世界経済の大潮流 経済学の常識をくつがえす資本主義の大転換 (atプラス叢書)
- 太田出版 (2012年4月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784778313111
感想・レビュー・書評
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本書の内容は雑誌等に寄稿したものを、3部に分けてまとめている。1部「資本主義の大転換」、2部「解体する中産階級とグローバリゼーション」、3部「歴史の大転換にどう立ち向かうか」である。
最初読んだときには、歴史的な人物やそれらを解析した歴史学者の言葉などに戸惑ったが、水野氏の著作をいくつか読んだ後では、むしろ繰り返される言葉が多い。今までの近代システムからの決別して、新しいシステムに向けてをまとめているものだと思う。
以下、自分の忘備録的なまとめとすると(やや理解がやしいが)
それは、ブローデル「地中海」から長い16世紀や帝国の分析や、ウォースラインの世界システム論などから、世界史の中で経済史を見たときに、世界の経済はこれまでとは異なり、資本が行き渡り、グローバリゼーションの波の中で、4つの革命(P.88 「利子率革命」「貨幣革命」「価格革命」「賃金革命」)が起こっているとしている。
このような大前提の上では、新自由主義の考えがすべてを解決するとか、大きな政府vs小さな政府の対立構造を越えた形での社会のあり方が求められているといえる。中産階級が崩壊して、今までの流れがないとするならば、今後この世界にどのように立ち向かうのかを3章に書いてある。
結局は、新たな社会モデルを考えなくてはいけないということだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大学の大先輩に対して心苦しいが、副題の「大転換」について最終章の
「一歩先に進まないでみんなで同じ場所にとどまったほうがいい」
という提言には首をかしげる。
しかし末尾の
「わかいひとたちが2人生んでいいと思えるような社会環境を整備することが先決」
「地方に根差して安らかに生きていくのがこれからのトレンド」
には共感。 -
「現在が未来に食い込むにつれて、過去はその姿を新しくし、その意味を変じていく。」という清水幾太郎が訳書のはしがきで書いた言葉が、まさに体感出来る本です。今、起こっているグローバル経済の流れをブローデルの「長い16世紀」との近似から、中世から近代へのシステムを転換させた歴史の断絶と同じことが進行しているとの指摘がなされます。曰く「長い21世紀」。ここで起こっている断絶が「利子率革命」「貨幣革命」「価格革命」「賃金革命」の4つの革命が無茶苦茶、腑に落ちるように語られます。9・11、9・15、3・11を近代が持っている無限の膨張主義の破綻として共通の概念で語っているのも目鱗でした。その概念が「蒐集」。「蒐集」には終わりがなく必ず「過剰」に行き着く。これは「暇と退屈の倫理学」における「消費」は無限であるが「贅沢」は終わりがある、という指摘に相通じる、と感じました。目指すべきは、地域を拠点にして、できるだけ自己完結型で定常社会を前提とする生き方?というのも「成長なき時代の「国家」を構想する」とのシンクロを感じました。今、みんなが必死に新しい社会モデルを模索しています。
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終わりなき危機からどう離脱するか?
9.11、リーマンショック、3.11、二一世紀に連続する危機の根底にあるのは、現代資
本主義のドラスティックな構造転換だった。経済を人類史的な視野から眺め、これか
らの経済を展望する。未来のための経済書! -
経済の今は、1970~2050年頃にかけての経済の移行期であるという。自国での資本が行き渡って利子を生まなくなってしまっている一方で、新たな利潤の獲得手段としてのグローバル化が起きている。このグローバル化で、新興国が資源を消費するようになり、資源価格が高騰し、この穴埋めを労働賃金の下落によって対応した。今の低賃金化はこの流れによって起きているという。そして、今後は持つもの/持たないものの所得差の拡大による2極化が起き、これを是正するための「ポスト近代」としての新たなシステムが登場するだろうと言っている。
本書が事実なら、資源高騰の穴埋めとしての低賃金化、経済のほころび(バブル)を治療するために使う国家予算を補てんするための大増税、グリーバル化に合わせた企業活動によ生活形態の変更、などなかなかつらい社会が待ち構えていると思うが、自分たちの思考をポジティブに切り替えて、これを受け入れ、乗り超えていく知恵を獲得することが必要だと思う。