシニカルなユーモアも楽しめます。
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執事のバティストさんの新しいご主人・ハンガーブルグ=ハンガーブルグ伯爵は、ものに新しい名前を付けることにした。その変わった名前のおかげで…。
イギリスの昔話「だんなもだんなも大だんなさま」を元にしたベーメルマンスの楽しいお話。
小学校低学年でもOK -
バティストさんは長年優秀な執事としていろいろなお城で働いてきましたが、今は猫と二人暮らしでさびしく思っていました。ある日、ハンガーブルグ=ハンガーブルグ伯爵が執事を求めているという広告をみつけて手紙を送ると、早速採用の返事がきたのです。バティストさんは張り切って仕事を始めましたが、伯爵がちょっと変わったことを言い出したのです…。
昔話の「だんなもだんなもおおだんなさま」をモチーフにしたナンセンスな物語。ユーモアたっぷりでおもしろいけど、登場人物に名前が与えられた分、昔話の滑稽さが消えてしまったかな。 -
長年様々な人の忠実な執事として暮らしてきたバティストさんと新しい旦那さまの愉快なお話。ある夜、火事が!「互いに互いの友達が、爪のぼりを追いかけて、足持ち上げをおりて行ったんです。」バティストさんが消防署長に言ったこの言葉の意味とは?一章のバティストさんの紹介、二章のお屋敷と物語が動き出すまで暫く辛抱。三章からニヤニヤ、四章で一気に加速します。イギリスの昔話「だんなもだんなもおおだんなさま」に類似。「互いに互いの友達」というのが好き。絵がたくさんで読みやすですが、漢字が多いので小学校中学年くらいからかな?欲を言えば、タイトルがもう少しユーモラスでもよかったかなー。
著者プロフィール
ルドウィッヒ・ベーメルマンスの作品





