- Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
- / ISBN・EAN: 9784776408895
作品紹介・あらすじ
紀伊国・太地の大男、でんじは暴れものだが、村一番の漁師だった。ある日、入り江の外に現れたクジラをしとめようと、でんじは一人で立ち向かう。雄々しいその姿に仲間たちも心動かされ、村をあげてのクジラとりが始まった。
感想・レビュー・書評
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何気なく読み聞かせをはじめたら、とても深いお話だったので不意をつかれて動揺…!
親子クジラと、生きるためにクジラ狩りをする人間たちの、戦いのお話。
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ある貧しい村があった。
村人たちは、入り江に入ってくるクジラを見て、「あいつらをしとめられれば、暮らしは楽になるだろうか」と考え、しぼりだした大金をつぎ込んで、クジラを狩るための道具をそろえた。村はさらに貧乏になった。
入り江に親子クジラが入りこんでくる。
子クジラをしとめようと村人たちは必死になるが、しかし、網がかからずしとめられない。
母親クジラは子クジラをかばうように泳ぐので、子クジラにはもり1本しか刺さらない。
すると、のんだくれのでんじが、「手をかすぜ」と、あみの端をもち、海へともぐっていく…
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赤羽末吉さんの絵を目当てに手に取ったのですが、読んでみて、あまりの話の深さに心が震えました。
貧しいが故、生きるためにクジラ狩りを決意した村人たち。
クジラに罪はないけれども、クジラをしとめなければ自分たちは食べていけない現実。
一方、子を守って必死に逃げる母クジラ。
クジラからしてみれば、理不尽きわまりない人間の仕打ちに、怒った母クジラは、猛烈に抵抗し暴れます。
網をかけようと海に潜るでんじは、母クジラの勢いにひきずられ、あがってくることができません。
でんじをひきずる親子クジラが大きく描かれた見開きがあります。
画面の半分以上を占める、親子クジラの身体、その隅に描かれた母と子の目は、なんとも言葉に言い表せないような感情をもった目でした。(26、27ページ)
かなしいとか、せつないとか、怒り、苦しみ…そんな一言では、この親子クジラの目に宿るおもいは語れないなと感じました。
やるせなさを抱えたまま、最後のページにたどりつきましたが、そこにはこの話を昔話として村の子どもたちに語る、ひよりじいさんの言葉がありました。
「おまえたちも、ええ、クジラしゅうになれよ」(32ページ)
ここまでお話を読んできたあとで聞く、この言葉は、ひどく重く、やるせなく、響きました。
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本作は1973年に出版された絵本の復刊だそつで、「クジラむかしむかし」3部作のうちの第1巻です。
1巻の1という字が、もりの形をしているところもまた、この絵本をなんとも伝えようとする著者たちの情熱を感じました。
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人、鯨どちらが死んでもおかしくない。互いに守るものがあり生きる理由がある。そんな生物の戦いの話。
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クジラと人が命と命でぶつかる
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くじらむかしむかしの1冊。生きるためにくじらを捕ろうとする人間、そして子供を守るため逃げるくじらの母。現在も捕鯨を行っている和歌山県太地町を舞台とする。