資本の世界史 (atプラス叢書12)

制作 : 猪股 和夫 
  • 太田出版
3.79
  • (1)
  • (10)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 134
レビュー : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778314866

作品紹介・あらすじ

資本主義はイングランドの片田舎で偶然生まれ、その後幾度もの危機に直面してきた。にもかかわらず、いまや資本主義はわれわれの世界を規定さえしているように見える。しかしそれはほんとうだろうか。資本主義の寿命はどのあたりまできているのか。多くの危機はその欠陥によるものなのか。ドイツの気鋭経済ジャーナリストが歴史から資本主義の輪郭を浮かび上がらせる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • ギリシャやローマでは、生産の効率化のために資金を借りるという発想がなかった。
    遠隔地貿易は昔からあった。
    労働力が安かったため、ローマやギリシャでは、技術革新をする必要がなく、資本家は育たなかった。

    中国は海洋帝国になれる力はあったが、商業には興味がなく皇帝への貢物だけに興味があった。

    馬にできること(荷物を運ぶこと)をわざわざ機会がやることもないだろう=セイ。
    工業化はひっそりと始まった。
    イギリスで産業革命が始まったのは、賃金が高かったから。
    機械に変えるだけの投資の意味があった。
    資本主義を駆動するのは高い賃金。
    フォード「自動車が自動車を買うわけではない」

    資本主義に対する誤解。1、資本主義は市場経済と同一ではない。2、国家は自由な市場を脅かす攪乱者、ではない。3、グローバリゼーションは21世紀の発明、ではない。

    資本主義は、統合を目指すことになる=市場経済とは反する動き。
    農業補助金がなければ農業は滅びる。
    自営業者のみが競争の中で生きている。

    実質的な意味での自由な労働、は無制限の契約の自由を制限したことで、可能になった。

  • 読了

  • 読書は私の趣味の一つで、歴史モノを読むのが好きです。かつては歴史の事件が中心でしたが、ある分野に絞った歴史(通史)も面白いことをこの数年で見つけました。この本は「資本主義」の通史について書かれています。

    ドイツの方が書かれた本で、資本主義は、なぜイギリスの片田舎(ロンドンではなく、マンチェスターp36)生まれたのか、なぜ他の国でなくてイギリスであったのか等、面白いエピソードが盛り沢山でした。

    私は資本主義下の日本で生まれ育ち、それと対峙していた共産主義の総本山である「ソ連」の崩壊、中国の事実上の資本主義への転換等を見てきています。そう言えば最近、キューバも米国と国交が復活しましたね。

    資本主義が共産主義よりは私達に適していたのかもしれませんが、まだ不具合な部分もあると思います。そのような気持ちを整理させてくれた本でした。

    特に印象に残ったのは、冒頭にあった、「資本」とは、お金ではなく、生産を効率化するプロセスであり、技術上の進歩で、これにより、経済が成長した(p9)というくだりでした。

    以下は気になったポイントです。

    ・近代的な資本主義が起こったのは1760年ころ、イングランドの北西部で、紡績工場主が織機や紡績を機械化することを思いついた時。これにより、史上初めて人間の労働力が技術によって代用され、それにより富が生まれた。「資本」とは、お金ではなく、生産を効率化するプロセスであり、技術上の進歩である(p9)

    ・資本主義は、実質賃金が上がる限り、安定して発展している。高い給料は成長を促し、会社を豊かにする(p10)

    ・1871年のドイツ帝国創設以来の人口統計データによると、当時も今も、貧しい人が短命で、裕福な人が長生きである(p15)

    ・今の西欧人は5世代前よりも、約20倍豊かになった。工業化の発展と関係がある(p17)

    ・生産の効率を高めるために貸付金を借り入れるという発想が、ギリシア人・ローマ人には全くなかった。安い労働力を使うだけで十分、資本家になる必要がなかった(p21、24)

    ・インド、中国人が生産する絹織物や宝石、香辛料は欧州上流階級が憧れる贅沢品であった。それに対して欧州人が提供できるものは僅か、ローマのガラス程度、交換となると唯一の製品である「銀」であった(p25)

    ・中国が成長に踏み出さなかったのは、それほど国力が優勢であったから。モンゴル帝国はすぐに崩壊、陸の交易ルートは閉じられたので、海を開拓する必要があった(p26)

    ・中国の役人の数が少なくて済んでいた(帝国の隅々に行きわたっていた)のは、文書のお蔭(p27)

    ・中国には巨大な灌漑設備があり、輪作も盛んで、耕地を休ませる必要なし。蒔いた種と収穫量の比率は、中世で1対10、欧州では1対4、中国に追いついたのは、20世紀(p28)

    ・中国の鄭和が1405年から7回(33年)に分けて行った海洋探検の船団は、317隻で3万人もの乗組員、1492年のコロンブスは3隻87人(p28)

    ・食料品や農業関連の素材が安くなり、ほかのもののためにお金を残せるようになって初めて、紡績工業のような新しい市場の発生が可能であった。変化が地方で始まったのは必然であった(p37)

    ・イギリスは1534年に教皇と縁を切り、みずからイングランド国教会の長になった。これにより全農地の約4分の1を管理していた修道院の所有地が没収され、下級貴族や商人に売られた。共有地も消えて私的所有地となった(p38)

    ・輪作への変化(1年間休耕するのではなく、クローブかカブを合間に植えると休閑期が不要)は、画期的なこと。1)一家を養うのに十分な穀物、2)駄馬、挽馬を働かせるためのエサ、2つの限界が解消された(p40)

    ・貴族が企業家として活動するのはイングランドならではである。欧州諸国では、公爵が市民階級の実業家のような振舞をするのは、あってはならないと見なされていた。イングランドでは長子相続権が厳然と存在していたので、貴族と平民の間は流動的。年上の息子だけが貴族の称号と財産を相続、他の子供達は全員、市民とみなされた(p43)

    ・インドよりも安い値段をつけるのに立ちはだかったのは、イギリスの高い賃金である。なので、機械が人間に取って代わるしかなかった。低賃金のドイツでは機械投入の価値がなかった(p45、47)

    ・資本主義を駆動するのは、低い賃金ではなく、高い賃金である。労働力が高いときにこそ、生産性をあげて、それによって成長を生み出そうとする技術的イノベーションが出番となる(p48)

    ・イングランドには、海に近いニューカッスルに大きな炭鉱があり、石炭をロンドンまで安く運ぶことができた。これが、ローマ人・中国人よりも有利で、石炭革命が行えた(p49)

    ・イングランドには、いちばん高い労働力(実質賃金が他欧州と比較して2倍高かった、p55)といちばん安いエネルギーを持っていた。この組み合わせは世界的に見ても比類ない事で、工業化がなぜイングランドで始まったかの説明になる。人間を機械で代用して利益をあげられるのはイングランドしかなかった(p50)

    ・イギリスの工業技術の専門教育がドイツレベルに到達したのは、1963年。工業を強化するよりも、商取引・海運・外国の事業投資に興味があった。1914年時点で、海外への直接投資全体の44%がイギリス、残りが、仏・独・米・ベルギー・オランダである(p67)

    ・資本主義が今日のような形をとって、100年が経過する。成熟した形になったのが、第一次世界大戦直前、少数の企業が市場を支配、グローバルに行動する、そしてそれら企業は、援助という名の国家の介入を当てにしている(p70)

    ・本当の意味での市場は、経済政策の対象とならない隙間分野に存在する。自営業者、職人、理髪師、飲食店経営者、建築技師、商店主等(p78)

    ・実質成長は、技術の進歩によってのみ可能、それは、技術の進歩がなければ資本主義は終わってしまう(p95)

    ・19世紀になって本来の意味での経済的グローバリゼーションが始まる、それは、蒸気船と電信(p113)

    ・汽船の運航や、スエズ運河の建設も革命的な効果、輸送コスト(イングランドとインド間)は、19世紀のうちに、単位当たり98%減となり、世界貿易が実質10倍となった(p114)

    ・世界経済が1913年のように再び絡み合うようになったのは、1970年代から、1989年をもって東側ブロックが解散し、中国が輸出に力を入れるようなったが、約80年ぶりに資本主義的な交換で一つになった(p116)

    ・1797年、イギリスの首相であるピットは、ポンドと金との交換停止に踏み切った。これにより純粋な紙幣本位制となった。有効期間はもともと6週間であったが、1821年まで24年間存続した。奇跡が起きたのは、ポンドが金による裏付けを失っても、価値が保たれた。それは、金によってでなく、その国のGDPで保証されていたから(p131)

    ・金融資産が増加すると、世界が豊かになったように見えるが、実際には不健康的。資産の価値は、毎年どれだけの利回りをもたらすかで計られる。その収益は現実のGDPからもたらせるべき、国民所得が伸びないのに金融資産ばかり上昇するといつかクラッシュする(p163)

    2016年4月24日作成

  • この手の本にありがちな理想論の誤魔化しが比較的少なくて好感が持てる。
    持続可能な成長は無い、なんてなかなか言えないですよ。

  • レビューはブログにて
    http://ameblo.jp/w92-3/entry-12133533763.html

  • 基本的に経済史から説く立場なので、読んでいて安心感がある。産業革命がなぜイギリスで起こったのかという答えとして「労働者の給料が高くて、機械化がワリにあった」というシンプルなもので、わっかりやすーい。貯蓄は悪! なぜなら「全員が貯蓄」するのは不可能だし、貯めれば貯めるほどお金がまわらなくなって不況になるから! だから稼いでる奴から税金とって、そのぶん政府が仕事してお金を回そうよ、労働者の給料上げようよ、という提言も「だよねー」ってかんじ。経済発展をGDPの成長と同一視するのではなく、「生産性の底上げを超える部分はバブルじゃん」とこれも納得。読みやすい反面、「ぎゅっ」とまとめられないエッセイ的なところがあるが、そこも味といえば味。

  • 332.06||He

全7件中 1 - 7件を表示

ウルリケ・ヘルマンの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
リンダ グラット...
エリック・リース
クリス・アンダー...
アンソニー・B・...
ジャレド・ダイア...
シーナ・アイエン...
トーマス・セドラ...
ベン・ホロウィッ...
有効な右矢印 無効な右矢印

資本の世界史 (atプラス叢書12)を本棚に登録しているひと

ツイートする