三重スパイ――CIAを震撼させたアルカイダの「モグラ」

  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778313463

作品紹介・あらすじ

ビン・ラディン殺害を緊急加筆。ピュリッツァー賞作家が、徹底取材で暴く衝撃の事実。その男。敵か、味方か?CIAがアルカイダに放った二重スパイが難攻不落のCIA前哨基地に自爆テロを仕掛けた!多数の幹部局員が殺傷されたCIA史上最悪の事件の真相とは。

感想・レビュー・書評

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  • 分量の割には少々お高いが、その値打ちはある。なぜ一度に7人も職員を失ったのかのは、冒頭の部分で明らかだ。アルカイダにこれほど肉薄したスパイはいないと熱狂し、吟味もおろそかに手放しに信じる。こちらの誠意を見せるためと大勢で出迎え、あまつさえ途中の身体検査も、こちらが信頼している証にとパスさせ、基地内部に招き入れ自爆される。指弾させる司令官は、もともと9.11の陰謀を見過ごしたにかもかかわらず懲戒処分されず、最後に昇進に必要な経験を積ませるために司令官としてアフガンへ派遣された、女性CIA職員の草分けだった。

    実戦に投入された無人機のめざましい活躍は、テロとの戦いの様相を根本から変化させている。あまりにも容赦のないピンポイントの攻撃におののき、テロリストは深く潜ってしまった。見つけにくいために、現地でリクルートした情報提供者の協力に期待して、もたらす情報を当てにするようになる。標準的な安全策さえ講じず直接接触したのが今回の原因だが、問題はもっと根深い。

    しかしあまりに有能な無人機だが一回攻撃するごとに、3,4人の自爆志願者が来て、ミサイルは新兵募集の広告になると敵に嘯かれている。しかも、自国の領内で我が物顔で無人機による攻撃を行なって平気な国などないだろう。

    モサドとは違い、アメリカの情報機関は自国の特殊部隊との間に根深い垣根が存在するようだ。CIAの局員はシールズの隊員を筋肉自慢の"頭の弱いゴリラ"とバカにし、反対に基地の外にめったに出ない"お子さま"と陰口を叩かれている。一度は、互いの専門性を交換するような訓練プログラムが組まれたが、あまり実績が上がらず、結局は専門に任せればいいということになった。世界各地に展開すると、その分薄く広くとなるので、最適の人材を選べず、内部の対立は深刻になる。

    いろんな情報源から集まる大量のデータを分析し、陰謀を阻止し、隠れたテロリストを探し出す「ターゲッター」というエキスパートが典型だが、CIAもますます高い安全な塀に隠れて仕事をし、現場を知らないデスクワーカー職員となりつつあるようだ。

    ちなみに最近読んだ『モサド・ファイル』では、"9つの命を持つテロリスト"と呼ばれたムグニエを狩ったのはモサドのチームということになっていたが、本書ではヨルダン総合情報部が仕留めたことになっている。

  • 『ゼロダークサーティ』と『ワールドオブライズ』を見直してみよう。『ゼロダークサーティ』にこのエピソードが出てきたのはおぼえてる。もともと長い話なのにこのエピソードいれるんだー。と思った記憶がある。
    2重でさえややこしい話なのに3重はややこしすぎる。
    でも原著もすっきりした分なのか訳がすっきりしていてわかりやすかった。日本語なのにえ?どゆうこと?ということがなかった。
    先に『ゼロダークサーティ』とTVドラマシリーズ『HOMELAND』を見ていたからということもあるかな?

  • 米国がアルカイダからの報復を受けた実話が元になっている。
    取材の内容、各個人の背景の描写が細かく記されていることだけでも感心させられる。
    9.11もうそうだったように起こってしまった悲劇は、幾つかの不運と思い込みが積み重なるということがよくわかる

  • 2009年12月30日、アフガニスタン東部のCIA前哨基地内で起きた自爆テロ事件。CIA局員7人を含む9人が死亡したこのCIA史上最悪の事件に、綿密な取材で様々なアングルから迫った一冊。衝撃的なプロローグに続いて、なぜこの大惨事が起きたのか ひとつひとつ遠因から詰めて核心に迫る展開に、読む手がなかなか止められない。ノリとしては落合信彦の著作に近いが、巻末に「情報源についての覚え書き」があるなど、リアリティーと迫力が格段に違う。
    ちなみに、ピュリッツァー賞を受賞したことのあるこの著者は、ワタシがアメリカに在住していた時にごく近所に住んでいた人。初の著作というこの一冊の感想を本人に送ろうと思う。

  • 【要約】


    【ノート】

  • アメリカ側もアルカイダ側もよく調べて裏を取って情報を整理して書かれたものだと思う.だけど,素人目にも思いっきり怪しいのに何故こういう結果になったのか,残念だ.

  • アフガニスタンのホーストにある米軍基地での2重スパイによる自爆テロ.CIA局員も多く殺害された.なぜ見抜けなかったのか.潜伏するアルカイダとCIAの戦いが描かれる.

  • 映画ゼロ・ダーク・サーティを見たことをきっかけに読了。アフガニスタン基地で起きた自爆テロ事件の顛末をまとめた良書。アルカイダとの戦い、テロとの戦いの実情が伝わってくる。

  • フマム・アル・バラウィ。ヨルダン・アンマンに住む青年は勤勉な
    医師という表の顔とは別に、裏の顔を持っていた。

    それはイスラムの聖戦主義サイトにペンネームで過激なコラムを
    投稿することだった。

    日を追うごとに過激さを増していく彼の書き込みは、アメリカの
    同盟国であるヨルダンの総合情報部の目に留まらない訳が
    ない。

    突然の逮捕。それに続く3日間の尋問。その後、自宅へ帰され
    たフマムは逮捕以前とは別人となっていた。そう、彼が総合
    情報部と交わしたのは義勇兵としてアルカイダに潜り込み、
    CIAがその行方を必死に探しているウサマ・ビン・ラディンを
    始めとした高級司令官の居場所を探ることだった。

    ヨルダン総合情報部とCIAが連携した二重スパイ作戦は、
    一時、フマムと音信不通となり失敗したかに思えた。しかし、
    フマムから送られて来たメールに添付された動画には大き
    な収穫が見込めるものだった。

    「黄金の情報提供者」。CIAはフマムとの直接の面談を求め、
    計画を立てた。だが、それは後々、大惨事を引き起こす。

    2009年12月30日。アフガニスタン東部のホースト州にある
    CIAの前哨基地・チャップマン基地で女性基地司令官を
    含むCIA職員7人、ヨルダン総合上部部員1名、アフガニスタン
    人運転手1名が死亡し、6人が重傷を負う自爆テロが起こった。

    この自爆テロの犯人こそが、青年医師だったフマムだ。

    本書ではCIA史上に残る大失態とも言われる基地内自爆
    テロ事件の経緯を詳細に追っている。そして、通常では
    顔のない自爆テロ犯にもスポットを当て、二重スパイと
    してアルカイダに送り込まれたはずのフマムが、何故、
    ヨルダン総合情報部とCIAを裏切る行為に走ったのか
    を描いている。

    面白いといったら語弊があるが、事実は小説よりも奇なり
    で、二重スパイが実は三重スパイであったという掘り起こし
    が非常に興味深い。

    そして、最終章ではアメリカ政府によるウサマ・ビン・ラディン
    暗殺の模様も描かれている。

    また、無人機プレデターによる攻撃が、アメリカの言う「テロ
    との戦い」を如何に変容させたかも参考になる。

    既にウサマ・ビン・ラディンは暗殺された。しかし、アメリカは
    今でもテロに怯えている。ひとりのビン・ラディンを暗殺しても
    何百人ものビン・ラディンを生むだけだと誰かが言っていた
    のを思い出した。

    報復には報復で…なんてやっていたら永遠に終わるものじゃ
    ないよな。憎しみと怒りが生み出すのは、新たな復讐者以外
    にないもの。

    尚、本書は翻訳もこなれていて読みやすい良書だ。

    そして、気になることがひとつ。アメリカの国家安全保障局
    には特殊な検索エンジンがあって、アメリカの脅威になり
    そうなものを吸い上げているそうだ。

    えっと…本書を読んでいる間、自爆テロとかアルカイダとか
    タリバンとか聖戦とか、いろいろ調べてたんだけど、ある日、
    突然、我が家に公安が乗り込んでくる…なんてないだろうな。
    ビクビク…。

  • CIAの基地に自爆テロをしかけたフマムについてのノンフィクション。
    CIAの内部、アルカイダの内部、登場人物の生い立ちや家族に至るまで、ハリウッド映画よりもドラマチックに、そして生々しく描かてれいる。これは著者の膨大な取材の賜物であると思う。

    また、この様な本を上梓できる米国のジャーナリズムにも感心した。

  •  うーん。三重スパイなんだけれども。
     なんというか、これがノンフィクションだということに衝撃を受ける。
     ノンフィクションであるがゆえに登場人物たちの心情や本心は不明であり(口にしたこと以外は分からないのだから)、それゆえに考えさせられる。
     アメリカは正義であろうとするために、どれほどの犠牲を払うのだろう。

  • こんな事件があったことを知らなかった。
    仮に、アメリカがイスラム過激派が関連する全ての紛争から完全に手を引いたら、どういうことになるのだろう。

    彼らは、次はEUの国々を標的にするのだろうか。

    それでは、EUの国々も手を引いたら?

    次は、ロシア?中国?

    現在の紛争関係がなくなっても、新たな紛争を作りだそうとするのだろうか?

    もしそうだとして、そのことで新たな紛争が発生するとすれば、それはもはや宗教紛争ではないのか?

    その際、日本はどうするのか。争いの根源が宗教にあるとしても、参加していくのだろうか。

  • 最近の中では一番のヒット!!
    2009年にCIAの基地でおきた自爆テロに就いて、かな~~~り詳細に描かれています。

    ただ、客観的に見るとCIAのデフォアホを露呈してるだけじゃない?って思っちゃいますが、、、
    911以降、日本に住んでるとちょっと遠い話のテロ。今も続いている。そしてテロを未然に防ぐための作戦も日々続いていて、アメリカは今も戦時下なんだ、、、と再認識させられました。

  • 戦争の大義とはなんなのか。
    米国の理屈だけではなく、CIAの前線基地に自爆テロで打撃を与えたフマムが抱えた葛藤とそこに至る主因となった二面性。
    テロとの戦い、と題された軍事行動は永遠に終わらないのではないか、とさえ思える。

  • フマムがホーストへ到着するまではだらけてしまったが、テロ後は一気に読了し、危うく「あとがき」を読み飛ばすところだった。

    もうすく映画「ゼロ・ダーク・サーティ」が公開となるので、予備知識に良い。

  • アルカイダの鉄砲玉として基地に自爆テロを仕掛けた男は、元々アメリカがスパイとして放ったモグラ。裏切りの連続、とでも書いたら格好良い感じがするが、はっきり言えばCIAの大チョンボが起こした悲劇を描いた本。イラク戦争を起こす原因となったCIAの過ちと、この話のミスも根本的な原因は何も変わっておらず、硬直した組織が如何に怖いものかよくわかる。
    そもそも死亡したCIA職員一人一人の人間模様を鮮明に描き出して、死人を英雄視するのは納得がいかない。一種のプロパガンダ作とも取れる一冊。

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著者プロフィール

1960年、米国ノースカロライナ州に生まれる。テンプル大学卒業。『ニューズ・アンド・オブザーヴァー』での業績により1996年、ピュリツァー賞(公益報道部門)を受賞。同年『ワシントン・ポスト』に移籍。以後、中東問題、外交問題、安全保障問題を専門とするジャーナリストとして活躍している。2016年、本書Black Flagsでふたたびピュリツァー賞(一般ノンフィクション部門)を受賞。邦訳書に『三重スパイ――CIAを震撼させたアルカイダの「モグラ」』(太田出版)がある。

「2017年 『ブラック・フラッグス(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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