- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784777710089
作品紹介・あらすじ
巨匠レイモンド・チャンドラーが生んだハードボイルドの名作の数々は驚くべき美意識で彩られていた。代表作『長いお別れ』をはじめとする小説の描写のなかにさりげなく込められたおしゃれの極意を見事に読み解く。
感想・レビュー・書評
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フィリップ・マーロウとは レイモンド・チャンドラーが書いたハードボイルドの小説に登場する探偵。その小説の中にはファッションの話がちりばめられているが、洋服の材質や仕立てでその当時の階級やさらにはキャラクターも予測できるという。チャドラー氏はかなりのファッション通であるらしい。小説の中で男性モードを知り、美学を語る上で楽しめる。
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面白かった。フィリップ・マーロウ登場の作品群を、文学的にではなく、敢えて服飾の専門家が、マーロウやその他の登場人物たちのファッションに注目して書いたなかなか斬新なマーロウ論。作中の人物像からチャンドラー本人のダンディズムにまで思いをめぐらせている。
確かに、これまでマーロウものを読むときは謎解きや、人物の秘められた思いにばかり関心がいくことが多かったが、ファッションに注目して読むこともできるのか!と目から鱗。マーロウものをまた読みたくなりました。 -
読んだ。
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『本の雑誌』2007年1月号の記事で、青山南さんにファッションを訳する恐怖心を抱かせてしまったいわくつきの本だということで(笑)、興味津々で手に入れました。探偵フィリップ・マーロウ+作者レイモンド・チャンドラーのファッションセンスを、32のアイテムで読み解く本です。 チャンドラーの一連の著作というと、視覚的にはなんとなくモノクロームの世界だったのですが、この本を読んだ後には生地の手触りやつやなどの触感が加わって、また生き生きとした印象でよみがえってきます。訳文の引用もふんだんに取り入れられており、原作をもう一度読もうかしらという気になります。著者ご自身の地の文もチャンドラー風?というところがまたご愛嬌です。 この本を読むと、チャンドラーの作品には英国風と米国風がミックスされていた1930年代米国の雰囲気が色濃く反映されているのがよく分かります。マーロウや彼をめぐる登場人物たちの服装センスは、チャンドラーが裕福な会社経営者時代までに培った実感+美意識そのもの。洋服の材質や仕立てで階級やキャラクターが分かる…これは今でもそうなのですが、当時はもっと露骨というか。このあたりのことを、ファッションの専門家であり、チャンドラーにほれ込んでおられる著者が解説しておられるのが見事です。清水俊二訳の服装に関する間違いも、イヤミじゃない程度にチクリと指摘されています。そりゃ青山さんもビビるわ(笑)。個人的には、シャツの袖を留める「スリーヴ・ガーター」の章が、この時代を端的に表していて好きです。 女性のモード史を語る本は多いのですが、男性のモード史を名作にからめてすっきりと読ませてくれるという点で、モード好きの読者にもおすすめです。また、『ロング・グッドバイ』をはじめとする村上春樹訳チャンドラーでは、このあたりの処理をどうされているのか…という意地悪な楽しみも増えます(笑)。 気分的には☆5つですが、やっぱり、あでやかさの中に陰りや不安を秘めたチャンドラーの女性モードの項ももう少し読みたかったので☆1つ引きます。ごめんなさい。[2007.1.20 に Amazon.co.jp にアップしたレビューをこちらにもアップし、一部書きなおしました]