ラカンの殺人現場案内

  • 太田出版
3.14
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778313241

感想・レビュー・書評

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  • 写真家である著者が、英国国立公文書館に保管されている、
    1950~1960年代のイギリスで起きた殺人事件の現場写真を
    接写――超マクロ撮影で写真の一部を撮影=断片をリフォト(再撮影)――し、
    そこに写っている証拠物件(遺体を含む)あるいは背景の一部、等々から、
    精神分析家ジャック・ラカンの理論に則って、事件の裏の意味を推理するという、
    「写真論×犯罪×精神分析」なノンフィクションであり、
    物事を「精神分析的に考える一つの試み」(p.197より)。
    写真史の分野では様々なジャンルの写真が取り上げられてきたが、
    犯罪現場写真という領域は未開拓だったらしい。
    実際に、英国国立公文書館で殺人事件の事件簿を閲覧したのも著者だけで、
    この本で紹介されている現場写真は、50年以上前に法廷に提出された後、
    著者以外の誰の目にも触れてこなかったそうだ。
    また、ラカン理論に的を絞ったのは、
    人間の精神機能を「神経症」「倒錯」「精神病」に分けて考える三類型モデルを中心に据え、
    それらを互いに相容れない様態の、まったく異なるものとして提示し、
    しかも、犯罪現場写真の解読に限らず、
    人的介入の痕跡を持つ現象一般の考察に応用できるから――とのこと。
    評価すべき労作だと思うが、序論が長くて、なかなか本題に入らないのと、
    肝心の「素材」が予想したほど多く取り上げられていなかったのが難点か。
    それにしても、意図的に切り取られて拡大された写真というのは、
    モノがモノだけに不謹慎を承知で敢えて言うなら、極めてシュルレアリスム絵画的。

  • もしもラカンが刑事だったら? 実際にあった殺人現場の証拠写真から、精神分析に
    より犯罪類型を分析する。 殺人現場の証拠写真が多数収録されているため、取り扱
    いにはご注意が必要です。高密度のラカン理論の解説書としても、芸術論・写真論と
    しても読める、異色の知的エンターテインメント!

  • 注釈多すぎィ!(全287ページ中72ページ)

    例えばある工場で起きた殺人事件で、被害者の女性2人の着衣が工場の制服とキャップを被っているため双子のように似ている、まるで合成画像(comp)を連想させる、というくだり。

    演出のない現場写真から受ける印象(主観多し)から事件を読み解く的な趣旨の本なのでcompが出てくるのは別に良いのだけど、その注釈で

    『(前略)以前は文字通り何枚もの写真を切ったり貼ったりして合成されていたが、現在ではフォトショップのレイヤー機能(Layers)を使うのが一般的である。(後略)』

    長い長すぎる。

    この、すべての文章で知りうる限りの引用や感想や派生した話、自分の知識を余すところなく伝えなければ!という作者の強迫的な意思を感じさせる。

    ある意味、現場写真から加害者の意図を読み解く本から、作者の意図を読み解くという作業のような苦難の読破。しかも私も別に作者の意図を正確に読み解いてはいないと分かるので、結局のところ殺人者の意図もあくまで作者の主観による推測にしかすぎず、まあ推測があっても良いんですけど提示された事実(現場写真と当時の資料)に対する作者の主観が1:9くらいで、私はそういう話を読みたいわけではなかった。

    突如出てくるシニフィアン(記号表現:海ならば「海」という文字や、「うみ」という音声)とシニフィエ(記号内容:海のイメージや、海という概念、ないしその意味内容)という語彙を知れたのは良かったです。

  •  実際の殺人現場写真を、ラカンな視点、いや「まなざし」で分析していく。ド・クインシー「芸術としての殺人」の引用から始まり、ジジェクの解説で締め括る。
     ミステリ的な読み解きは皆無であり、あくまでも精神分析な手法から写り込んだ事物を語り、いやむしろ分析手法を語っているようだ。
     例えば殺人鬼の思考方法をシュトックハウゼンの試みと対比させたりとか、思いつきにしては興味深い飛躍もまた面白い。

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