SR サイタマノラッパー

著者 : 入江悠
  • 太田出版 (2010年6月17日発売)
3.73
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  • レビュー :10
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778312152

作品紹介・あらすじ

北関東のド真ん中、「ライブハウスもクラブもレコード屋もない」埼玉県・深谷市。この片田舎で結成されたヒップホップ・グループ"SHO‐GUNG(ショーグン)"は、自分たちの曲での初ライブを計画中。しかし、世界に言葉を届けるラッパーになりたいと思いながら仕事もせず実家暮らしの"イック"と彼の仲間たちは、周囲から完全に馬鹿にされていた。そんな時、東京でAV女優として活躍していた高校時代の同級生・千夏が地元に帰ってくる。仲間たちに生じる微妙なすれ違い。ほんとにライブはできるのか?ここから東京、そしてアメリカまでって、いったいどれだけ離れてるんだろう?全編に溢れるおかしさとせつなさで'09年度邦画界を席巻した伝説的インディーズ・ムービーに、劇中では描かれなかった背景やサイドストーリーを大幅に加え、監督自ら、魂の小説化。

SR サイタマノラッパーの感想・レビュー・書評

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  •  フリースタイルダンジョンや高校生ラップ選手権ができる前の世界である。つまり、日本語ラップの世界が、まだ出来上がる前の、敗れ去った民族の物語(神話)、みたいなものである。
     いま、ラップ小説を書こうとしても、こうはならないと思う。あらゆる人とつながる手段、メディアに出る方法は、明確に示されているからだ。
     日本語ラップ最大の謎は、なぜ自分たちが日本語ラップにハマったのかわからないというところにある。
     ヒップホップは好きになるかもしれない。でも日本語のラップって? 僕の場合は、もう、「新しかったから」としか思えなかったし、「心地よかったから」だった。新しくて心地よいけれども誰からも理解できない音楽。それが日本語ラップだった。ノイズが好きな男がいて、その男も日本語ラップを聞いていたが、「俺はブルーハーブだけ聴く」と主張していた。「いや、ぜんぶ聞いてや!!」と思ったのが懐かしい。
     そんな、どうしようもない、魅力的だけど、絶望的なジャンル。その日本語ラップがフリースタイルバトルで何年も注目されず、ダンジョンで字幕がついてようやく有名になった、それ以前の世界が書かれている。
     二度と書けない世界だけれども、こういう日本語ラッパーを珍獣のように書くのは、もうこれで終わりなのだろう。
     ある現役高校生が言っていた。
    「日本語ラップとか、チャラいし」
     いや、チャラい以前に、日本語ラップはTSUTAYAの演歌・その他コーナーに2・3枚しかないし、バリバリにケース割れてるし、そもそもジャンルごと盛り上げないと成り立たないくらいの弱小。その「弱小のころ」。必死にHMVの試聴コーナーに並んでいて、感動していたころ。「なんでこのCDが試聴になってないんだ」とがっかりするころの、その小説である。

  • 映画で観たい。ラップを文字で見ても、イマイチ…閉塞感の打開!

  • 中村とうようさんが読んだら迷うことなく-10点であろう、グズグズ感満載の青春小説。あ、今日街でモヒカン頭をグリーンに染めた男子が赤信号をひとり堂々と横断歩道を歩いてるのを見て、何だか胸がキュンとしました。どんなスタイルであれ、実家が農業であれおじさんはあなたたちを応援します。

  • まったく新しい青春小説。
    イトーヨーカドー、ガスト、ドリンクバー。舞台となっている埼玉の深谷市に行ったことはないけれど、その雰囲気は日本の地方都市ならどこも似たりよったりで、ありありと想像できる。
    そんな中でラッパーの夢を追いかけるイタさ、やるせなさが行間にあふれたオモシロ悲しい傑作。泣ける。

  • 同名映画のノベライズ。
    画面と小説では受ける印象がずいぶん違う。映画よりも主人公の焦燥感を強く感じた。
    逆にラップは文字で読むよりもやっぱり音にしてこそ、の部分がある。
    映画抜きに読むとどれほど楽しめるのかがちょっと疑問だったので、星は三つ。

  • 「持ってる奴に持ってない奴がたまには勝つと思ってたい奴」の物語

  • 評価の高いインディーズ映画の監督自身によるノベライズ。

    映画本編は素晴らしい出来だったがSHO-GUNGのメンバー構成をはじめとする舞台背景の説明不足が目立ち、人によっては消化不良な映画かと思うが、本作を読めばその不満も解消される。
    著者は本作が初の小説とは思えない程文体がなめらかで非常に読みやすく、映画で笑えるシーンも巧みな比喩表現で文としても笑わせているのがスゴイ。同じ映画監督が手掛けたノベライズと比べるのなら、僕の好きな新海誠監督よりも面白い文だと感じた。

    内容も映画では語りきれていないSHO-GUNG結成の経緯や、高校の頃のイックとみひろ演じる千夏とのサイドストーリー、各キャラクターの人となりも事細かに描写していてこの小説だけで世界観が完成されている。単純な小説として楽しめるのだ。

    カバーイラストは『デトロイトメタルシティ』の作者。彼もまた入江監督同様「ミュージシャンワナビーの愚かさ」と同時に「そこに宿る表現の尊さ」を描きそれをエンタメに消化した素晴らしい表現者の一人。

    作り手の愛が伝わる素晴らしい一冊。

  • 期待していなかったので逆にびっくり。
    大変良かったです。

  • 版元の営業さんから進められて読んでみた。田舎の閉塞感の中でグダグダしていた「イック」。ヒップホップに出会い、仲間が集まって、色んな事が回りだす。前半は「ただのオモシロ小説」かと思った、後半に入ると色々な事が起きて、含みのある感じに…。ラスト20ページは、うってかわってなんだかメッセージ性が極めて強くなる。 ”ブンガク”っぽいし。 ラストまで読むと、印象がかなり変わる。面白い。

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