芸人交換日記~イエローハーツの物語~

著者 :
  • 太田出版
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本棚登録 : 754
感想 : 99
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778313548

作品紹介・あらすじ

結成11年目、いまだ鳴かず飛ばずのお笑いコンビ"イエローハーツ"。これまでコンビの今後について真剣に話し合うことを避けてきたふたりも、気がつけば30歳。お笑いに懸ける思いは本気。でももう後がない。何とかして変わりたい。そう思ったふたりは「交換日記」を始めることにした。お互いの本音をぶつけ合うために-。交換日記形式で織りなされる、おかしくも切ない「絆」の物語。

感想・レビュー・書評

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  • Q.なぜこの本を購入したのか?
    たまにはビジネス書でもなく、自己啓発書でもなく、
    ユーモアのある小説を読みたいなと思い、購入してみました。

    放送作家の鈴木おさむが書いたというネームバリューにも惹かれました。

    Q.実際に読んだ感想は?
    ストーリーの構成は流石は放送作家といわんばかりに綺麗にまとまっていました。
    コンビ二人の胸中の想いがページをめくるごとにあらわになっていく姿は、
    なにか「人のプライバシーを透明人間になってのぞき込むような」ワクワク感や背徳感にも似た感情が沸き起こりました。ただ、二人の人生を第三者としてのぞき込む好奇心はたまらなかった。

    しかし、1つ残念な点は、二人のやりとりがくどすぎる場面が数か所あったところ。
    い「くらなんでもそのくだりで日記回さないだろ」というところも日記を使ってやりとりするところは流石に冗長すぎて読むに堪えなかったです。

    それ以外は泣けて笑える日記小説といった感じで最後まで楽しめました。

    芸人さんって楽しそうにやっているけど大変なんだなあ。

  • 映画を観てから読んだので、甲本が小出恵介くん、田中が伊藤淳史くんに変換されて出力されてしまう。
    それをいったんはずして文字を追うと、切ない物語が浮かび上がってくる。
    夢を持つことはいいことだとされている。でもその夢の内容にもよると思うのだ。その夢が、一般的にいってあまり認められないようなものだったら。
    例えば歌手。たとえば役者。たとえば芸人。たとえば画家。たとえば作家。いわゆる「才能」と「運」がないとどうにもならない世界である。
    それでもその世界にあこがれ、その世界で生きたいと願ってしまったら。
    その夢に向かってがむしゃらに頑張ることは、世間一般の幸せから離れていくことでもある。
    30歳という年齢はひとつの大きな壁のようだ。最近では40近くになってから売れる芸人さんも出てきて、ますます踏ん切りをつけるチャンスを失う人も増えてくるだろうが、それでもどこかで選択せざるを得ないときがやってくる。
    甲本が切ないのは、自分の望みと現実が一致しなかったからだ。確かに夢を諦めることも才能だし、そうやって見切りをつけたあとはまた別の幸せを見つけたのだから、彼が芸人をやめたことは正解だったのかもしれない。
    それでも彼の「お前と漫才してーよー」という叫びは痛切だ。才能とか関係なく、それが彼の本心だから。でもその願いは叶えられないし、叶えてはいけないことを本人がいちばんよくわかっている。だから哀しいのだ。

    というようなことを読み取るにはこの日記体はちょっとキビシイな。
    映画を観たから理解できたというところは多分にある。

  • レビューというより恐らく長文かつ日記のようになりますが……映画版の田中の俳優さんのファンでなんとなく「原作読んどくかな」と手に取ったのがきっかけでした。


    昔私はお笑いが大好きで友人と公開録画に行き出待ちしたり、お笑い関係の雑誌を母と買い集めたり、ネタ番組をビデオに大量に録り溜めていました。

    とある大好きな漫才コンビがいて生の漫才を観てサインももらい「ずっと応援する!!」と思っていました。全国区とは言わなくても関西圏では名前は知られていたと思います。
    けれど今思えば「売れていないこと」をネタにすることが増えてきていたような気もします……。


    数年後のある日そのコンビが解散することが新聞の、気付く人がどれくらいいるのだろうかというくらいの枠に載っていました。ファンとしてはあまりにも予想外の事でした。
    その記事には『コンビ結成から10年が過ぎ限界を感じたため』『喧嘩別れではなくお互いのことを考えて出した結果』『一人はピンで一人は芸能界を引退』との文字が……。


    そうなんです。なんだかこの作品の主人公たちに似てるんです……。
    気がつけば私はイエローハーツを大好きだったコンビと重ねながら読んでいました。そのせいか涙腺が余計に緩く……。

    実際にこんな形で解散したり引退した芸人さんはたくさんいるはずです。

    “夢を諦めること”。
    第三者が一言で言ってしまうのは簡単です。
    けれどそれを出来るのは自分自身だけで、きっと、ずっと追っていた夢を終わらせるという決断は先が見えないまま追い続けることとと同じくらい、もしくはそれ以上に辛いのではと思いました。
    甲本が夢を諦めた理由。『6冊目』を読んだ時には涙が止まらなくなりました。


    けれどイエハーの夢は“破れた”のではなく“形が変わった”のだと言いたいのです。解散したからと言って決してバッドエンドなんかじゃないと。

    きっと大好きだったあのコンビもそんな形で解散したと思いたいです。家族でも友達でもなく昔の恋人のような不思議な関係である“相方”の絆が現実にもあると思いたいんです。


    大好きだったコンビの漫才と、それで笑っていたことを私が覚えている限り、もしも忘れてしまっても現実の芸人さん達もイエハーも一緒に夢を追ってそして叶えていたのは変わらないんですよね。

    私の人生にずっと残る、分からなかった色々なことに気付かせてくれた作品でした。(´ー`*)

    (追記)
    映画も内村さんが監督なだけあって原作だけでは分からなかった芸人がどういうものかが詳しく、分かりやすく描かれていてよかったです!最後には主題歌で泣かされました。

  • 思わず話に引き込まれました。
    芸人さんのリアルな姿に触れられ面白かった。

  • オードリーの若林さんが号泣したと書いてあった本を読んで購入。
    読みだしたら止まらなくなり、月曜日だというのに夜中まで読みふけって号泣して両目がパンパンに腫れた。一日で読破。
    芸人さんと接する機会がある人だからここまでリアルに書けるのか。
    けど、内容は決してお笑いだけに当てはまらない。
    なんか読んでくうちに本当の日記読んでる気分になった。
    個人的に、日記の日付はあっても西暦入れてない当りがにくい演出だと思った。
    「電車で絶対読まない」という判断は正解だった一冊(笑)

  • 次に進む人、夢から身を引く人どちらにも大きな勇気と行動力が必要だった。
    『夢を諦めるのも才能の一つ』だなんて今までに無かった考えだった。
    胸の内を何でも明かすのが本当に良いことなのかどうか、という点は考えさせられる。
    あとこの話、「若手芸人あるある」が結構含まれているのですね(笑)
    お笑いが好きでいろんな番組を見るけど優勝を決める番組の裏側までは考えたこともなかった。
    地文がなく日記形式なのが新鮮で、登場人物の気持ちが伝わりやすい書き方だったと思う。

  •  何、最後の「天国漫才」って!
    交換日記を始めていなければ、解散しなかったかもしれない。
    こんな辛い結末があっただろうか。
    でも、これが現実なのだろう。これが全てじゃない。もっと辛い、もっと胸が張り裂けそうな悲しい現実を受け入れた芸人もいるだろう。
    甲本が最後に綴った本音。「田中と漫才してーよー!」。これ、天国で叶ったよね。漫才できたよね。なら、いいんだよ。田中だって、イエローハーツの過去を忘れたわけじゃない。福田のほうがツッコミが上手いし、理想の相方だけど、甲本と漫才を始めなければ、福田には出会えなかったのだから。
    頑張れ、若手芸人!

  • 泣いた。
    オードリー若林の解説を読むまでフィクションだと気づかなかった。

    甲本と田中の、相手のコメントに対しての反応が、予想と違う反応ばかりだったのでリアルに感じたのかもしれません。いや、リアルじゃなくて予想外か。

    「やろうと思った」と「やる」の間には大きな川が流れている的な言葉が最も印象に残った。

    いずれまた読みたいです。

  • 舞台は観ていないが、オードリーが好きな私としては 若林正恭×田中圭 を想像しながら読んだ。
    「嫌です」で思わず笑ってしまい、彼らのやりとりが本当に面白くて最後は泣けた。
    若林正恭さんの解説も作品と同じくらい感動した。
    芸人さんの実際の人生を知らないから何とも言えないけど、好きなことを職業にするって本当に本当に大変で、でも楽しいものなのだろうなと思った。
    早くDVDを借りて観なければ。

  • 夢を諦めないその強さに感動

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著者プロフィール

放送作家。1972年生まれ、千葉県出身。Instagramで漫画「ティラノ部長」(毎週金曜日更新)と「お化けと風鈴」(毎週水曜日更新)を連載中。著書に『ブスの瞳に恋してる』シリーズがある。

「2021年 『ティラノ部長』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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