うみべのまち 佐々木マキのマンガ1967-81

著者 :
  • 太田出版
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感想 : 36
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778321437

感想・レビュー・書評

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  • 再読。佐々木マキの漫画を読んでいると、気づけば夢にまつわる俳句になりきれない俳句を詠んでいる。たとえば、《ひとつがいの夢は縄跳びのごとし》、《ふりむけば小僧ぞろぞろ蹤きくる夢》、《夢のまぶたがうすい 氷ください》、《すれ違う夢、奇術師、映写機》とか。言語ならぬ幻語を話す人々は五十音図から解き放たれて月の裏側で息をしているよう。そこではおそらく何をしても間違っていないので、怖ろしいものは陽気なものの中にしか見えない。目隠しをして歩き出したら、爪先から流星がこぼれてしまうよ。

    大のお気に入りは『ピクルス街異聞』。

  • 結構、本にしては高い買い物だったはずなのに/結構、分厚い本なのに/収録されている「ピクルス街異聞」の魅力に取り憑かれ、一コマずつすべてのコマを言語化してみる試みをしたのに(それでノートは真っ黒。。。)
    自分の頭の中から存在がすっかり外れてしまうな本。
    部屋で偶然見つけると「うわ、懐かしい!」と何度も唸ってしまう本。いつでも新鮮で、懐かしい雰囲気を醸し出し続けている存在。 

  • 抽象は通常、思考することを許さない。例えば絵画はキャンパスの上にあるものが全てであって、描かれた対象の方に真実があるのではない。描かれてそこにある実体の方に真実がある。それが何を意味しているかを考えるのではなく、目の前にあるものを感じることが大切だ。しかし時に、思考しないことを許さない抽象というものもあることを思い知らされる。佐々木マキはそんな抽象を描く。

    ここには時代のモチーフがあふれている。60年代、70年代のモチーフが。例えばそれは瀬戸の花嫁を誰もが知っていて、更にはその替え歌(~雲呑、~天丼)すら誰もが口遊むことができていた時代の。天地真理や小柳ルミ子程ではないせよ、誰もが耳にしたことはあり、抽象化されても何のことかは一応想像が付くくらいには知識として流布していたもののモチーフが。それを読み解け、と抽象は迫ってくる。そしてその繋がりと配置から言いたいことを悟れ、と。

    記された文字、記号、外国語、そして外国語もどきのもの。それは抽象として見過ごしてしまうこともできるだろうし、今の自分はむしろそれを読み解きたくはないけれど、かつて隔週刊の情報誌の頁のはみだしすら一文字も逃さぬように読んでいた自分であれば、一つ一つの意味を読み解こうとしたであろうし、過去にそんな風に佐々木マキの作品を読んだといううっすらとした記憶もある。

    先行する60年代の人々を追いかけ、言葉の形だけを真似て懸命に70年代を走ってきた自分の無理解を改めて思い知らされる強烈なブローを受けたような衝撃が走る。そして、その時の自分の若さを思い、若さを食い物にする思想のことを思う。

    『He says he's red but I know he's dead』

    読んでしまう。かつてレフト気味にショートストップを守っていたものとしては、やっぱり読み飛ばすことができない。そしてその言葉を読み換えてもしまう。"He says you're red but I know you're dead" その通り。今は肩を壊してショートも守れない。外野席で野次を吐くばかり。Yeah, yeah, I know I've just read with lead head。

    ノスタルジアと過去の誹謗。楽しいことも在った筈の過去を一気に灰色の記憶に塗り変える力。佐々木マキ、すごい。

  • 佐々木マキ: アナーキーなナンセンス詩人、を読んで、初期のナンセンスなマンガが読みたくなって、お借りする。ほんとに、シュールで、何かを読み込もうと思えばどこまでも読み込めそうだし、意味なんかないしそのまま受け取ればいいと思えば、そのまま受け取れる。「け」と吠えるオオカミ。うみべのまちわたしたちはなかよしだった、と叫ぶ指揮者のような男。イメージの奔流をたのしむ。その中では、スキャット大佐の記録が、冒険譚として、筋が通って異彩をはなっていた。

  • シュールで詩的、実験的。
    空気もペンタッチも、ドライで洒落てて不条理で奇妙。
    突き放したような余裕とユーモアがあって
    遠い昔の異国のお伽話のよう。

    93年刊の『ピクルス街異聞』に収録の作品も全て載っており、
    かなり分厚くて読み応え有り。
    『ピクルス街』のほうは昔購入して今も持っているけど、
    『ディン・ドン・サーカス』『バッド・ムーン』など
    今回再読してみてもやはり新鮮。

    見ている立場と見られている立場…主体と客体の逆転。
    鐘の音や歌声など、音を物質化するイメージ。
    そういった俯瞰的視点や洒落たディティールに心奪われます。

    また、頻出キャラであるヤギの旅人、
    背景に中世の西洋の魔術的な小道具が散りばめられていることから
    自分は勝手に悪魔の象徴かと思ってたんだけど、
    このヤギが主人公の絵本『ムッシュ・ムニエルをごしょうかいします』が
    出てることに今頃気付きました…。
    どうやらムッシュ・ムニエルは悪魔ではなく魔術師らしい。
    次はこちらを読んでみたいところ。

  • 札幌の元リーブルなにわで買った、というとても幸せな出会いをした本。開くことは滅多にないが、読まなくても何が描かれてるか、強烈に心に残っている。

  • 佐々木マキさんの絵本で育ったのだけど、子供向け絵本と違ってブラックな作風!絵本に出てくるキャラクターも(おおかみとかぶたとかムッシュムニエルみたいなのとか)いるけど。

  • ・佐々木マキのガロ時代に興味を持って読んでみた。わかっていたことだが難解すぎる。「天国で見る夢」は私の頭には早すぎたらしい

    ・絵本のイメージとはまるで違う。画風も様々。見覚えのあるおおかみは途中出てきた。これがガロかあ。そりゃ経営困難になるだろうなあ

    ・豚の方は当時は違う画風

    ・消火栓男は唯一理解できたかも?というよりストーリー性が成り立っていた。羊男思い出す

    ・消火栓音恋奥の作品は凡人にも理解できる作品になっていっている

    ・と思ったらまたシュールゾーンに入った。わからない

    ・いつか私がこの作品群を理解する脳と時間の余裕を獲得できることを願って。

  • 佐々木マキさんの漫画集。

    理解力がなくてあとがきを読まないと意図がよく分からなかったです。。
    一コマずつの絵に見入ってしまうところがあったり、まちのうま、旅の天使が面白かったです。
    やっぱりセリフとストーリーを求めてしまう。

  • どちらかというと、かわいらしかったりちょっとおとぼけなキャラクターを絵本で見かけることが多い作者。でも、そんな中にも何かちょっとだけ異質な感じがしている作品(絵本)を目にすることが多い。でも本来の漫画の世界は、イメージと言葉と、二次元の絵が時空を超えてゆく感覚がある。この本は傑作集といってもよいです。

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著者プロフィール

1946年兵庫県神戸市生まれ。マンガ家、絵本作家、イラストレーター。1966年「ガロ」「朝日ジャーナル」を中心に自由で実験的なマンガを立て続けに発表。1973年、福音館書店より『やっぱりおおかみ』を刊行。「こどものとも」などで独創的な絵本を多数発表する。マンガ作品集に『佐々木マキ作品集』『ピクルス街異聞』『佐々木マキのナンセンサス世界』『うみべのまち』。絵本に『やっぱりおおかみ』『ねむいねむいねずみ』『ぶたのたね』『ムッシュ・ムニエルをごしょうかいします』『おばけのばむけ』ほか多数。エッセイ集に『ノー・シューズ』がある。京都市在住。

「2016年 『村上春樹とイラストレーター 佐々木マキ、大橋歩、和田誠、安西水丸』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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