- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784778313968
感想・レビュー・書評
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2020年12月1日読了。初音ミクに始まるボーカロイドがブームとなった2007~2009頃を「サード・サマー・オブ・ラブ」と定義し、その熱狂・熱狂につながる伏線と今につながる影響について論じた本。「ブームはいつも大人が眉をひそめるところから始まる」とはご指摘のとおり、CDTVのランキングなどに「〇〇 featuring.初音ミク」名義の見知らぬ曲が多数ランクインしているのを見て「なんじゃこれ、訳わからん」と眉をひそめていた私はすっかり時代に取り残されたダサい大人なのか…。初音ミクの熱狂が、熱心なユーザーたちの創意工夫・その中で現れた才人たちの高品質な作品・環境を整えるためのメーカーの地道な努力と、何より「それ」が奇跡的なタイミングで起こったこと、たしかにこれは「サード~」と称するのにふさわしい音楽の大きな進化(革命、というのは少々大げさな表現だが、そう言ってもいいのかもしれない)ということが分かった。音楽には、まだまだ進化の可能性が残されているのかな。
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初音ミクと日本の音楽の現状について知りたくて読書。
初音ミクという映像(音楽?)を目にする機会が増えてきている。しかし、どんなもので、どんな風に誕生したかなどの背景は全く知らなかったので勉強になる。
21世紀の音楽文化に革命とも言える衝撃を与えたボーカロイド技術。音楽を所有する時代から、聞きたい音楽をコンテンツとして購入して楽しんだり、共有する時代への変化。
初音ミクでCDデビューする人。自己実現のツールとしての初音ミクなど興味深い現象で、書名の通り、初音ミクが日本の音楽文化そのものを進化させつつあるのだと感じた。
人間が存在する限り、音楽は無くなることはない。音楽を聞く手段、媒体が変化するだけである。今はそんな過渡期なんだなと実感。
去年バンコクの空港鉄道(シティーライン)一面に初音ミクがプリントされていたのを見たが、アニメでもない、J-POPでもない日本初のボーカロイド文化が、世界へ広がり、世界の音楽そのものを変えるなんて言われる日は訪れるのであろうか。
本書ではフランスの例が紹介されていたが、個人的に中国や他国での状況に関心がある。
読書時間:約50分
本書は知人から借りています。有り難うございます。 -
序章「僕らはサード・サマー・オブ・ラブの時代を生きていた」一章「初音ミクが生まれるまで」二章「ヒッピーたちの見果ての夢」の流れだけでも初音ミクが生まれた背景から技術の進化とヒッピーカルチャーとコンピューターを繋いだ男、そしてアメリカ西海岸というインターネット文化の始まりから今へとわかりやすく書かれている。
一九六七年のアメリカ、一九八七年のイギリス、二〇〇七年の日本、二十年おきのサマー・オブ・ラブには「新しい遊び場」と誰でも参加可能なコミュニティと中心に音楽があった。そう歴史が繋がれている。
ゼロ年代以降に分断されたものを柴さんが意識的に意欲的に自分が関わってきたジャンルできちんと接合しようとしている感じが読んでてする。
上の世代と今の若い世代の狭間で分断されてしまった歴史をきちんとこういう流れがあって初音ミクに繋がるんだよって。すごくそういうの大事だと思う。この書籍はできれば初音ミクとかが普通にあって聴いてきた若い世代が読む事で自分たちの親世代とか上の世代に起きた事やそれが脈々と繋がっている、歴史という時代の果てにあるんだよってことを知ることができると思うし断絶したものを繋げれる一冊になっている。
人形浄瑠璃などの文化がある日本で初音ミクが生まれて育つというかユーザーの間で育ち世界に放たれていったなどの話も興味深いがクリプトン社の伊藤社長にしている最後のインタビューは文化がいかに育って行くのか、一発屋みたいなヒットカルチャーから豊穣で次世代に繋がって行くものに育て行くかについての姿勢と新しいものは奇跡的なタイミングと出会いによって生まれてくるものだとわかる。
ボカロPたちもただ楽しむために始めたものが広がっていった。初音ミクを開発していた人たちのバックグランドにあったものが与えた影響など本書に書かれていることは「初音ミク」を巡るゼロ年の景色のドキュメンタリーだがこの十年に定番になって音楽シーンを賑やかなものにしている。
柴さんにはぜひ二十年後に起こりうるであろう「フォース・サマー・オブ・ラブ」について書いてほしい。その時二十年前に起きた「初音ミク」からの影響や類似点を挙げてもらってとなると音楽の歴史書のようになるのかもしれない。 -
2020年「初音ミクはなぜ世界を変えたのか?」読了。ボーカロイドの開発から今ままでがとても分かりやすくまとまっていて、技術の発展や世の中の変化がよくわかる一冊。最後のインタビュー記事は、ボーカロイドの話だけでなく、クリエイティブな活動の重要性が書かれていて、とても共感できる。(とりあえず紹介されていた曲のリストでも作ろうと思う。)
<リスト作成予定>
●こどもと魔法(竹村延和)
●イーハトーヴ交響曲
●恋するボーカロイド
●みくみくにしてあげる
●ストロボナイツ
●ラストナイトグッドナイト
●メルト
●恋は戦争
●ワールドイズマイン
●ブラックロックシューター
●初めてのこいが終わるとき
●桜ノ雨
●ODDS&ENDS
●千本桜
●カゲロウデイズ
●初音ミクの消失
●世界五分前仮設
●表裏ラバーズ
●ハロープラネット
●アンハッピーリフレイン
●ひこうき雲(ユーミン、とりちゃん)
●deco27、八王子P、Kz、Supercell、黒ウサ、cosMo@暴走、buzz、ダルビッシュ、wawaka、ハチ
●2011年5月には、米国トヨタのCMに初音ミクが起用される。
●MIKUNOPOLISinLOSANGELES
●キャッチコピーは「EverryOneCreator」。
●THEENS(ボーカロイドオペラ パリでも公演) -
初音ミクとは何かに迫った一冊。
初音ミクは20年ごとに来る音楽の熱気、サマー・オブ・ラブだと始まるこの一冊。初音ミクの誕生を点ではなく音楽史や創作の歴史という線で追っている。
初音ミクを超えてボカロPの名前で曲が買われている現在。なぜそのようなことが起きているのか、この本を読んでなんとなくそれが分かったような気がした。
しかし、初音ミクの声って完全な人口音声じゃなくて元の声を撮った声優さんがいるのね。本当なんにも知らなかった。。。
初音ミクを知るなら必読の一冊。 -
初音ミクを、萌えコンテンツとしてではなく、もっと純粋に、60年代からの音楽シーンの流れに位置づける試みとして論が展開されてます。
音楽詳しくないのでいちいち知らないことばかりですが……
ツール自体の価値よりも、ネット上で人々(の創作)に相互作用をもたらすハブとしての価値に注目しているのが面白く、なるほどと思いました。2007年という年の偶然の凄さも。
「あ、これ読むなら今じゃないと鮮度落ちる」と思いました。 -
初音ミク現象を第三の「サマー・オブ・ラブ(音楽を中心に文化・政治的な主張を伴った社会現象)」に見立て、様々な「目立つ」当事者及び関係者との対話と著者のポジティブな想いを熱っぽくドキュメンタリーに仕立てたエッセイ。
私も聞く側+aとして真っ只中にいた。内部のドロっっっっっドロ抗争にはなるべく蓋をし(カラオケあたりやryoさんの歌詞にちらっとだけ見えるが、もっと目もあてられない状態だ)賛美的に脚色された、厚さのわりにすらすら読める楽しい文章だった。
サマー・オブ・ラブと呼ぶには現象に政治思想があるかどうか…個人的には著作権・創作の分野に一石を投じて欲しいと願い、本の中にもあるように実際動いている方もいらっしゃるが、現象全体の思想の『主流ではなかった(内部のドロドロに一役かうほど)』とも感じている。
明るい未来を感じて欲しい「初音ミクに興味を持った一般の方」にオススメしたい夢のある本だ。 -
ネギを振る少女がフランスでオペラをするようになったという壮大な出世物語……なんですが、確かに、初音ミクって最初はオタク向けのネタキャラかと思っていた。けれども、初音ミクはみんなの創りたいという気持ちにマッチしたツールであり、それを生かすニコニコ動画やYoutubeなどの土壌があって花開いたのだなぁとしみじみ。初音ミクの曲が聴きたくなる。
にしても、帰ってきたヨッパライが根に有るとは知らなかった(笑) -
“ボーカロイドの「現象」は何故生まれたのか?それは初音ミクというキャラクターがクリエイターたちの想像力を喚起したから、そして初音ミクという一つの「ハブ」を元に創造の連鎖が起こったからだった。
こうして初音ミクは単なるキャラクター人気としてのブームではなく、クリエイターたちの創作が重なり合うムーブメントとして広まっていったのだ。”[P.146] -
初音ミクというボーカロイドについて、21世紀における音楽的位置付けをメインに論じた本。関係者への多様なインタビューが興味深い。
ブームは意図的に始まったものではなかった。インターネットは多くの人に機会を提供し、クリエイティブな創作活動へ参加するきっかけとなっていく。
これまで時代の中心であったお金という価値観さえ変えてしまう力。第三の革命といわれる情報革命のなかで、たとえ、初音ミクというブームが去ったとしても、この出来事はカルチャーへと繋がっていくのだろうか。