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- / ISBN・EAN: 9784778314965
感想・レビュー・書評
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一言でいうと「愛すべき極論」といった感じか。著者は、三島への思い入れ&思い込みが強すぎて、あらゆる作家のあらゆる作品の端々が「三島からの引用」であり「三島の割腹自殺のメタファー」に見えてしまうようだ。自分の好きなものどうしがつながっていることを密かに見つけるのは愉しい。その愉しさがビンビン伝わってくる。だけど、一冊の書物として出版されていることを考えると、ちょっと断定しすぎかなあ。私は引いた。あと「春樹VS龍」とかやたらと作家どうしをたたかわせたがるのも、どうかと思う。本人たちは三島を引用したとも、別の作家とたたかっているとも思ってないかもしれないよねえ。
とはいえ、三島はもちろん、村上龍、町田康、阿部和重…と、これだけ自分の日ごろ愛読する作家たちが1冊の本の中に登場するのは嬉しいものだし、三島の裏話もいろいろ知ることができてよかった。自衛隊のバルコニーで檄を飛ばした後、切腹のため部屋に入るときに「あんまり聞いてもらえなかったな」というようなことをつぶやいたとか、せつなすぎる。また、「一人称小説のヒーローは死なない(生き残って語っているから)」など、面白い発見もいくつかあった。ランボーの荒野と『豊饒の海』のイメージの重なりもうなずける。
あとがきによれば、著者は本書を執筆する際、三島の生首の写真(当時はふつうに雑誌に掲載されたらしい!)を拡大コピーしたものを机上に置いていたとか。それじゃあ、こういう論調になるのもしかたないよなあ、と思ってしまった。
あと、プロローグにウェルベックも登場するが、ちょうどこのあと『服従』を読む予定なので、「ウェルベック面白そう!なんか龍さんみたい?」とテンションあがった。そこはよかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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