- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784778313531
感想・レビュー・書評
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うわあああ。面白いです。これは、傑作です。私たちのような本読みに、ばっちりと当て嵌まるシチュエーション。
なんども、「え、それ、私のことじゃん・・・」って思ってしまいました。
敏腕編集者、牛河原の働く丸栄社が売り出す商品「ジョイント・プレス」
それは、ほんの出版を夢見る作家と丸栄社が費用を折半して本を出版するというもの。
作家が出す費用は150万から200万。決して安い金額ではない。それでも、牛河原はあの手この手で客を掴み取っていく。いやあ、見事でした。
「素晴らしい作品です。これが世に出ないなんてもったいない!!」なんて、いっておいて、裏では、
「こんなクズ作品売れる訳ねーだろ」って思っているわけですけれど。
でも、私も150万円で自分の本が出せるんなら、絶対払います。
現代の日本の出版業界の裏常識に、これでもかこれでもかと切り込んでいて、たしかに帯に書いてあるように、「作家志望者は読んではいけない」作品かもしれないなあと思いました。
けれど、本読みの私たちなら、必ず「あるあるー」とうなづいてしまう作品だと思いました。 -
活字を読む人が減り
本が売れなくなった。
と、世間はわいわい騒いでるのに
なぜか
自負出版する人は増えているらしい。
出しても
売れる、とは限らないのに
一体何故?
そして何を書くのだろう?
(しかも大金を叩いてまで!)
彼らは
いわば、エネルギーの塊の様な人達だった。
体中から
世間に対して言いたい事、言わなきゃ収まらない事が
あふれかえっていて、もうパンパン状態。
そんな人間を目ざとくみつけては
ぷすん、と穴を開け、楽にしてくれる人がいたのだが、
とにかく
その丸栄社の敏腕編集者 牛河原さんが面白くてたまらないんだ♪
裏表もあるけれど、
本に対して
(作家が書く、という行為に対して?)
真摯な愛を持っていたこと、
最後の最後の一行でそれを確信できて、
大笑いしながらも
じん、と心に余韻の残るいい本に出会えた、と嬉しくなった♪ -
読書会でお世話になっている方からお借りして、あっという間に読んでしまいました。
題名や表紙の獏が示すように、なんとも人を喰った話でしたが、非常に面白かったです。
とても『永遠のゼロ』や『海賊とよばれた男』と同じ人の作品とは思えませんでした。
そして、これが全て「事実」だとしたら、作家志望の人は相当に覚悟しないと、とも。
それにしても、ご自身も劇中のネタにしているのは徹底してますね。
主人公の牛河原からして某小説の人物をパクリ、、もとい参考にしてるようですし。
そんな実在の小説へのオマージュがあちこちにちりばめられていて、ニヤニヤしてしまいました。
そういや『バトルロワイヤル』の人の新作は聞いたことがありませんね、、うーん。
娯楽や余暇のためのコンテンツの在り様に、一石を投じていると感じます。
小説は時代を映す鏡であるかな、と、受け入れられる(売れる)かどうかも含めて。
そして、時代とは民衆の雰囲気でもあり、娯楽を提供して金を稼ぎたいなら、
その娯楽を消費する民衆に寄り添う必要がある、、とは至極まっとうで。
それを拒絶するのも一つの在り様だが、それには相当の覚悟がいるのは事実ですね。
個人的に『本は10冊同時に読め!(成毛眞)』と同時読みすると面白いかも、と感じました。
ん、いわゆる「作家」になりたい人は、手に取る前に一考された方がいいのかな。。 -
なんともブラックな...と思いながら読んでいくと、最終的にはなんかちょっと素敵ないい話なんじゃ、と思ってしまうのは、まさに作者の思う壺なのか。
牛河原がなんか情に厚いいい男に思えてしまうのがすごく悔しい。
東野圭吾の短編集にもこういうのあったよね。
出版業界を皮肉るブラックユーモアみたいなの。
ボロカスに言ってるけど、でもやっぱりこれは本への愛情があふれた一冊だと思います。 -
本を選ぶとき、まず手にするのはお気に入りの作家さんの本。
次に、ブクログなどのレビューで気になった本。
そして、ジャケ買い、もしくはタイトル買い(笑)。
でも、その本がどんな経緯で単行本となったか、文庫本となったか、などということは考えたこともありませんでした。
最近、書店に並べられる本のからくり(というほどのものでもないけれど・・・)をほんの少し知ったりして、興味は湧いてきてはいたが、それ以上、積極的に知ろうとは思ってもみません。
それが、こんな形で知ることになるとは・・・
好きな作家さんのひとり、百田尚樹さん。
古本屋さんで「夢を売る男」を見つけたときには本の内容も知らぬまま即買い。
で、読み始めてみると・・・
ジョイント・プレイス方式と言う名を借りた自費出版で、本を出してみたいと思っている素人作家を見事に丸め込み、200万近いお金を出させて本を出版する。
実際に本は出版されるし、一部の書店には並べられるのだが・・・
前半、そんな手口で次々に契約を成立させていく様子からこの本はどこへ連れて行くつもりだ?と思っていたら、後半の章では“小説家の世界”が暴露される。
わわわ・・・、百田さん、そんなことおっしゃってもいいのですか?
もしかしてケンカ売ってる???と、我がことのようにちょっとビビったりしていたらご自分のこともちゃっとおっしゃってました。
「元テレビ屋の百田某みたいに、毎日、全然違うメニューを出すような作家も問題だがな」って・・・
私にはひとつ、以前から疑問に思っていたことがあります。
それが「小説誌」。
読書好きを公言しているが、この「小説誌」というものを読んだことがなく・・・。
それで、読書好きって言ってよいのか・・・、と、心の片隅で思ったりしたこともありましたが・・・
百田さんの暴露で、「小説誌」ってそうなのかぁ~!!とスッキリ。
おかげで(?)、罪悪感なく読書好きを公言し続けられます。
そしてもうひとつの謎、「書き下ろし」。
私の個人的感想ですが、「書き下ろし」っていまいち好みではない場合が多かったりするのですが・・・
でも、この謎もちょっと納得したりして。
ちなみに、この「夢を売る男」も実は「書き下ろし」でした。 -
小説の形式の文学論のような本。
作者自身のことも直に消える作家と手厳しい。
死後に再評価される作家は生きているときに売れている作家だとか、小説誌が売れないなんていうのは、確かにその通りだと思う。
でも、文学的な文章よりも読みやすくてわかりやすい文章の方がいいっていうのはどうなんだろう?読みやすくてわかりやすい文章しか読めないままでいいのかなと思うけれど。文学的な文章も読むことができる力っていらないのでしょうか?
それから、この本を読んでいると本には未来がないような気がしてくる。
ただ、ラストはとてもいいです。
ハッピーエンドは好きなので。 -
☆5つ!
本好きな読者、そして書店員、出版社編集員、果ては有名無名作家さんまで、誰が読んでも面白い本です。キッパリ!
特に、読書が一番の趣味で年に150冊以上の本を読んで、もしかしたら私も本ぐらい書けるかも知れない!と本気で思っている人は絶体絶命的に読むべき本だと思います。物語小説としてもすこぶる面白いし、百田さんが本屋大賞に輝いたという事とはほとんど関係無く久方ぶりブリ鰤の りょうけん超おすすめ作品です。
物語の中には、小説そのものを否定するような発言もありますが、その場面には果敢にも百田さん自分を実名で登場させて、いづれ消える作家だ!とハッキリ言っている。
まあ、まづわわたし自分自身がこの夢を売る商売のお客になってしまいそうな事が今一番危惧されることなので、この本はそうなりそうな場合に備えて是非読んでおくべきです。
でわはい、高田渡の『自衛隊に入ろう』のメロディに乗せて!
♪皆さん方の中に 自費出版したいと思っている人はいませんか。一旗揚げたい人は居ませんか。丸栄社じゃ原稿待ってます。♪
すまんこってすごすご。 -
ベストセラー『永遠の0』の著者、百田尚樹さんによる最新書き下ろし小説は、
出版界を舞台にしたブラック・コメディ!
敏腕編集の牛河原のもとには、本の出版を夢見る人間が集まってきます。牛河原
がもちかけるのは、ジョイント・プレスという耳慣れない出版形式 で……。
内容の過激さから「百田さんは今後小説を出版できるのか」「これを出した太田
出版はどうなるんだ」との心配の声も多々届いていますが、読み始める と一気
読みのおもしろさです!
出版ビジネスに興味のある方、作家志望者の方、おもしろい本を読みたいという
方、是非是非ご一読ください! -
ついに百田尚樹が出版業界と世の中のSNS愛好者を相手に喧嘩を売ったのかと心配になるほどのブラックな物語。その中にも滑稽さもあり、百田尚樹自身の自虐ネタがありで、ブラックさがオブラートに包まれて少し安心する。
たまに新聞広告で目にする『あなたも本を出版しませんか』の業界の内幕を鋭く描いている。恐らくは脚色してると思うのだが。なるほど、読者を相手にするのではなく、著者を相手にするビジネスか。面白い。
少しはオブラートに包まれたものの、このまま百田尚樹は喧嘩を売ったまま物語が終わるのかと思ったのだが…
…ラストが非常に良い。ラストの一行を書くためにこれだけのフリをしたとしても許せる…
そして、そうか、『幸福な生活』のような作品なのだなと最後の最後に気付いた。
P.S. もう「色彩を持たない~」読んでるんですね。大阪の何処に住んだら、こんなに早く村上春樹読めるんですか?私はまだ24人待ちですよ!(買ったのなら御免なさい。)
ここまで小説を書く人をけちょんけちょんにけなしなが...
ここまで小説を書く人をけちょんけちょんにけなしながら、最後に「とっくに読んでいる。いい作品だった」とオトす牛河原さんに泣けましたよね。