あみかけクジラ (クジラむかしむかし)

  • ビーエル出版
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本棚登録 : 42
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784776408895

作品紹介・あらすじ

紀伊国・太地の大男、でんじは暴れものだが、村一番の漁師だった。ある日、入り江の外に現れたクジラをしとめようと、でんじは一人で立ち向かう。雄々しいその姿に仲間たちも心動かされ、村をあげてのクジラとりが始まった。

感想・レビュー・書評

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  • 何気なく読み聞かせをはじめたら、とても深いお話だったので不意をつかれて動揺…!
    親子クジラと、生きるためにクジラ狩りをする人間たちの、戦いのお話。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    ある貧しい村があった。
    村人たちは、入り江に入ってくるクジラを見て、「あいつらをしとめられれば、暮らしは楽になるだろうか」と考え、しぼりだした大金をつぎ込んで、クジラを狩るための道具をそろえた。村はさらに貧乏になった。

    入り江に親子クジラが入りこんでくる。
    子クジラをしとめようと村人たちは必死になるが、しかし、網がかからずしとめられない。
    母親クジラは子クジラをかばうように泳ぐので、子クジラにはもり1本しか刺さらない。
    すると、のんだくれのでんじが、「手をかすぜ」と、あみの端をもち、海へともぐっていく…

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    赤羽末吉さんの絵を目当てに手に取ったのですが、読んでみて、あまりの話の深さに心が震えました。

    貧しいが故、生きるためにクジラ狩りを決意した村人たち。
    クジラに罪はないけれども、クジラをしとめなければ自分たちは食べていけない現実。
    一方、子を守って必死に逃げる母クジラ。
    クジラからしてみれば、理不尽きわまりない人間の仕打ちに、怒った母クジラは、猛烈に抵抗し暴れます。
    網をかけようと海に潜るでんじは、母クジラの勢いにひきずられ、あがってくることができません。

    でんじをひきずる親子クジラが大きく描かれた見開きがあります。
    画面の半分以上を占める、親子クジラの身体、その隅に描かれた母と子の目は、なんとも言葉に言い表せないような感情をもった目でした。(26、27ページ)
    かなしいとか、せつないとか、怒り、苦しみ…そんな一言では、この親子クジラの目に宿るおもいは語れないなと感じました。

    やるせなさを抱えたまま、最後のページにたどりつきましたが、そこにはこの話を昔話として村の子どもたちに語る、ひよりじいさんの言葉がありました。

    「おまえたちも、ええ、クジラしゅうになれよ」(32ページ)

    ここまでお話を読んできたあとで聞く、この言葉は、ひどく重く、やるせなく、響きました。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    本作は1973年に出版された絵本の復刊だそつで、「クジラむかしむかし」3部作のうちの第1巻です。
    1巻の1という字が、もりの形をしているところもまた、この絵本をなんとも伝えようとする著者たちの情熱を感じました。

  • 人、鯨どちらが死んでもおかしくない。互いに守るものがあり生きる理由がある。そんな生物の戦いの話。

  • クジラと人が命と命でぶつかる

  • くじらむかしむかしの1冊。生きるためにくじらを捕ろうとする人間、そして子供を守るため逃げるくじらの母。現在も捕鯨を行っている和歌山県太地町を舞台とする。

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著者プロフィール

1931〜2010年。奈良県五條市に生まれる。
日本児童文芸家協会会長、梅花女子大学教授などを歴任。主な作品に『新十津川物語』全10巻、『山へ行く牛』(偕成社)、『サーカスのライオン』(ポプラ社)などがある。1993年、北海道新十津川町に「新十津川物語記念館」が開設される。
紫綬褒章・旭日小綬章を受章。

「2021年 『かくれみの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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