エロマンガ表現史

著者 :
制作 : F4U 
  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778315924

感想・レビュー・書評

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  • 作者の創意工夫によるエロ表現はどのように広がり、エロマンガ表現の『記号』として定着したのか?作品の絵を参照しながら解説した本。エロマンガに詳しい訳じゃない(本当に!)けど分かりやすかった。

    そんな解説書ではあるけど、この本の魅力の一つとして著者の言い回しのおもしろさがある。私は門外漢ゆえに、出てくる用語が業界用語なのか、著者の造語なのかが判別できない。例えば、『ロリコン原理主義派』『乳の性格=「乳格」表現が進んだ』とかおもしろいんだけど、著者の創作言語な気がしてならない。『金髪の外人が黒船として巨乳開国を迫ってきた』とか『巨乳待望論』、『世は巨乳戦国時代へと突入』やらちょっと何言ってんだ(笑)と思う。『マンガの中におっぱいが描かれたときから、おっぱいは常に揺れてきた歴史がある』とか、そんな歴史を聞いたのも初めてだ。ただ著者は膨大な資料にあたっているし、若干ふざけつつも研究者としての真摯さが感じられる。

    この本を読みながら、官能小説の中で使われる言語表現を辞典にした「官能小説用語表現辞典」を思い出した。ただ、この本は表現辞典ではなく表現史なので、絵の表現の移り変わりを比較分類し、説明する必要がある。たとえば「乳首残像」の絵は、どこからどこまでが「乳首残像」と言えるのか?「乳首残像」と分類した表現はどのように進化したか?を分類しながら説明するのは難しい。著者の主観になりかねないが、その表現の細部の差異を一生懸命見ていこうとする情熱は大変なものだ。エロは細部に宿るのかもしれない。

    エロ描写はマクロの引いた視点で描いてしまうと3行くらいで終わってしまう。エロとして成立させるためには、その一瞬を切り取って、微に入り細に入りミクロな視点で描く必要がある。しかし「断面図」の章の最後で軽く触れられているが、精子と卵子まで描こうとするとそれは「生命の神秘」みたいなスピリチュアルな話になる。つまり性から聖への転換が起こるのかもしれない。

    エロマンガと官能小説で共通しているのは、直接的な猥褻表現が規制されたことで多様な表現が生まれた、という点。この点について、つい納得しそうになる。しかし本当にそうだろうか。例えば、おっぱいの表現は大きな規制がないにも関わらず多様な表現が生まれた。特に規制がなくても別の多様な表現が出て来るのではないだろうか。

    作者インタビューの中で「何がエロいのかわからなくなった」と語っている人がいて、精神を病んだギャグマンガ家が「何がおもしろいのかわからなくなった」と言っていたのを思い出した。何事も追及すると哲学的になるようだ。ギャクマンガ家は精神を病んでもエロマンガ家は病まない気がするが、どうだろう。

  • エロマンガの歴史は表現規制の歴史であるのだと改めて思わされる。「触手」や「断面図」が猥雑表現の回避から生まれたものだとは。「黒ベタ」「白ヌキ」のような修正の基準も時代ごとに不確定なもので、文化というものは時代の趨勢にたやすく左右されてしまうということを再認識させられた。ときに、海外に輸出された日本の成人コミックは無修正のものが少なくないとのことで、知り合いにエロマンガ好きがいたら旅行土産に買っていくと喜ばれるかもしれない。「らめぇ」を擬音語に分類するのはピンとこなかった。描き文字が多く用いられるからといってすなわちオノマトペであるというわけでもあるまい。

    (追記)
    「表現規制の歴史」と書いたけど、そういうアンチ体制の闘士みたいな見方は抵抗感のある人もいるだろうし、じっさい物事の一面に過ぎない。本書でもさまざまな例が紹介されているが、作家と版元と読者の共犯的な表現欲の追求みたいな部分がやはり大きいのだろう。

    「肩こりをほぐす電気マッサージ器がセックスの小道具として使用されていくうちに、何故かそれを見ただけで、エロい気持ちになるような条件反射が、断面図でも起きたのだ」(p.203)
    「一〇年以降に増えた表現で、男性器が一気に射精するまでの過程、精液が尿道をせり上がっていく様子を男性器の「断面図」として描く手法で、まるで地中のマグマだまりからマグマが押し出され、噴火するような精液の勢いが表現されている。筆者はこの表現を「マグマのせり上がり」と呼んでいる」(p.210)

  • エロマンガの様々な表現について、どのように使われ始め、広まっていったのかを解説した本。参考画像が多数あるため、エロマンガに詳しくない人間でもスムーズに読み進めることができる。

    しかしこのようなエロマンガゆえに現れた特殊な表現の数々を見ていると「フィッシャーのランナウェイ」を思い出す。エロマンガと読者による共進化の成れの果てが、断面図やアヘ顔なのかもしれない。

    しかしこういう本こそKindle化すべき本ではないだろうか。興味があったので紙の本でも早々に購入したが、これを公共の場で読む気は起きない。

  • 石恵の巨乳表現に関するインタビューとGANTZ作者の乳首残像に関する議論はなかなか秀逸だった。あとはくぱぁとらめぇのオノマトペ誕生をめぐる論説だけは読んでおこう。

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