原発はいらない (幻冬舎ルネッサンス新書 こ-3-①)

著者 :
  • 幻冬舎ルネッサンス
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779060489

作品紹介・あらすじ

福島原発は今後どうなるのか。著者は40年間一貫して原発の廃絶を主張してきた。その経験をもとに、今回の原発事故が最悪の場合、日本全土を汚染してしまうことを客観的に立証する。さらに、原発に替わる新エネルギーについても言及する。人が人として生きていくために、本当に必要なものは何か?原発問題に端を発し、人間の存在意義にまで言及した「小出哲学」の集大成。

感想・レビュー・書評

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  • 福島原発は今後どうなるのか。日本はこれからどうなるのか。40年間一貫して原発の廃絶を主張してきた筆者がその経験をもとに数々の立証するものです。助教の立場に甘んじながら筆者の不屈の精神に感服します。

    今やメディアでその名前を見ない日はないといえる小出先生ですが、小出先生も仙台で原子力を専門にし始めていた当初はまだ、原子力に対しても未来を抱いていた人間の一人だと述懐していらっしゃったのがとても印象に残っております。それが、『そんなに原発が安全だっていうなら、なぜ仙台に建てない!?』という声を原子力発電所の反対運動に際して聞いたことがきっかけとして、原子力産業について、疑問を持ちはじめた小出先生は京都大学にてずっと助教(かつては助手といった)に甘んじながら、原発反対を貫いてきたのだそうです。

    なぜ、小出先生が『利』に転ばずにずっと原発に反対してきたかは本書の詳しい解説に譲るとして、3.11の大地震と福島の原発事故。それが起こったときに小出先生は『敗北』を悟ったのだそうです。なぜあれだけ脱原発を訴えてきた小出先生が『敗北』を悟らなければならかかったのか?僕は読みながらなんとも言いようもないものを感じて仕方がありませんでした。そして、この本の後半部では、放射能で汚染された食べ物についてどうすればいいのか?内部被曝は?などのさまざまな疑問に、小出先生が誠心誠意、答えていらっしゃっていて、これはYoutubeなどの動画サイトでも確認できますがぜひ、ここだけでも読んでいただければ、かねてから思っている疑問も氷解されるかと思います。

    たぶん、原発事故の被害の全貌が明らかになってくるのは、これから何年もたった後でしょう。そのときにもまた、小出先生が何をされているのか?その動向に着目したいと考えます。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=39376

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB06323670

  • 40年間一貫して原発の廃絶を主張してきたという著者。福島原発事故に関するラジオで話を聞いたのがきっかけで、手にとってみた。
    「想定外」として事故の原因を隠し、事故の状況も正しく公開せず、それでも他の原発を稼働させ続けるのは、やはり冷静に考えると、あり得ない主張。

    また、プルサーマルや核燃料サイクル計画につぎ込まれたお金と、延期ばかりで一向に完成しない状況、これを継続できることもあり得ない。

    「子供たちを被曝から守ること」には、全面的に賛成。細胞の分裂が活発なため、子供は大人の4倍の放射能感受性を持っているとのこと。

    原発推進派「破局的な事故は起きない。そんなことを想定すること自体がおかしい。破局的事故は想定不適当。」

    「独占企業である電力会社は、原発を作れば作るほど、稼働すればするほど儲かる仕組みになっている。」とは?

  • 原発はいらない (幻冬舎ルネッサンス新書 こ-3-?)

  • 本当に原発は、不要な存在に思えてきた。福島の人だけでなく、世界に対する責任を感じる。

  • やっぱり、即ゼロか? 「原発はいらない」小出裕章

    フクシマ原発事故から3年。政府産業界は再稼働の流れである。
    新聞、TV、ネットの情報から考えて原発即刻ゼロがベストであるが、即刻ゼロは日本の経済力国力を弱体化させ国の国防安全保障も脅かして国が滅ぶ可能性もあるので理想論である。それが私の考えであったが、マスコミ情報以外にも少しは勉強しようと本著と「原発ホワイトアウト・若杉冽」を読んで「即刻ゼロ」へと考えが変わりつつある。

    著者は原子力原発に夢を抱いて研究者になったがその危険性に気づき40年も前から原発廃絶を訴えてきた。しかし、フクシマ原発事故が起こってしまい自責と慚愧の念でこの本を書いたという。

    著者の主張は

    「原発を即ゼロにしても火力発電をフル稼働すれば、原発分は十分にまかなえる」
    つまり、経済力も国力も弱体化しない。

    「原発は化石燃料(石炭、石油)と比べて二酸化炭素の放出が少ないので地球温暖化への悪影響(地球温暖化は二酸化炭素放出だけが原因ではないし、温暖化が本当に悪いのかという論議もある)が少ないというのは真っ赤な嘘で、ウラン採掘から製錬、濃縮、加工、運転の過程で膨大な二酸化炭素を放出する。二酸化炭素を放出しないのは発電時だけである。化石燃料に比べても原発はエコなエネルギーではない。エコどころか、放射性物質という究極の毒物製造装置である。」

    「建設から濃縮、加工、地区交付金、使用済み燃料の再処理などを含めた原発の実際のコストは火力・水力にくらべて高い。」

    「風力、太陽光などの自然再生エネルギーにこだわりすぎると、原発は生き延びてしまう。
    新エネルギーは今すぐ大きな電源にはなりそうもない。研究開発に長期的な時間がかかる。急激にやると環境に大きな悪影響を及ぼす可能性もある。自然再生エネルギーが実用化できるまでの間は、化石燃料を使った火力発電でやるのが一番である。自然再生エネルギーでなければダメだとこだわりすぎると、それが実現するまでは原発を認めるということになりかねない。原発の即刻廃絶のためには、火力発電をフル稼働させることに尽きる。」

    「原発がゼロになってとしても今まで数十年の原発稼働で蓄積した核廃棄物は膨大であり、長期間にわたる原発停止作業と廃棄物処理に対応できる原発技術者の教育養成は国策として必要である。」

    原発即刻ゼロの場合は、輸入する石油料金の増大、電気料金の高騰(家庭用で現在の20数円/kwから30〜40円/kwになるいう試算もあるが本当か?)による企業の海外流出国内空洞化などによる国家的経済損失が年間数兆円という試算もあり、原発の停止廃棄物処理の膨大な費用をどこから捻出するのかという話もある。

    出来る限り早い時期に脱原発から即刻原発ゼロ!と考えが変わりつつあるが、もう少し再稼働推進の意見情報もチェックして考えることにする。

    家族、友人などの私生活の範囲では感性、感情で判断しても致命的な破局に繫がることは防ぎようがあるが、軍事エネルギー国際政治などの領域は感性感情で判断するのは危険すぎる!きれいごとは言わず善悪でもなく、現実を直視するのみ!

  • 貿易収支が大赤字だと聞いて、化石燃料の輸入超過が大きな要因だと聞きました。その辺はどうなんだろうと読み進めましたが、触れずじまい。でも、そんなことを言っている場合じゃない、という主張でしたね。あの3/11の悪夢がまざまざと思い出させられる内容。先月の都知事選挙の結果からしても、のど元を過ぎた恐怖を忘れつつある僕たち。粘り強い戦いが求められているようです。それにしても原子力を専門とする化学者が減っているのは恐ろしい。

  • 2011年7月刊ということで、情報もほとんど出ていなかった頃だな。原発事故が起きるまで、こんな先生がいるなんて思いもしなかったものだ。

  • 題名の通り、事故があろうとなかろうと、電力が足りようと足りなかろうと、原発はすぐさま全廃しなければならないと、強く訴えた本です。

    折り込みには、「原発問題に端を発し、人間の存在意義まで言及した『小出哲学』の集大成」などと書かれていたが、以前の『原発のウソ』に比べて、主観が少し盛り込まれてきたな、と感じました。ただ、「集大成」とまではいかない。
    しっかり、原発の広範囲かつ専門的な研究と、市民からの質問にも答えています。

    著者の小出さんは、著書を見る限り、産業革命以後の急速な人類の繁栄発展に対していささか批判的でもあり、また人類と他の生物や地球との関係というものに対しても一定の姿勢を持っておられるようです。
    また、37年間の「助手」ぐらしについても、特に何とも思ってはいなかったようです。

    なぜ、原発をすべて撤廃しなければならないのか。
    原発推進派の理論についても反駁しています。

    安全な原発などなく、すべての原発は危険である、ということ。
    原発はクリーンなエネルギーなどではなく、建設においてもコストがかかるし、実は二酸化炭素も多く放出している。(同時に、二酸化炭素は温暖化の原因でもないと言及していますが。)
    一番の問題は、核融合の後にできる「死の灰」放射性廃棄物の処理の問題。
    最悪の物質、ストロンチウム、プルトニウム。
    利権を守るために、事故の内容をコロコロと変え、誤った内容を流し続ける東電と政府。「国民を混乱に陥れないため」というが、本当は、正しい情報を入手して動くことがパニックを避ける方法なのだという。
    現在の大きな問題は、福島原発の大量の放射線汚染水の行方。

    また、多くの国民が心配しているであろう「被曝量」は、100ミリシーベルト以下で「健康被害なし」とされているが、これも嘘で、実は安全な被曝量など存在しないということ。「どこからが安全でどこからが危険」という基準はない。

    また、原発をすべて止めても、電力には何の影響もないということ。稼働していない火力発電が多くあり、むしろ日本の発電所は多いということ。
    私も、「新しいエネルギー」に期待していたのだが、実用化にはまだまだ時間がかかり、風力、太陽光も環境に悪い。下手するとまた原子力必要派が出てくるから、当面は火力で補うべきだという。

    政府が原子力にこだわる理由は、将来的に核兵器を製造しようとする下心があるためでもある。
    また、独占企業や大企業は原発を作るほど儲かる仕組みになっており簡単にその利権を手放せない。
    しかし、それらの理由は論外である。

    少し、すべてにおいて「最悪の事態」をあおる研究者だなとも感じましたが、実際に、「最悪の事態」が起きてしまったので、そこまで考える必要もあると思います。

    小出助教の歴史は、「敗北の歴史」であったという。決定的だったのが福島第一原発であるという。「あなたは悪くないよ」と言いたい。
    しかし、その信念に少なからず心動かされたし、また研究から「原子力などなくても大丈夫」だという結論にも納得はしている。

  • メモ

    P117 図25
    P120 図29
    原発を運転させる理由が見つからない

    P169
    原子力安全委員会、原子力安全•保安員は
    原発推進の機関にすぎない

    P175
    チェルノブイリ原発事故は
    運転員のミスではなく
    原子炉の構造上の欠陥

    原発をやめても
    電力は不足しない!

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著者プロフィール

元京都大学原子炉実験所助教。工学修士。
第2次世界大戦が終わった4年後の1949(昭和24)年8月、東京の下町・台東区上野で生まれる。中学生のとき地質学に興味をもち、高校3年までの6年間、ひたすら山や野原で岩石採集に没頭する。68年、未来のエネルギーを担うと信じた原子力の平和利用を夢見て東北大学工学部原子核工学科に入学。しかし原子力について専門的に学べば学ぶほど、原子力発電に潜む破滅的危険性こそが人間にとっての脅威であることに気づき、70年に考え方を180度転換。それから40年以上にわたり、原発をなくすための研究と運動を続ける。2015年3月に京都大学を定年退職。現在は長野県松本市に暮らす。著書に『隠される原子力・核の真実─原子力の専門家が原発に反対するわけ』(2011年11月/創史社)、『原発のウソ』(2012年12月/扶桑社新書)、『100年後の人々へ』(2014年2月/集英社新書)ほか多数。

「2019年 『フクシマ事故と東京オリンピック【7ヵ国語対応】 The disaster in Fukushima and the 2020 Tokyo Olympics』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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