ここは、おしまいの地

著者 :
  • 太田出版
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本棚登録 : 777
感想 : 93
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778316129

感想・レビュー・書評

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  • 「おとちん」のこだまさんの自伝的エッセイ。
    壮絶です。壮絶な人生過ぎて笑ってしまう。
    これだけ、運がなくて普通に生きられない人も珍しいのではないか。
    世界運がない人ランキングがあれば間違いなく上位入選だろう。下手するとヒトケタの順位で。

    一方で、生きているだけで儲けもの、という考え方もある。そんなポジティブさがこのエッセイ集を支配している。
    悲壮感もなく淡々と綴られた壮絶な人生からは、不思議に温かみすら感じる。

    こだまさんは、最強のユーモアと知性を持ち合わせた人だと思う。

    「言えない」が好き。力強くて。

  •  ちょっと最近、新しい仕事に疲れて、落ち込んでいて……こういう時って、自分よりもっともっとドン底を生きた人の経験談が読みたくなる。性悪だな…と思うけれど。
     読み進めてみると、確かに、こだまさんは、かなり運の悪い人。生まれ育った所は、ヤンキーと百姓が九割を占め、芸術や文化、コンビニも学習塾も駅も無い、最果ての集落。性格は内向的で地元を出るまで、友達と呼べる人は一人もおらず、容姿にもコンプレックスがあり、特病があるため、半年から数年で療養と転職を繰り返さねばならない。
     でも、読む前にイメージしていたのと少し違っていた。自分の不幸をただ笑い話にしているのでも、朝ドラや24時間テレビのように「ハンディを乗り越え成功する姿」を上から描くのでもなく、自分の環境や自分自身、自分を取囲む人々を静かに受け入れ、愛情を注ぎ、その上で笑い話にしているのだ。
     「無口で友達は一人もいなかった」と書いているが、本当は人間好きらしく、子供の頃からの夢を貫いて小学校教員になられた。結局、挫折して退職されたが、普通なら教員向きに思われないタイプでも自分の思いを貫かれたところに芯の強さを感じる。
     何回かの入院や転職を余儀なくされるうちに、色々な人との出会いや連帯感が生まれたり、失望の中で一筋の光に励まされたりされている。
     中でも面白い話が「春の便り」。山奥に転職することになり、住むのに見つかった家が「とてつもなく臭い家」だったらしい。余りにも便槽が臭くて料理することを旦那さんに禁止されたほどらしいが、旦那さんはその家に長くいたくないために、今まで精神を患って仕事を休んだり遅刻早退を繰り返していたのが、逆に朝早くから仕事に行き、夜遅くまで仕事をしたり飲み会に行ったりするようになったという話。逆境が人の生活を好転させることもある。「ピンチがチャンス」とか大袈裟なことではないが、こだまさんはどんな状況でも頑固に耐えてきたあとで、一筋の希望を掴んている。
     家族に対する愛情が感じられる文章も好きだ。こだまさんのお母さんは昔は感情に任せて子供たちを罵ったり、張り倒したりの「雷おばさん」だったらしいが、こだまさんが大手術をした時、夜行バスで見舞いに来てくれ、「何か必要なものは無い?」と聞くので「無印のパンツ」を頼んだところ、「無印のパンツ」を「無地のグンゼ」と間違えて、何とも色気の無い真っ白な大きなパンツを買ってきたらしい。病室のみんなに笑われたが、無印良品なんて目にすることもない集落に住む母親には分からなかったのだと気づいて涙が溢れたという話。
     こたまさんは、仕事を辞めてすることがなくなり、ブログを始めたところ、インターネットを通じて沢山のお友達が出来たと書かれているが、私はこの本を通じてこだまさんとお友達になれた気がした。

  • 結構不幸な人生を歩んでいるのに何故か悲壮感が漂わない不思議な感じ、積極的にガシガシ前に進んでるって感じではないけれど、後ろ向きでもなく少しずつゆっくり前に進んでる感じがとても印象的だった

  • おしまいの地に住む主婦、こだまさんのエッセイ。
    「夫のちんぽが入らない」の作者であることから気になってパラパラめくり別に読まなくてもいいかな〜と一度は思ったのですが、なんとなく、最後まで読むべきだという気がしました(読むべき本を読むには得てしてそういう直感を大切にしなければならない)。

    おもしろかった。辺鄙な集落で育つ、暗くて内気な一人のちいさい女の子がいた。
    生まれながらの不遇というか、持って生まれた運の悪さというか、災難を悲壮感でラッピングしたエピソードばかりが綴られていく。けれどその幸薄い感じが飄々とした文体とあわさって、病みつきになる独特な読み心地に仕上がっているのだ。
    他人の目ばかり気にしてしまう。劣等感のかたまり。小心者なのに大それたことをしてしまう。我慢が板についてしまう。そもそも自分のことが分からない。
    ごだまさんの性格(あるいは性質、習性)には共感できる部分が多すぎた。

    最終的に得た知見、「人はどのようにも生きられる」は深いなぁ。
    一見分かりやすいような言葉だが、そこには死に損なったか、極限に一度でも達したかした者でないとみえない悟りの景色が広がっている。

  • なかなかにブラックでハードなことが書かれているのに、読む人の気持ちを暗くさせない筆致がすごいなぁ。

    これはもう天が与えし才能なんだろうな。

  • スーパーの鮮魚コーナーを物色していた父が、一匹八十円と書かれた蟹を見て「虫より安いじゃねえか」と呟いた。
    『夫のちんぽが入らない』から1年。“ちょっと変わった"人生のかけらを集めた自伝的エッセイがついに書籍化!(Amazon紹介より)

    影のある人の自伝はなぜこんなにも濃密なのだろう。謎のエネルギーを感じる本でした。過去の失敗やネガティブなこともこうしてエピソードとして吐き出せるのは、それだけ人生経験を積んで、過去と向き合う勇気があるからなんだろうな。だからなのか、ネガティブで暗い中にもちょっとした余裕や明るさが感じられました。どんな生き方でも、将来笑えればそれでよい人生だと思える一冊です。

  • こだまさんは クラスの卒業文集で
    「早死にしそうな人」ランキングの
    一位を取ったそうですので
    イメージを覆し
    ぜひ 長生きしていただき
    こんな笑ってはいけない笑えるエッセイを
    沢山書いていただきたいです

  • こだまさんの文章を読んだあとは 決まってこだまさんをギュッと抱きしめたくなる。
    おしまいの地での思い出の記述は、自分の幼い頃の感覚(アザとか赤面症とか対人恐怖とか親の暴力とか)が蘇ってくるよう。どこか似ている。似ているので、笑いながら泣いてしまう。小さかった自分がここにいたら、きっと何も言わず抱きしめているだろう。
    『川本、またおまえか』が特に残る。大人になってからの川本の最後の言葉に、胸がいっぱいになった。

  • 集落で生まれ育ち、左目の横にある痣と耳の後ろの大きなほくろを気にした少女のころの記憶。
    首にボルトを入れる手術をしたり、ご飯を食べることすらできないほどの「くせえ家」で暮らしながら文章を書いている現在。
    学生時代や地方情報誌の仕事をしていたことの思い出。

    その時々のこだまさんが過ごした時間について書かれたエッセイ。

    ---------------------------------------

    掘り起こされる記憶によかった出来事はあんまりない。けれど、過去と現在が繋がってることを実感して、胸が熱くなる部分もあった。悲しい出来事で笑える箇所もあった。どの出来事も魅力的にすら思えた。

    田舎のどん詰まりのようなおしまいの地に暮らしていたとしても、「くせえ家」に住んでいてスーパーまで20kmくらい離れていたとしても、インターネットがあれば全然おしまいじゃないんだな。そう思った。
    ポジティブなエピソードなんてほぼほぼなかったのに、読み終わった後はなぜだかすごくポジティブな気分だ。

  • 今年度で終了が決定した講談社エッセイ賞を受賞した作品。つまり同賞の最後の受賞作だ。
    『夫のちんぽが入らない』に続く第2弾で、幼少期から現在までの出来事を綴った自伝的エッセイ集になっている。

    前作は、題材とタイトルのインパクトによりかかっている面が、なくはなかった。題材が比較的地味な本書によってこそ、著者の素の才能が評価されるだろう。

    そして、この人の文章と言葉のセンスは、やはりすごい。本書所収のエッセイと同じ内容を凡庸な書き手が書いたら、面白さは半減以下だろう。

    版元の特設サイトで本書の一部が試し読みできるので、冒頭に収められた「父、はじめてのおつかい」だけでも読んでみてほしい。
    この面白さ、物悲しさ、読後に残る不思議に心地よい寂寥感……。これこそ「こだま」だ。

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著者プロフィール

主婦。ブログ『塩で揉む』が人気。同人誌即売会「文学フリマ」に参加し、『なし水』に寄稿した短編を加筆修正した私小説『夫のちんぽが入らない』で2017年にデビュー。翌年には2作目となる著書『ここは、おしまいの地』を上梓した。現在、『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』で連載中。

「2020年 『夫のちんぽが入らない(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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