志乃ちゃんは自分の名前が言えない

著者 :
  • 太田出版
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感想 : 109
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778321802

感想・レビュー・書評

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  • 吃音の娘と、音楽好きだけどオンチの娘と、仲間が欲しいけどウザいと言われる少年。痛いほど切ない高校生の世界。

    映画を観た​。ラストシーンに不満があった。「あそこまでやった後に、ああなるのは納得がいかない」と映画仲間に言ったら、「そんな風に直ぐにコロコロ変わるのが不自然だよ」と数人に言われた。その反論は予想しなかった分、ちょっと反省させられた。映画仲間は若い。だから、「現代」若者の人付き合いが分かっている。私は、私が高校生だった時の未熟な思考しか出来ない時の自分から、かなり離れている。という事なのかもしれない。

    さて、ずっと気にかかっていた原作を読んだ。ほぼほぼ映画と同じであるが、映画の方は流石に2時間あるのと、脚本がしっかり描けていることもあって、いくつかの不自然な部分を見事に補っていたと思う。そして、ラストは大きく違っていた。でも、原作のこういうラストもいい。これも、やはり自然だと思う。
    2019年3月読了

  • 『どもり』は無くても、私はツマラナイ奴でした。
    ノリが悪く、笑いのセンスがなく、天然でもない。
    ただ愛想良く、空気を壊さないように笑うふりをしているその他大勢。
    魅力のない人間であることがコンプレックスでした。
    十代のあの頃の気持ちが蘇ってきて、胸がキリキリします。
    欠点をそのまま受け入れてくれる友達ができた志乃ちゃんが羨ましくなりました。
    心地良いだけの感動作ではないです。痛みがあります。
    でも救いのないリアルでもない。
    絶妙なバランス。傑作です。

  •  タイトルが示すとおり、吃音症の少女を主人公にした青春マンガである。
     吃音症には、同じ音が連続してしまう「連発型」と、最初の音がなかなか出てこない「難発型」がある。本作のヒロイン・志乃は「難発型」だ。

     「あとがき」によれば、作者の押見自身が中学生のころから難発型の吃音症であり、本作のストーリーは自らの体験を下敷きに作り上げたものなのだという。

     それゆえ、ディテールのリアリティと、読者に訴えかける迫力がすごい。
     たとえば第1話は、高校に入学した志乃がクラスの自己紹介で名前が言えず、クラスメートたちに笑われるいきさつが描かれている。それだけの話なのに、志乃の焦燥とくやしさ、悲しみ、孤独感が、読む者にビリビリ伝わってくる。

     くわえて、本作が素晴らしいのは、この手のマンガにありがちな「クサさ」や、過度の啓蒙臭を微塵も感じさせない点だ。
     青春マンガとしてフツーに面白いし、淡いユーモアもちりばめられ、ちゃんと「押見修造の作品」になっている。

    《この漫画では、本編の中では「吃音」とか「どもり」という言葉を使いませんでした。それは、ただの「吃音漫画」にしたくなかったからです。
     とても個人的でありながら、誰にでも当てはまる物語になればいいな、と思って描きました。》

     「あとがき」にそうあるように、これは「吃音の少女をヒロインにした一級の青春マンガ」として、普遍的な魅力をもつ作品である。
     代表作『惡の華』のイメージが強いため、もっとドギツい内容を予想していたが、意外にも、センスのよい水彩画のような味わいの好作であった。

     なお、本作の「あとがき」は、一編の文章として独立した価値をもつものである。今後、マンガ家・押見修造を論ずる場合に、避けて通れない一文となるだろう。
     その印象的な一節を、以下に引く。

    《もうひとつは、言いたかったことや、想いが、心のなかに封じ込められていったお陰で、漫画という形にしてそれを爆発させられたことです。
     つまり、吃音じゃなかったら、僕は漫画家にはなれなかったかもしれないということです。
     勿論、吃音だったから漫画家になれた、というわけではありません。しかし、吃音という特徴と、僕の人格は、もはや切り離せないものになっているということです。》

  •  ここ10年ぐらい、昔に比べて漫画を殆ど買わなくなりました。自分が年とったせいか、漫画なんてもう何見ても何周も廻ってるようにしか思えなくて。あぁ~あれはこれ系だな、これはあの流れだな、とか。
     それも楽しいんだけども、最近はただのイラスト集のような漫画ばっかりな気がする。昔に比べたら商業ベースに乗っかってる漫画の種類が増え、表現の幅が広がったってことなんですが(音楽で言うとノイズやテクノのような漫画)、どうも自分にしっくりくる作品が少ない。

     そんなこんなで最近は漫画好きな後輩の情報を頼るのみ、押見修造は『惡の華』のアニメ版を薦められて知りました。漫画版は未読。
     後輩の漫画漁りにつき合って古本屋でひまつぶし、この『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を見つけて読み始めたらめちゃくちゃおもしろい。立ち読みで全部読んじゃったけど購入。押見修造を見くびってた。
     
     話自体は目新しくないんだけど、志乃ちゃんのおっおっおがぐうかわすぎる・・・どうしても笑ってしまうんだなあ。おっおっおを疾病名として出さなかったところがとてもよい。『英国王のスピーチ』の時に書いたけども、実際にそういう友人と話すとこっちが恐縮してしまってものすごく気を遣うし、冷や汗もだいぶかく。萌えと笑いとタブーと差別と障がいは全部つながっていて、押見修造の他の作品に比べるとこの作品は一見マトモに見えるが水面下では変態なような気がします。
     あと、演出が良いんじゃないかなあ・・・。小説だと文字の視覚的印象よりもリズムだと思うけども、漫画だとフォントの種類やサイズ、書き文字で印象が全く変わってくるし、自分にしっくりくるかどうかはその点が大きいんだと思います。
     青春物語としては誰しもあるコンプレックスの話なので感情移入しやすい、作者あとがきはまるでピートタウンゼントの鼻の話のよう。

     『惡の華』では萩原朔太郎や金子光晴、ロートレアモン等文学作品がモチーフだったけど、今回は同じ部分が音楽に置き換わっている。けっこうベタだけど加代ちゃんの趣味がいい。ボブディラン、フレイミングリップス、ベルセバ、坂本慎太郎、ジムオルーク、小島麻由美、ムーンライダーズ、同級生はレッチリ・・・(他の細かいとこわかんなかった、ごめん)。
     キーワードになってる(?)音楽は山本精一。大友良英が昨年NHKのラジオでかけていて、『まさおの夢』を聴いたばかりだから出会えてよかった。ボアダムズ数枚と羅針盤の『らご』とya-to-i、ソロ『Crown of Fuzzy Groove』ぐらいしか持ってないんでこれを機に買いたいと思います。
     元ネタのひとつはポスターとして貼ってるゴーストワールド、これは『惡の華』共々共通してるとこがありますね。あとグンマの描写。’81年生まれの押見修造のグンマと、’82年生まれの田我流の山梨も共通してる。

  • 「きみの体は何者か」の巻末で紹介されていたので読んでみた。

    きみの、、、を読んでいたので、
    吃音は必ずしも緊張から来るものではないとか
    発音しづらい言葉は違う言葉に変換して言う事がある
    などを知っていたので主人公の気持ちを想像するのに役立った。

    映画化されてるのか。
    観てみたい。

  • 「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」読了。
    本当に素敵な漫画でした。特別に心理描写が上手いとか表情の書き方が上手いとか、そういう上手さは特に感じなかったんだけどw、でもとても感動した。この漫画読んでる最中ずっと号泣してた気がする。はは。
    言葉や絵にするのがとても難しい部分をとても上手い具合に表現できてたと思う。その何とも言えない感情や空気感がめっちゃ良かった。

    簡単に言ってしまえば自分のコンプレックスに対する向き合い方とかそれに対する葛藤みたいなものが表現されているんだけど、でもこの漫画を読んでて深く感動したところは僕としてはもう少し違う部分にある気がします。
    自分のコンプレックスは人にはなかなか分かってもらえなくて、そこで葛藤したり劣等感を抱いたりするけれど、でも、その葛藤や劣等感は自分でも上手く説明できなくて、或いは、自分でも上手く対処できなくて余計に自分を追い詰めたりする。
    そういう何とも言えない気持ちを、何とも言えない強さで表現して読者に投げかけてくる感じが心に刺さったんだと思う。

    小学生、中学生、高校生、大学生、自分のコンプレックスで悩んでいる人、コンプレックスが全くない人、とにかく誰でもいいんだけどw、いろんな人に読んで欲しいなと思う漫画です。
    もちろん、自分のコンプレックスに悩む学生には絶対おすすめの漫画です。少しだけ気持ちが楽になったり、少しだけ自分を許せるようになったり、そんな優しい気持ちにしてくれる漫画だと思います。
    本当に素敵な漫画だと思います。

  • 教室で突っ立って、何も言えない。

    なつかしい、と言えばいいのか、その感覚。

    それに対する、励ましと言う無理解と重圧。

    はじめっから泣きそになりました。

  • "自分の名前が言えない"大島志乃。自己紹介など話すことが上手く出来ない大島志乃は、入学早々にどもり癖をネタにつまはじきにあう。歌が下手な加代とフォークデュオを組み、灰色の学園生活に光が差してくると思えたが。
    作者の押見修造さんが実際に吃音に苦しんだだけに、大島志乃の自分の言いたいことを言葉に出来ない苦しみやもどかしさやせっかく出来た友達が他の友達と仲良くしているのを見て寂しく思った孤独感がリアルで、吃音の自分やそんな自分をバカにしている自分など認めたくない自分も含めたありのままの自分自身に向き合うことで新たな一歩を踏み出すラストは、勇気や力をくれる力強いものでした。

  • 1巻完結で読みやすそうだということで読んでみた本ですがしのちゃんの、あがり症という症状はなんだか昔の自分が見ているみたいで、共感が持てました。押見さんの作品はどこか愛情があり、暖かい作品が多いので好きです。

  • "普通になれなくて ごめんなさい"
    ヒリヒリ青春漫画のマエストロが贈る、もどかしくて、でもそれだけじゃない、疾走焦燥ガールズ・ストーリー。"自分の名前が言えない"大島志乃。そんな彼女にも、高校に入って初めての友達が出来た。ぎこちなさ100%コミュニケーションが始まるーー。いつも後から遅れて浮かぶ、ぴったりな言葉。さて、青春は不器用なヤツにも光り輝く……のか?(Amazon紹介より)

    大人になった今だから思う。吃音だけでなく、いろいろな軽度障害に悩まされていた同級生、頑張れって。社会に出ると、他人とちょっと違う人が思った以上に沢山いることに気づきました。小さな組織の中では変わり者扱いかもしれないけど、社会に出たらさほど珍しいものではない、受け入れられるものだから、頑張れって思います。

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著者プロフィール

★漫画家。2002年、講談社ちばてつや賞ヤング部門の優秀新人賞を受賞。翌年、別冊ヤングマガジン掲載の『スーパーフライ』にてデビュー。同年より同誌に『アバンギャルド夢子』を連載した後、ヤンマガ本誌にて『デビルエクスタシー』などを連載。2008年より漫画アクションに連載した『漂流ネットカフェ』は、テレビドラマ化された。翌2009年より別冊少年マガジンにて『惡の華』を開始し、大好評連載中。

「2011年 『NEMESIS No.5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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