裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち (atプラス叢書 16)

著者 :
  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778315603

感想・レビュー・書評

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  • 沖縄で未成年の少女たちの調査・支援に携わり、2012年から綴られた記録である。
    著者自身が、沖縄生まれであるからこそわかる土地感や環境もあるのだろう。
    とても詳しく書かれていた。

    少女たちが、10代で家を捨てて風俗業界で働くこと。
    そして10代半ばで子どもを生み、シングルマザーとして暮らしていること。
    淡々と書かれてはいるが、決して普通ではない。

    そこまでに至る理由。
    複雑な家族関係が影響される。
    彼女たちは、家族や恋人や男たちから暴力を受けて、生きのびるためにその場所から逃げる。
    回避することができなければ、どうしても家を出て誰かに縋りつき、年齢を偽って夜の仕事をする。

    中には、目標を見つけ、看護師の資格を取り頑張ってるのをみれば、よかったと思える。
    すべてが事実であるために彼女たちの今は、どうなんだろうと気になるが。
    沖縄だけではなく、辛い思いをしながら毎日を生きている少女はいるのだろう。


  • ずっと読みたいと、図書館の予約リストに入れていた本。
    でも、読むには覚悟がいるだろうと、長いこと保留にしていた。

    上間陽子さんは、よく聞くラジオ番組で沖縄がテーマとして取り上げられる際、時々出演される。
    柔らかい言葉でゆっくりと話される上間さん。
    ああ、この人にだったら頑なな少女達も心を開くのだろうな…と感じさせられる。
    ご本人も、沖縄の米軍基地のフェンスが目の前に広がるエリアで育ったそうで、この本に書かれている少女達は、かつての上間さんの同級生達と重なるとも書かれていた。
    沖縄の暴力に晒される少女達について、少女が女性となる年齢になるまで付き添い続けた記録。

    家庭の中に日常的に暴力があると、無力な少女はただその場から逃げるしかない。そして逃げた先にもまた暴力がある。
    覚悟して読み始めたが、本当に読むのが辛くなる。
    まだ14、5歳の少女達がなぜこんな過酷な状況に晒されなければならないのか。
    しかし、上間さんは彼女達にただ同情するのではなく、その考えを尊重し、言葉を聞き、ただただ寄り添う。
    大人になった彼女達は、連絡の取れなくなった少女もいるが、それは過去と決別したことと受け止めている。
    皆、自分の足でしっかりと立ち、誇らしく生きている。

    この本では、少女達の過酷な現実を描いているが、その背景にある男達の暴力について、その元となる要因のことはあまり書かれていない。
    沖縄には基地という巨大な暴力があるが故なのかもしれないが、男達の暴力の連鎖についても知ることができたら、と思う。
    2022.6.9

  • 大学の先生からお薦めしてもらい読んでみることに。

    舞台は沖縄。家庭環境がうまくいっていない若い女の子達が複雑な事情を抱え、逃げ場を求めるが、助けてもらう場所が見つからず、必死に自分の力で生きていくという実話が載っている。

    未成年の妊娠、恋人からのDV、売春、、
    観光地で美しい海など良いイメージでしかない沖縄でこのようなことが起こっていることを知って愕然とした。

    私たちはこの事実を見逃していいのか。
    とても考えさせられる話でした。



  • 上間陽子さんの「海をあげる」を読書会で取り上げることに
    その前に未読のこの本を読みたいと図書館予約

    ≪沖縄の風俗業界で働く女性たちの調査の記録。家族や恋人や知らない男たちから暴力を受けて育った少女たちが、そこから逃げて、自分の居場所をつくりあげるまでを綴る。≫

    壮絶な内容
    「かわいそう」ではない
    そういうものではないと

    著者は静かに少女たちの話に耳を傾ける

    私たちも静かに読もう

    ≪ うしろ見ず ただ逃げてきた 夜の街 ≫

  • 沖縄に住む彼女たちの壮絶な体験に関する、上間さんの丁寧な聞き取りを読みました。しかし、自分には感想をどう書けばよいかわからないのです。それで、 長くなりますが本文より引用します。

    「まえがき ー沖縄に帰るー」より
    p.6 9行~
    私たちは生まれたときから、身体を清潔にされ、なでられ、いたわられることで成長する。だから身体は、そのひとの存在が祝福された記憶をとどめている。その身体が、おさえつけられ、なぐられ、懇願しても泣き叫んでもそれがやまぬ状況、それが、暴力が行使されるときだ。そのため暴力を受けるということは、そのひとが自分を大切に思う気持ちを徹底的に破壊してしまう。
    それでも多くのひとは、膝ががくがくと震えるような気持ちでそこから逃げ出したひとの気持ちがわからない。そして、そこからはじまる自分を否定する日々がわからない。だからこそ私たちは、暴力を受けたひとのそばに立たなくてはならない。そうでなければ、支援はつづけられない。

    ~あとがき より~
    p.259~
    私もまた、ここ沖縄で何が起きているのかを記述しながら、多くの方と手をとりあって、子どもたちがゆっくりと大人になれるように、そして早く大人にならなくてはいけなかった子どもたちが、自分を慈しみ、いたわることのできるような場所をつくりだしていきたいと思っています。
    女の子たちが自分の足で歩こうと切り開く道が、引き受けるに値する相応の困難と、それを克服する喜びに満ちたものであることを願っています。
    そして彼女たちのあのさえずるようなおしゃべりや声が、多くのひととかわされ柔らかく広がっていくことを願っています。
    朝をまちながら 上間陽子

    本書を読む人が増えることで社会の理解がすすみ、サバイバーである彼女たちの未来が、明るい方へ明るい方へ拓かれていきますように。

  • 上間陽子さんの作品、「海をあげる」に続き2作目。この作品の方が早く出版されたのだが。
    「海をあげる」を読んだ後、しばらくしてNHKの100分de名著フェミニズム編で上間陽子さんが出演していた。
    落ち着いた、とてもいい印象だった。
    で、その後の読書なので、前回よりも好意的に読むことができた。沖縄の少女たちに寄り添うことを決意した生き方を応援したい。

    研究者の本としては、自分の感想がゆるゆるに書かれているのが、前回違和感があったのだが、今回は、ま、いっか、と思いつつ読めた(笑)
    上を向かないと涙がこぼれる、といった筆者の気持ちが挿入されるのが、どうも苦手ではあるが、こういう書き方が必要なのだな、とは思うので。
    ちょっと緩いところもある、研究者然としていない本だからこそ、多くの読者がこの本を手に取ることになったのだろうし。

    ところどころ、映画の「遠いところ」と重なった。(この映画は本当によかった)この映画で描かれているシスターフッドがここでも描かれている。殴られた後2人で撮る写真のシーン、まさしく同じようなやり方で、笑い泣きしながら、女たちは励まし合ってきたのだよね。


    「ハーフザスカイ」の直後に読んだので、何度も「ハーフザスカイ」で書かれた性虐待のことを思い出した。沖縄の出来事も重く苦しいものであるのに、それが軽く思えるほどに、世界で起こっている女性の性虐待は悲惨で酷い。
    この胸の痛みは知ることでしか感じることはできない。
    これらの本を書いてくれる人たちに感謝です。

  • 私の知らない恐怖、私の知らない痛み、私の知らない世界。
    それがこの本にありました。
    言葉もつたなく、自分の思いを表現することに長けていない彼女達。
    十代で未婚の母になり、生活のために夜の世界に入り、ダメだといってもDV男の元に戻ってしまう。
    幼い頃から暴力に晒されていると暴力を振るわれても「当たり前」だと思ってしまうようになる、という事を聞いて衝撃を受けた。
    そんな世界から裸足で逃げてきた。
    上間さん達に過去を語り、自分の感情を吐露することでなにか変わったのだろうか。
    彼女達と上間さんたちとがじゃれあいながら笑い合いながら‘日常’を送っているシーンの数々がキラキラしすぎて眩しい。
    もしかしたら、私の知らない幸せの味わい方を知っているのかもしれない。
    彼女達をジャッジせず、ただ寄り添うように話を聞き、描いた筆者の姿勢は好感が持てた。

  • とても複雑で重い本であった「海をあげる」を印象深く読んだ。「海をあげる」の作者の上間陽子が、別の本を書いていることを知り、手にとった1冊。実際には、本書の発行が2017年、「海をあげる」の発行が2020年なので、この本の方が出版が早いということになる。
    上間陽子は、琉球大学の教育学部の教授で、学者である。Google Scholar で検索すると、筆者の書いた学術論文がいくつかヒットする。例えば、そのうちの1つの論文のタイトルは、「風俗業界で働く女性のネットワークと学校体験」というもので、論文を著すために、実際に風俗業界で働く若い女性にインタビューを行っている。
    本書も、沖縄に住む若い女性へのインタビュー記録で構成されている。インタビュー対象として、本書で紹介されているのは、キャバクラや援助交際をしながら生きる若い女性で、多くがシングルマザーであり、複雑な家庭環境や恋人等からの暴力、DVなどのとてもつらい経験をしてきた人たちである。これらインタビューも、何かの学術的調査の一環として行われているということである。
    調査の目的は分からないし、ここに出てくるインタビューの内容をどの程度、一般化して考えれば良いのか分からないが、本書に記述されているインタビュー内容は、思わず目をそむけたくなるくらいの凄惨な内容のものが多い。インタビュアーの上間陽子自身が、「泣いてしまった」等という記述を繰り返していることからも分かるように、本当に聴くのがつらくなってしまうような話ばかりである。「一般化」する必要はなくて、ここに登場する女性たちが、インタビューの後に「個人として」幸せになってくれていれば良いのにな、というのが読後感で、それ以外のことは思い浮かばなかった。

  • 「彼女たちは、家族や恋人や男たちから暴力を受けて、生きのびるためにその場所から逃げようとします。…どこからも助けはやってこない。彼女たちは裸足でそこから逃げるのです。」
    ーあとがきより

    ずっと気になっていた本書。
    筆者・上間さんが本書を書くきっかけとなったのは、久々に故郷の沖縄に帰ってきたことからだった。
    …読んでいてつらかった。でもこれはノンフィクションであり、このような生き方しか選べなかった少女たちの人生そのものなのだ。
    あとがきの序盤には、「この本は、二〇一二年の夏から沖縄ではじめた調査をきっかけに出会った女性たちのうち、キャバクラで勤務していた、あるいは『援助交際』をしながら生活をしていた、一〇代から二〇代の若い女性たちの記録です。」とある。
    本書でインタビューに答えた6人の女性たちの、その短くも様々な経験に満ちた人生を、時には会話形式(もちろん沖縄の言葉)で、時にはインタビューの聞き取りを筆者が要約して、という形で綴られている。
    非常に読みやすい。
    読みやすいだけに心に刺さる。
    15歳頃から年齢を偽っていわゆる夜の仕事をしていた女性がほとんどで(全員だったかもしれない)、やっぱり6人のうちほとんどの方が16歳頃という若さで妊娠・出産・中絶などを経験している。
    そして出産した方たちは、自分の苦しみを抱え働きながら子どもを育てていく。
    彼女たちの人生にも胸がギュウゥッとなったのだが、だがしかし、自らの苦しみを抱えながらも彼女たちが、自分が産んだ我が子をとても大切に、愛おしさを込めて身を削って育てているところにも別の意味で胸がギュゥっっとなった。
    読みながら泣きたくなったけれど、こっちが泣いてる場合じゃない。
    筆者…上間さんがインタビューをしなければ、きっと誰にも気づかれなかっただろううら若い彼女たちの人生。まだまだ続いていくはずの、若すぎる彼女たちの人生。
    その人生の中で起きた、DV・失恋・我が子との別れ・ネグレクト・中学生のうちの妊娠やレイプ被害を家族に理解してもらえない…などなど、数えきれないとても苦しかった経験などを、彼女たちは上間さんに語っている。
    逆に言えば、上間さんに語る機会ができるまで、誰にも我が身に起きた恐ろしい出来事をずっと話せずにいたということだ。
    上間さんも本文中で述べているが…そのようなおぞましい出来事を、彼女たちがすべて自分の責任であるとしてたった一人で受け止めようとしている…そのことがとても苦しかったし、きっとそのような少女たちはこの令和にもいるだろうに、何一つ行動を起こせていなくてごめんなさい、と傲慢にも思ってしまう。
    けれどつらい状況の中で、インタビューを受けた6人は、もがき、泣きながらも、己の人生をなんとか良い方向へ向かわせようと生きている。
    どうして、わたしにはできない、きっと生きていけない、と彼女たちの行動力にも圧倒される。
    しかし圧倒されながら、私もまけてられない、泣きながらでいいから生きなければと、彼女たちの姿に勇気づけられた。
    また彼女たちの人生を聞き取り、一時期とはいえ見守ってきた上間さんによる、各題が悲壮すぎず、彼女たちの人生に希望の光がさしますようにという気持ちが伝わってきて、とても良い。

    ああ…感想がまとまりません。
    何を言っても、彼女たちの生き様と苦しみとさまざまとを前には薄っぺらくなる。
    どう締めくくろう?毎度この手の本を読んだ時こんな締めになってしまうが……本書でインタビューを受けた彼女らに限らず、みなに幸あれ、居場所あれ。


    最後に備忘録がてら目次を。

    まえがきー沖縄に帰る
    キャバ嬢になること
    記念写真
    カバンにドレスをつめこんで
    病院の待合室で
    あたらしい柔軟剤 あたらしい家族
    さがさないよ さようなら
    調査記録
    あとがき

  • 妻に勧められ読んだ。沖縄に住むものとして、辛い現実であったが、重く受け止めたいと思う。

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著者プロフィール

1972年、沖縄県生まれ。琉球大学教育学研究科教授。生活指導の観点から主に非行少年少女の問題を研究。著作に『海をあげる』(筑摩書房)、『裸足で逃げる』(太田出版)、共著に『地元を生きる』(ナカニシヤ出版)など。

「2021年 『言葉を失ったあとで』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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