毛の人類史 なぜ人には毛が必要なのか (ヒストリカル・スタディーズ18)
- 太田出版 (2017年1月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784778315573
感想・レビュー・書評
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たかが毛されど毛。無駄で処理される毛もあれば、逆に必要とされる毛もある。そんな毛にまつわる物語。そういえば、今まであったようでなかった種類の本だな。
毛包(毛根部分の毛を生み出す源)に関して研究してこの道30年以上と言う毛のエキスパートによる今回の本。1章から3章までは、生物の知識があったほうが読みやすいなあと思ったがそれ以降は、毛にまつわる歴史などが載っていて読みやすくなる。
毛に関する悩みの一番と言えば薄毛か。あのユリウス・カエサルも薄毛に悩んでいて、政敵からそのことを揶揄されるのを気にしていたというから根深いものがある。
理髪店の前にあるおなじみの看板柱。元をたどると昔行われていた瀉血(しゃけつ、治療目的で血液を体外に排出させること)の処置を意味している。理容業には髪を切るのみならず、外科医としての役割を兼ねていた。
本をペラペラめくっていて目に飛び込んできたものがある。それは「マカロニ」だ。とはいってもパスタではなく、17,8世紀にイギリスで流行した桂の一種だ。「マカロニ」と呼ばれた伊達男たちの間で人気になったとある。いつの時代にも目立ちたがり屋がいるものだ。おしゃれするのも大変だなあ。
毛だけに結構コンパクトにまとまっているなあと言うのが感想だ。
マカロニに関する記事
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コンパクトにまとまっていてよかった
なんでもないようなものだと思っていたが、毛はけっこう複雑な構造をしていることには驚いた。
人毛はタンパク質だが食べても消化できないそうだ -
生き物には毛が必要だった。
けれども、現代の人には毛は必要なく、衣類を身にまとっている。ただ、毛の影響は大きく、頭髪の有無で人に与える印象が変わる。
毛にまつわるあれやこれやのコンテンツ本。読んでいて楽しい。
これを読むと、毛とはよくできた外界との緩衝材だなぁと。 -
興味深かったこと
FGF5を除去したマウスは、毛周期の成長期が非常に長くなるので、FGF5が毛幹の長さを制御するブレーキの役割をなしている。
音のストレスはホルモンや神経を介して毛の成長を抑制するのに対し、外側からの直接の傷は毛の成長を刺激する。
毛幹の成り立ちは、映画が多くのコマで構成されているのに似ている。映画の一コマ一コマが長い物語の断片を映し出すように、毎日、毛幹の底に付加される細胞にはまさにその日の健康状態が記録されている。(中略)毛幹はひと月あたり1.3cmほどのペースで伸びるので、水銀が記録された’’コマ’’は魚を食べた3ヶ月後に皮膚表面から約2.5cm上の位置にある。
将来的な植毛法:毛包から幹細胞を取り出して毛乳頭細胞と組み合わせ、毛包の前駆細胞を形成し、患者の頭皮の適切な位置に移植できるよう、最後は植毛手術を担当する外科医(またはロボット)に戻せばよい。
将来的な発毛の薬物療法:正常な真皮細胞を望む部位の毛包になるように誘導する成長因子の構成を突き止め、これらの物質をナノ粒子を使って狙った部位にピンポイントで届ける。粒子表面にアンドロゲン分子を持っていれば、アンドロゲン受容体を持つ細胞にくっつく。