ケアの社会学――当事者主権の福祉社会へ

著者 :
  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778312411

作品紹介・あらすじ

超高齢社会における共助の思想と実践とは何か?!膨大なフィールドワークと精緻な理論に裏打ちされた、上野社会学の集大成にして新地平。

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/56653

  • 現行民法上で親への介護義務はない。扶養義務もない。
    しかし、家族介護があることを前提に制度設計されてきた。
    ケアする側の論理で制度を作り、ケアされる側の情報と経験は共有されてこなかった。
    サクセスフルエイジング。
    理想のケアは個別ケア。
    ボランティアという継続性の保証を欠いた最適な活動にゆだねることは適切ではない

  • 著者自ら言うように本来は三冊はあるものをまとめたような大冊で何とか読了。 初めにケアの定義がされる。ともすれば高齢者介護に限定されがちなケアを育児まで広げること、歴史的には逆であるのだが。そして、ケアを複数の者が関わる相互行為、相互関係ととらえること、当事者主権の立場を鮮明にすること、他者に移転可能な行為としてのケアを労働としてとらえること。この視点を基礎に良いケアとは何かについて考察される。次に介護保険下での実践について、著者が、理想と考える協セクターについて、生協組織、特にワーカーズコレクティブの活動について考察。比較事例として、富山方式の小規模多機能と管セクターとして脚光を浴び、そして挫折したケアタウン鷹巣について。最後に次世代福祉社会の構想で終わる。家事労働を含む介護論、ケア論というのは、理念的に整理が難しいところであるが、フェミニストの社会学者の説くケア論というのは、ケアを考える上での基礎理論となると思わせる本であった。

  • 2段組500ページの大著でした。結局、3ヶ月くらいかかって読んだので、前半はすっかり忘れてしまいました。書評を見て、図書館に購入してもらい、それから1ヶ月ほど待って、2週間で前半を読んで、いったん返しに行ったら、他にもリクエストをしている人がいて、また1ヶ月以上待たされて、その後3週間かけてようやく読み終わりました。いろいろと批判されることも多いようですが、私は全体的に学ぶことが多かったと思います。ケアについての概論から、具体的な社会での取り組みまで。生協とワーカーズ・コレクティブのこと。富山の「このゆびとーまれ」の取り組み。秋田の「ケアタウンたかのす」で何があったのか。さらにはグローバリゼーションとケアについて。私自身は「自分は外で働いて稼いでくるから、おまえは家を守ってくれ」というような発想はもともと持っていないのですが、たぶん、マルクスにしても大半の政治家の皆さんたちも、そういう発想の下で政策に取り組んできたのだろうということが分かりました。それでは、もう立ち行かなくなってきているのだろうということも想像できます。2000万人からのゆるやかな連帯ができ、老障幼統合のユニバーサルな社会サービス法ができあがることを期待しています。さて、自分自身のことに置き換えて考えてみると、あと数年ほどで介護が必要になる老親をかかえる可能性もあります。そのとき自分はどうするのか。家族はどうして行くのか。現状では思考停止している状態です。そのときになってみなければ分からないというのが正直なところです。手元に置いておきたい本ですが、図書館にお願いしてしまいました。文庫になっている「家父長制と資本制」の方は購入したいなあと思っています。

  • 社会福祉援助技術論B

  • 369||Ue

  • 社会学

  • 久々に読み応えのある本を読みました。

    「ケア」というものを「依存的な存在である成人または子どもの身体的かつ情緒的な要求を、それが担われ、遂行される規範的・経済的・社会的枠組のもとにおいて、満たすことに関わる行為と関係」とし、マルクス、アマルティア・センの考え出した経済学理論を用いながら、社会学者として、当事者主権の福祉社会とは何ぞやを求め、ケアの未来「次世代福祉社会の構想」までを提案した大著である。

  • 既出の研究論文等多数に、近年、上野氏が関わった調査研究の成果を加えた「集大成」ですが、だからといって「ケア」全般について論述しているわけではありません。社会学視点から、ケア全般ではなく、日本の介護保険制度下における高齢者介護を中心に展開しています。乳幼児や難病、障害者のケアについての論述はほとんど無いに等しいです。
    ケアについては、「当事者ニーズ中心の個別ケア」であるべきという主張のもとに論を展開されています。
    当事者に聞いてほしいと言うとき、難病や障害のために意思表示が難しい当事者は含まれていないわけではないでしょうが、難病や障害者、重度の認知症者に関しては、専門職が代弁する必要があります。その点については言及されていません。

    本書では、福祉多元社会のアクターを次の4つに区分しています。
    1)官セクター(国家)
    2)民セクター(市場)
    3)協セクター(市民社会)
    4)私セクター(家族)
    そして、「介護の社会化」の担い手として協セクターの優位性を強調し、これからは、協セクターによる、脱市場、脱国家、脱家族の「新しい共同性」の形成を推進するべき、と主張しています。

    その上で、「ケアの未来」について、上野千鶴子・中西正司編『ニーズ中心の福祉社会へ』医学書院、2008 における提言を引用しつつ、その可能性について論述しています。特に、高齢者介護以外の、障害者介護や乳幼児養育との分野を超えた連携の必要性について述べられています。
    実際に社会と時代を変えていくのは、当事者です。当事者の連帯が社会と時代を変えていく、というメッセージは、上野氏が全共闘世代だからというわけでもないでしょうが。

    総計で500ページもあるので、手っ取り早い読み方としては、第1部、第2部、第3部については、それぞれ最終章のみ読んでから、第4部を読むという方法もあるでしょう。

  • ケアの定義から始まって福祉に対する問題を分かりやすく丁寧にアプローチ。それぞれ個別のセクターの詳細な説明とともに、問題点も挙げて、これからの社会の在り方を考える。
    結局のところ、「再分配をどのように全ての人に満足させるか」、寄付金しかり、これが永遠の命題だ!

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著者プロフィール

上野千鶴子(うえの・ちづこ)東京大学名誉教授、WAN理事長。社会学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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