全裸監督 村西とおる伝

著者 :
  • 太田出版
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本棚登録 : 195
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (712ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778315375

感想・レビュー・書評

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  • かつてAV界の帝王と言われた村西とおるの半生記。約700ページに及ぶボリュームで読みごたえあり。著者は若いころ村西のもとで働いていた経験があるため、村西とは旧知の仲であることから、自身の当時の体験も踏まえ、かなり突っ込んだ内容となっている。80年代のホームビデオ勃興期を過ごした人なら、誰でも面白く読めるはず。当時村西監督のビデオはかなりの話題になっていたものの、あまりに監督のアクが強すぎるため全然観る気にならず、結局今に至るまで未見。ただ、この本を読んで当時のビデオの撮影裏話などを読み、今更ながら観てみたいと思った。

  • ビジネスを起こす人には、起業家と産業家がある。産業家とはその産業そのものをおこした人で、その産業のなかで起業家は起業をしていく。
    スノーボードの世界のジェイクバートン、ECの三木谷さん、コンビニの鈴木敏元会長、自動車のフォード、電気自動車のEマスク、などが産業家といえるだろう。
    そして村西とおるは、アダルト映像産業の産業家、裏街道の産業化といえるだろう。
    産業家に浮き沈みはつきものとはいえ、その浮き沈みはすさまじい。トータルの前科7、くらった求刑は累積300年をこえ借金は50億円。
    こんな怪人のそばで仕事を一緒にした筆者による村西とおる評伝がおもしろくないわけがない。
    表産業の起業家のビジネス本は山ほどでているし、最近はバブル期の裏面を暴露する企業本が山ほどでてくるが圧倒的にこの本のほうが1000倍おもしろい。
    それは村西さんが、ど真剣に生きてきたから、につきるとおもう。
    真剣にいきてる人は周囲からみるとどこか滑稽にみえるものだ、という記述があるがそのとおり。
    表産業の産業家の代表格である孫さんも毀誉褒貶が激しくときとして滑稽にみえるほど必死に取り組んでいるわけだが、この本でも何箇所か孫さんへの言及もあるのがおもしろい。表街道を上り詰める孫さん、裏街道を下り詰める!?村西さんって感じで、ある意味で似たような凄みのある動物的バイタリティ、生への真剣さを感じます。
    とくに圧巻は応酬話法という技術。これを駆使して営業の天才的成績をあげるのだが、この技によって百科事典からなんでもうりまくる自信をつちかったらしい。実際、この技術で命が救われたことも何度か。で、その話芸の磨き方は努力の裏返しでつちかわれておりその努力の仕方も壮絶。
    また人生で失敗した人(お金を仮に来る人、犯罪者、殺人者など)に対してほっておけなくてなんとかしてしまう破滅的な親切さも魅了的。

    まったく正反対のトーンだけど、黒澤明の「生きる」に通じる読後感があって、(ガチに)「生きる」ってこういうことなんだと思わせる快作。

    ひたすら成功に向かってのぼりつめそして破滅にむかって下っていくストーリが続くのだが、くだりきったところに、ご子息と妻との安定した幸福な生活がうまれていくところなどはとても好きなシーン。

    あなたに足りないのは前科だ!
    と喝破するわけだがその覚悟でぐいぐい突き進んだ人の話なので生きる気が120%増幅される。

  • ある日、宮坂社長から「お前、これ読んだかー?最高だぞー」と言われて借りた本。確かにこんなに元気が出て、こんなにホロリと来る評伝も珍しい。そこはかとなく味わい深い。

    個人的に日本は、格闘技とエロと釣りのレベルが世界的に見ても最高だと思っているが、これは、エロの中でもAVという特大ジャンルの文法や所作の大半を一人で作り上げた男の話である。作者は遠く80年代前半、ビニ本時代から村西とおると仕事をしていた人であり、途中で何度か村西についてのルポを書き、あしかけ30年で集大成的評伝を書いたのだからすさまじい力作である。こういう毀誉褒貶、浮き沈みの激しい人物はかなりの長期スパンや経年で書かねば全体像が浮かび上がってこないのだが、まさにこの30年と言う期間はそれを可能にしたように思う。

    本は、評伝の定石どおり村西の生まれた環境から入る。極貧の福島時代、一攫千金を夢見て上京、唯一のサラリーマン時代である百科事典のスーパー販売員時代、そして教育業界に志を立て、英会話学校を開校したりインベーダーゲーム機で起業した時代など、後のDVDパンツ一枚ではなくスーツ時代の知られざる村西を描く。そしてついに、新宿歌舞伎町で飲んだ後にたまたま見たビニ本屋での熱気をみて、それを文化格差のある北海道に持ち込むことを着想してから、90年代前半のバブルが終わるまでの村西の"狂気のエロビジネス時代"が幕をあけるのでる。

    ビニ本で流通革命を行い圧倒的な全国シェアを握った村西は、それを地下化させ、裏本王となる。が、そこで敢え無く逮捕、無一文に。裸一貫で出直した東京には、当時、VHSのビデオデッキが普及し始めていたのだが、圧倒的なソフト不足。「新メディアはエロから始まる」の鉄則どおり、ポルノビデオが出回り始めていた。そこに目をつけた村西は西村忠治氏をスポンサーとして伝説の「クリスタル映像」を立ち上げる。(村西の本名は草野であり、クリスタル映像で監督業を開始した草野は、西村氏へのオマージュとして名前を逆転させて、"村西"とした)最初は監督の才覚が発揮されず、海外ロケ等予算はかかるが内容は酷評の作品群を量産するが、ふとしたきっかけで、その後、"駅弁"や"本番"と並び村西の象徴である"顔面シャワー"の嚆矢となるような映像が撮れ、それが飛ぶように売れたことに着想を得て、以後、ユーザーファーストな映像つくりを体得し、勃興するAV業界でシェア40%を握ることとなる(なおこの時には「ダイヤモンド映像」を起業していた)

    途中数度の逮捕騒動や黒木香等のスターの輩出を経て、狂乱のバブル時代に突入。文字通り金と女を自由自在に操る村西は全盛期を迎える。その時の狂気の沙汰は本書に詳細に描かれている。日本が唯一一度だけ経験できた時代の空気だろう。

    そして、その後の落ち込みぶりもハンパなものではない。公称借金50億円を自己破産せず、いまだに返済をし続けている村西は悶絶の苦しみの連続。最終的には借金苦がたたって、自殺や病死の淵をさまよう。禍福は糾える縄の如し、個人的には不幸のどん底であったが、この間にAV女優と再婚、長男が生まれ、貧乏だが愛のある幸福な生活も同時に送ることになる(なお、この子供を慶應幼稚舎?に入学させるところのくだりは本当に感動的である)

    この評伝を読んで思うことは、現在68歳の村西とおるはまさに団塊の世代の象徴的人物であり、団塊世代が多かれ少なかれ経験している人生の歩みを極端に、グロテスクに、お下劣に、でも味わい深く表現しきったのが村西とおるの人生であろう、ということである。戦後日本の青春が全て詰まっている評伝、そして戦後生まれた最大の文化産業の勃興を感じ取れる作品として実に興味深い内容となっている。これからがんばりたい、いま落ち込んでいる人などにはぜひ読んでもらいたい作品である。

  • 22.30.01.09.タマフルより。舞台が北海道だったりもあり楽しく読めた。この人も直感を大事にするタイプみたい。子供と接する時間が長いとやはり成長は加速するのだろうか。ナイスです。

  • かなり流し読みになってしまったが、濃いわぁ~。

  • 80年代に話題になったAV監督である村西氏の生き方を綴った一冊。当時はキワモノな人に見られている部分もあり、そんな印象を持っていたものですが、今回この書籍を読んでみて、氏の才能と行動力には目を見張る物がありました。有名人で全てに上手く行っている風に思われる反面、実際は色々な問題とストレスに追われていたと言う事。この人の伝記を読んでみると、世の中凄いなと思う反面、自分の悩みなんてまだ小さいものだな?と変に気持ちが前向きになります。ページ数も厚いので読み応えもありますが、読んで損はない一冊と感じます。

  • 「村西とおる」という人を知っている世代には、その人と同じ時代を生きたことを誇らしく思える厚い本である。

  • スキャンダルの奥には一筋縄ではいかない事情がある.暴力団の組長がAV監督をやっていたような存在感.良くも悪くもまさしくAVの帝王!息子のことにも触れていたが,家族は大変だろうなぁとしみじみ思った.「ナイスですね.村西とおる」を見てみたい.

  • 80年代から90年代初頭に一世を風靡して、借金50億を作りながらも今なお現役で活躍する村西とおるの伝記。

    当然ながら清濁併せ持つ人物だが、その転んでもただでは起きないバイタリティが、現代の我々に足りないものなのかもしれないと思った。

  • 【文章】
     とても読み易い
    【気付き】
     ★★★★・
    【ハマり】
     ★★★★・
    【共感度】
     ★★★★・

    何に対して価値を感じるかは人によって異なる、相手にとっての必要性を創造する事がセールス。

    応酬話法は説得の哲学
    人を説得するときの二つの条件
    ・相手をよく「理解」する事
    ・自分自身の成功体験から生まれる「情熱」を持つ事

    流通を制する者は資本主義を制す。

    草食化現象…無修正動画が若いうちからネットで手軽に見られるようになったため、女性の裸に対するハングリーさが無くなった。

    性器自体が卑猥なわけではない、エロチシズムは感情であり、個々人の頭の中で、環境からの影響を受けて定義される。
    時代や、地域が異なれば、何を卑猥と感じるかも変わってくる。

    生命が有限であるからこそ、感情が生まれる、その究極がエロス。

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著者プロフィール

1956年、所沢市生まれ。著述家。早稲田大学政治経済学部卒。逍遙と実践による壮大な庶民史をライフワークとしている。著書に『東京最後の異界 鶯谷』、『上野アンダーグラウンド』『迷宮の花園 渋谷円山町』『全裸監督』など多数。

「2018年 『色街旅情 紙礫EX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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