永遠の0 (ゼロ)

著者 :
  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778310264

作品紹介・あらすじ

日本軍敗色濃厚ななか、生への執着を臆面もなく口にし、仲間から「卑怯者」とさげすまれたゼロ戦パイロットがいた......。
人生の目標を失いかけていた青年・佐伯健太郎とフリーライターの姉・慶子は、太平洋戦争で戦死した祖父・宮部久蔵のことを調べ始める。祖父の話は特攻で死んだこと以外何も残されていなかった。
元戦友たちの証言から浮かび上がってきた宮部久蔵の姿は健太郎たちの予想もしないものだった。凄腕を持ちながら、同時に異常なまでに死を恐れ、生に執着する戦闘機乗りーーそれが祖父だった。
「生きて帰る」という妻との約束にこだわり続けた男は、なぜ特攻に志願したのか?
健太郎と慶子はついに六十年の長きにわたって封印されていた驚愕の事実にたどりつく。

2009年、講談社文庫により文庫化された。
映画化も決定。2013年公開予定。

感想・レビュー・書評

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  • 心に残る作品として目にしながらも、もっと早くに読んでおきたかったと無念でいっぱいです。
    読み始めるとそこには若くして志願兵として戦地で戦われた宮部久蔵氏と、今は目の前で寝たきりとなった義父とが重なって涙溢れ、先に読み進み難い重い作品でした。
    フィクションとありますが、あまりにも情景や描写が細かく繊細で出てくる言葉も聞き覚えがあったのです。
    義父も農家の口減らしの為、海軍に志願して横浜の学校を出て通信兵として戦地には僅かで終戦となったものの色んな想いをしながらも帰って来られたんだと思い涙しました。
    すっかり昔の事も口にされないし、忘れられてるお姿にもっと話を聞いておけば良かったし、今年12月に映画化されるらしいけど一緒に観に行きたかったと涙溢れるばかりです。

  • 太平洋戦争で特攻として戦死したとだけ知らされている顔も知らない祖父宮部久蔵の本当の姿を知るため、孫の佐伯健太郎と姉慶子が元軍人を訪ねていくという設定

    祖父を知る元軍人の回想が一人ひとり章立てされており
    章が進むごとに一面的だった祖父の姿がベールが剥がされていくように少しずつ明らかになり立体的になっていく
    まるで針金の骨組みだけだった塑像が肉付けされ、立体的になり色付けされ、血が通ったかのようだ
    最後に、家族をこよなく愛し『必ず生きて帰ってくる』
    という約束を何が何でも果たそうとした人間宮部久蔵の姿が私たち読者の前に現れる
    と同時に、そんな願いも虚しく特攻として敵艦に突撃せざるを得なかった全貌も

    この構成が見事だなと思う
    宮部久蔵の人間性が明らかになっていくと同時に、この戦争の軍部の綻びもさらされていくという仕掛けだ

    なぜ前途有望な若者を敵艦に突っ込ませるような非人道的な作戦が許されたのか
    それで苦しい戦況が好転すると信じていたのだろうか

    なぜ、せめて3ヶ月前に降伏して戦争を終わらせることができなかったのか
    返す返すも悔しく腹立たしい

    この本のレビューを読むと、是非が両極端に分かれている。百田さんの本は、思想的なものもあり、そういう傾向が強いのかなと思うが、人それぞれ考え方はあろうが
    私自身は、非常に遅ればせながら、この本を読んでよかったと思う

  • 今更ながら読んだ。図書館で予約してやっと手にする事ができた。
    そして、これは一気に読もうと思った。休みを使って。
    戦争中の話は難しく頭に入らないところもあったけど、やっぱり評判通り凄く良かった。
    最後の最後、いい段階で読書の邪魔が入らなかったら絶対涙がこぼれただろう。
    生き残ったのが・・・もうゾクッとした。百田さんって凄いな。
    だけど、改めで戦争の悲惨さ、惨さ、過酷さ。胸が苦しくなりました。
    今の時代を生きていられる事に感謝。
    戦争というものを知らない世代に大いに読んでもらいたい。私も読んで良かった。

  • お見事!

    「臆病者」との謗りを受けながらも生きて帰ることに執着したゼロ戦パイロットだった祖父の軍歴をたどる旅
    祖父を知る元軍人たちの回想は構成、章立て、その人の階級や兵種、人となり、関わりから現在の状況や住む場所
    史実との兼ね合いや伏線の張り方、「今」を生きる人の感情の変化、衝撃的なラストに至るまで見事と言う他なく★5じゃ足りない!名作です

    そしてこの作品を通して一番に感じたのは『怒り』であり、読み終わった自分の中に残った感情も『怒り』でした

    また皆さんはどう感じたのかも気になりました
    コメント読み漁ってみよっと!

  • 亡くなった祖父が特攻隊員で戦死。その辺のことを姉弟が、旧軍人を訪ねて、話を聞いていく。

    2020年9月19日、追記。
    妻がDVDを入手したので、少し追記。
    著者は1956年生まれなので、この作品を書かれたのは、著者が50歳位の時か。

  • いろんな戦争文学読んできましたが これも秀逸です
    「特攻」「ゼロ戦」に焦点を当て史実に基づいた物語
    ラストはまさに「驚愕の真実」 

    ちょっと中だるみしかけていたのですが 後半 一気に読みました
    過酷な中で守り抜いた清冽な愛
    胸をうたれました
    静かなGWの夜 「平和」に改めて感謝しながら 本を閉じました

    この著者の「ボックス!」もとてもよかったです

    ≪ 戦争は 命の重さ 忘れ去り ≫ 

  • 実話ではないですが、戦時中の軍人たちの生き様や心理がリアルに描かれていて、その世界観にわかりやすく入っていく事ができ、ボリュームはありますがどんどん読み進めることができました。ストーリーとしても、登場人物に共感でき、感動しました。

  • さて、『永遠の0』である(ネタバレあり)。映画を見に行く予定ではあったものの、待ちきれないのとこれに1500円も払いたくなかったため、本を読むことにした。しかし、わざわざ買うのも癪だし、本棚においておきたい類の本ではない。しかし、この本は売れると踏んでいるのか、古本屋も安売りしようとしないし、Amazonの中古も高い(500円も払いたくない)。そこで、ツタヤの貸本で、借りてきて、ザーッと読んだ。100円だった。
    端的に結論を述べると以下の⑥点
    ①宮﨑駿の言うとおり嘘八百のゼロ戦神話
    ②別段新しい読み物というわけでもない
    ③今までの軍事系の作品を鑑賞したほうがマシ
    ④ぼくのかんがえたさいきょうのれいせん
    ⑤後知恵で上層部批判すんなよ
    ⑥ニワカに受けただけ
    こういう書き方をしている以上、僕がどんな評価しているかわかるだろう。宮﨑駿は「神話の捏造」と評価したが、僕も大筋は変わらない。まさに巷間に出回っているゼロ戦(僕は敢えてゼロ戦と呼ぶ)物語の集大成とでも言うべき内容だからだ。取り立てて新しいことは何も書いていないし、特段新しい視点も、解釈も、何もない。ゼロ戦に関しても人口に膾炙される内容である。長大な航続距離、優秀な格闘性能、低防御力。しかし・・・そんなに格闘性能推しするんだったら、ゼロ戦よりも96式戦の方が強いだろうし、複葉機のほうがもっと強い。旋回半径はゼロ戦よりもずっと小さい。とある軍オタに「ゼロ戦ってのはね、まともに飛行機を作れないと思われていた日本がそれなりに使い物になるものを作れたっていう評価が妥当なのよ」と言われたが、もっともだと思う。別の例えをするなら、数学者の議論をしている時に、小学生がやってきて、数学者に「1たす1は?」と聞いて、数学者が「2」と答えると、「ぶぶー!田んぼの田だよー!数学者のくせに分かんないのー?」といったもので、ガラパゴス化した日本の極致をいった戦闘機なのだ。イギリスで言うんだったら複葉雷撃機ソードフィッシュ(急降下攻撃も可能でレーダーも積めるすごい複葉機、もちろん大好き)みたいなものか。世界では一撃離脱の高速戦闘が進む中で、日本は複葉機のような格闘重視の戦闘機を投入したから、当初連合国は対応に手間取ったというわけである。イタリア空軍といい勝負なのではないかとも思ったが、イタリア空軍に失礼である。
    この本のテーマは「臆病者と揶揄された自分の命を大切にするパイロットがなぜ特攻に志願したのか」である。特攻隊を扱った作品は多い。古くは『紫電改のタカ』から『ザ・コクピットシリーズ』、映画では『連合艦隊』がある。大体どの作品も「お前だけ逝かせはしない」という実に日本人らしい動機(海外の戦争映画を見ても、戦史を紐解いてもそんなワケノワカラナイ動機で決死の作戦を行うことは無く、日本人特有の現象なのではないか、と考えている。)で特攻を決意するのであるが、その感情あるいは価値観をつきはなして考えた、あるいは、描写したような作品はいまだ見たことがない。そういうわけで、今回『永遠の0』ではどうなのか期待して読んだが、相変わらずの動機で呆れた。
    僕が感じたのは、わざわざこの作品を書く必要がどこにあったのか、という点である。そんなに特攻隊の物語を鑑賞したければ『紫電改のタカ』や『連合艦隊』を見ればいい。特に『連合艦隊』については、レイテ沖海戦の少年兵が整備兵に挨拶するシーン、慣れない手つきで発艦するシーンは涙なしには見られない(その少年兵は特攻するのだが・・・そこも泣いてしまう)。より極論するならば、『連合艦隊』を限りなく薄めたような内容だった。そういっても『連合艦隊』に失礼だとすら思う。ちなみに、現代人がルーツを辿ろうとして、「おじいちゃん」の話を聞くというプロットは『男たちの大和』しかり、『真夏のオリオン』しかり、使い古されている。
     同時に僕はズルいとも思った。というのは、百田尚樹は自分の考え、あるいは評価を太平洋戦争に参加した兵士の回想に混ぜ込んで語らせている点である。この証言おかしいだろ、とツッコミをいれても「いや、生き残った人が語らせている内容だから」という口実を与えているのである。新聞記者高木もひどい。ぼくのかんがえたわるいさよくと、ぼくのかんがえたさいきょうのれいせんを書いているようにしか見えない。リアルではない。まるで国士病をこじらせた中学生の軍オタが好きそうな内容。
    以下、僕がうーんと思った箇所を挙げていく。あ、軍オタ的なツッコミなので、無視して読み飛ばしてもいいよ。
    ・もし「バトル・オブ・ブリテン」でゼロ戦があったらイギリスは大変なことになっていた(愛蔵版53頁)
    →ゼロ戦がスピットファイアMk.IXに勝てるとは到底思えない。メッサーシュミットもフォッケウルフも相当苦戦していたし。

    ・珊瑚海海戦でアメリカは空母1隻大破、1隻沈没だったのに対して日本の被害は空母「翔鶴」が大破しただけで日本海軍に軍配が上がった(愛蔵版75頁)
    →日本も空母「祥鳳」を失っているはず・・・。
    ・無傷だったにも関わらず、瀬戸内海でのんびり休養していた「瑞鶴」(愛蔵版87頁)
    →第五航空戦隊は「翔鶴」「瑞鶴」の2隻で成っていて、「翔鶴」は損傷していたはず。「瑞鶴」にしても、珊瑚海海戦の補充は済んでいたのか?
    ・退避してよい場合として「ゼロに遭遇した場合」(愛蔵版114-115頁)
    →これ、よく聞く話だけど、出処はどこよ
    ・ガダルカナルに日本軍が滑走路を完成させるまで待っていた(愛蔵版135頁)
    →別に待つ必要は・・・米軍はその後僅か数日でもう1つ作ってるし。
    ・アリューシャンに不時着したゼロ戦を鹵獲してアメリカはビビった(愛蔵版165-166頁)
    →ビビっただろうけど、それは大した技術を使っていなかったからで、すでにその頃には対ゼロ対策は打たれてた。
    ・ハルトマンらドイツ空軍のエースが200機以上撃墜できたのはドイツ上空で戦っていたから(愛蔵版167頁)
    →ドイツ空軍のトップエースが活躍してたのはロシア上空ですが。
    ・ゼロ戦のエンジン『栄』は日本製。この優れた発動機を作ったのは日本人(愛蔵版209頁)
    →アメリカのワスプエンジンを独自に改良しただけだった気が。
    ・日本が戦後復興できたのは、宮部ら兵士たちが尊い血を流したから
    →そう思いたいんだろうけど、論理的な因果関係は存在しません。
    ・昔の日本人は暖かい心を持って、人助けをしていたが、今の日本人は民主主義と繁栄によって「道徳」を奪われた(愛蔵版275頁)。
    →こういう話がある。
    戦時中の日本の電車の中はひどいものだ。つり革でも椅子のクッションもみんななくなっていった。盗みが横行しているのであろう。先日も銭湯で私も靴を盗まれた。こういう盗難の話は最近非常に多い。(清沢洌『暗黒日記』よりうろ覚え)
    温かい心、ねえ・・・。
    ・真珠湾攻撃のだましうちは大使館の連中のミスのせいで云々(愛蔵版287-288頁)
    →そもそもイギリスに宣戦布告しようとしてたっけ?
    ・特攻隊と自爆テロは違う!(愛蔵版328頁)
    →確かに、教信者でない、といういみでは違うけど、やり方的には同じじゃない。
    ・高オクタンのガソリンを入れると四式戦闘機はP51よりも高い性能を・・・(愛蔵版338頁)
    →稼働率50%以下の四式戦闘機、大東亜決戦機(笑)が何を言う。
    ・ゼロ戦の悲劇は、後継機が育たなかったこと(愛蔵版341頁)
    →著者が大したこと無いと言っているスピットファイアは改良に改良を重ねてMk.XXIVでは戦後も運用されているが。発展性のなさも原因では?
    ・「大和」の特攻云々(愛蔵版377頁)
    →ええ、犬死にだと思います。本土への穀物輸送船団の燃料を抜き取った上に犬死にとか。
    等々あげていくときりがない。
    さらに、百田自身の作戦の評価もひどい。なぜ真珠湾で第三次攻撃を行わなかったのか、なぜ栗田艦隊は反転したのか、なぜ第八艦隊はソロモン海戦の後にガダルカナルに突入しなかったのか、みな弱腰じゃないか、と。それは、どう考えても後知恵である。百田が考えているほど当時の軍エリートは馬鹿ではない(愚かである側面はあるけど、それは百田の考えているバカとは違う)。などなど、挙げていけばきりがない。
    では、なぜこのような本が売れたのかという疑問がある。実際近年右傾化しているという問題はあるわけで、右傾化と親和性の高い日本軍神話がもてはやされる下地はできている。加えて言うならば、そもそもミリタリーモノは市民権を得ておらず、注目を引くことが少なかった。それが右傾化に伴って市民権を得始めたために、取り立てて優れたものでもない本がたまたま売れただけにすぎない。要は本を書いたタイミングが良かっただけである。
    以上の理由により、僕は高い評価をつけることが出来ない。かといって手を触れたくないほどイヤかというとそうでもない。こういうのがウケている背景を考察する一助にはなった。

  • 太平洋戦争の話で、最初は少々戸惑いました。
    だんだん読み進めていくうちに、最期はどうだったのだろう…と気になって、一気に読み終えました。
    人の命の重さ、そして戦争によって狂わされた人々の運命…
    そういうのをずっしり感じたお話でした。

  • 静かに泣いた。

    お国のために死ぬことが軍人の誇りであった時代に、
    「妻のために帰りたいのです」と言い続けた男の物語。

    人の命より、機や艦にかかるお金や組織とエリートたちの保身が優先されていた時代。
    しかし蔑ろにされた命であったとしても、何かのために命をかける決意をした若者たちの時代。

    戦争の内側を後世に伝え続けないといけないですね。

    米軍は飛行機は作りなおせば復活できるが命は失うと取り戻せないと考えた。
    日本軍は戦闘機が壊れると大金がかかるが人は赤紙1枚だけで補充できると考えた。
    命を大切にしたことで、過ちを持ち帰り、伝え、組織と個人を強くしていった米国。
    命を疎かにしたことで、過ちを封印するしかなく、過ちを繰り返す道を突き進んでいった日本。

    戦争の悲惨さを伝えるだけの物語ではありません。
    戦争という狂った時代を通して、人と組織の愚かさを伝えつつ、人の強さ、純粋さをも伝えています。

    夏の一冊として後世に読み継がれて欲しいと切に感じた本です。

    私の本棚にまた1冊大切な本が増えました。

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著者プロフィール



「2022年 『橋下徹の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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