この国は原発事故から何を学んだのか (幻冬舎ルネッサンス新書 こ-3-2)

著者 :
  • 幻冬舎ルネッサンス
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779060687

作品紹介・あらすじ

福島原発事故から1年半が経ったが、いまだに事故は収束していない。放射性物質の放出は続き、ガレキ処理はままならず、避難者の帰還のめども立っていない。多くの作業員が被曝覚悟で事故処理に当たる中、政府は大飯原発再稼働を強行。40年以上にわたり原子力に反対してきた著者が事故の風化を警告し、改めて原発の危険性を説き、原発ゼロ社会実現への思念を綴った反原発論。

感想・レビュー・書評

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  • 「自分の子どもを育てている時に、『ウソをついてはいけない。間違ったことをしたら謝りなさい』と教えてきました」 ああ、これが原子力問題のすべてだと思いました。
    →これでは、敵対して批判しているだけでは、絶対に何も学べない。。

  • 反原発を主張される著者による、福一事故後1年後の著作です。原発推進における社会的矛盾や構図を的確に指摘されています。本書上梓後10年を経ていますが、そのご主張は色褪せていないように感じました。現在も福一では作業が継続し状況は変わらないのかもしれません。建設の経過はどうにもなりませんが、事故処理だけでも「差別」のない、適正な対応を当事者である東電には取っていただきたいと感じました。私自身は何もできませんが、著者の思いに共感を得ることができました。

  • 主張する内容はもっともなこと。この人が言ってることはおそらく正しいのだろう。

  • 日本が地震列島であることは東日本大震災が起きる前から知られた
    事実である。しかし、その事実に目をつぶり御用学者を動員し、国策
    の名の下、原子力発電所が建設されて来た。

    何度も引き合いに出すが、鎌田慧『原発列島を行く』には国が、電力
    会社が、過疎地の自治体の頬を札束で張って原発を建設して来た
    ことが綴られている。

    『原発のウソ』で安全性・低コストという噓のベールを引きはがし、
    分かりやすく解説した著者は、本書でもまた淡々と怖いことを
    綴っている。

    この期に及んでも原発を生き残らせようとする国と電力会社は
    福島第一原発事故の責任さえうやむやにしようとしている。

    そして「原発を再稼働させなければ停電するかもしれませんよ」と
    いうネガティブ・キャンペーン。事故の反省など全くせずに、自分
    たちの資産を守ることだけにその力は向けられている。

    「冷温停止状態」という妙な表現まで使って、福島第一原発の
    事故収束宣言を出した日本政府だが、原子炉の状態がまるで
    分かっていないのによく宣言出来たものだと思う。

    収束しているというのであれば、当時の首相はじめ閣僚は
    福島第一原発近くに住居を移してみろよ。勿論、一家総出で。
    出来ないはずなんだから。

    過疎地だから犠牲になってもいい。そんな理論は通用しない。
    都会の人間の生活を支える為に、過疎地の人々の生活を
    犠牲にしていいはずがない。

    原発がなくとも必要な電力は賄うことが出来る。そうして私たち
    は生活の利便性を追求することを止めればいい。

    ある地域に住まう人たちの命だけが軽視されていはいけない。
    差別から生まれた生活の快適さなんて、放棄したっていい
    じゃないか。

  • 相変わらずの小出節が小気味よい。住む家や職場を追われて苦労されている方には誠に申し訳ないが、人口密集地域が致命的に汚染されるような大惨事にならないうちに反原発運動が国民的支持を集めるようになって幸運だったと思う。チェルノブイリで原発の危険性に気づき、関連書物を読み漁ったり記事スクラップなどを始めてからはや四半世紀の時が流れた。当時の無関心さからすると隔世の感がある。
    経済的、資源的にもなんら意味がなく、高レベル廃棄物処理のめどが立たない原発は即刻廃炉にすべきである。

  • 差別ということばが読後に残ります。人口の少ない地域に原発を設置し、被曝作業を請け負う労働者がいる。「犠牲を他者に負わせなければ成り立たないものが原子力」というあり方に反対してきた著者のスタンスに共感した本でした。

  • 小出裕章氏の著作からひとつ、と言われればこれだろう。

  • 科学者という面だけでなく、内在する差別問題、原子力関係者の官僚体質についての言及

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著者プロフィール

元京都大学原子炉実験所助教。工学修士。
第2次世界大戦が終わった4年後の1949(昭和24)年8月、東京の下町・台東区上野で生まれる。中学生のとき地質学に興味をもち、高校3年までの6年間、ひたすら山や野原で岩石採集に没頭する。68年、未来のエネルギーを担うと信じた原子力の平和利用を夢見て東北大学工学部原子核工学科に入学。しかし原子力について専門的に学べば学ぶほど、原子力発電に潜む破滅的危険性こそが人間にとっての脅威であることに気づき、70年に考え方を180度転換。それから40年以上にわたり、原発をなくすための研究と運動を続ける。2015年3月に京都大学を定年退職。現在は長野県松本市に暮らす。著書に『隠される原子力・核の真実─原子力の専門家が原発に反対するわけ』(2011年11月/創史社)、『原発のウソ』(2012年12月/扶桑社新書)、『100年後の人々へ』(2014年2月/集英社新書)ほか多数。

「2019年 『フクシマ事故と東京オリンピック【7ヵ国語対応】 The disaster in Fukushima and the 2020 Tokyo Olympics』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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