カフカース: 二つの文明が交差する境界

制作 : 木村 崇 
  • 彩流社
3.40
  • (1)
  • (1)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 15
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (354ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779112157

作品紹介・あらすじ

“文明の十字路”——スラヴ世界と中東世界の狭間にあったコーカサス——グルジアやアルメニアには固有のキリスト教文化が栄え、ダゲスタンはイスラーム原理主義の祖型を育んだ。埋もれた歴史を掘り起こす学際的成果。写真多数。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 私がこの本を手に取ったのはトルストイ伝記の金字塔、藤沼貴著『トルストイ』でこの作品が紹介されていたからでした。

    この作品はそれぞれの分野の専門家による共著になります。この本では文学だけでなく様々な観点からカフカースを見ていくことができます。

    私はトルストイとの関係性からカフカースに関心を持つようになりましたが、入り口は人それぞれだと思います。そんな中多様な視点からカフカースを見ていくこの本の試みは非常に面白いなと思いました。

  • 複数著者による論文集。
    Ⅰ.オスマン帝国の黒海支配とスラヴ世界
    第一章はオスマン帝国に挑むロシアの進出。ピョートル大帝とエカテリーナ二世により18世紀ロシアはは大躍進。スウェーデン方面、バルカンと共にカフカスにも進出を試みる。当初、主な動機はイラン方面からの通商路の確保だった。

    第二章はあるグルジア名家出身者の興隆を追う。
    カフカスのキリスト教地域はオスマン帝国やイランにとって奴隷調達地であった。
    グルジアなどから奴隷としてペルシャへ連れて来られ、そこで軍人として出世する者は多かったらしい。そのような者の記録は国家の歴史に残らないことがほとんどだ。本稿ではペルシャ語とグルジア語双方の史料から追った。

    第三章はチェルケス人の大追放。18世紀後半から軍事侵攻と植民政策を進めたロシアはエスニッククレンジングというべき殺戮をもってカフカスを攻撃。
    1864年にカフカス征服を宣言した。土着のイスラム教徒チェルケス人は大きな犠牲を出しほとんどがカフカスから追放された。多くがトルコに移住したが、移動中も到着後も過酷な事故や病気で落命した。
    トルコ以外の各地にも散らばりディアスポラとなった。バルカン半島に移住した人々もいたが、のちの情勢で再び追放されオスマン帝国領内へ移動する羽目になった。このときバルカンにいたタタール人も同じ目にあった。
    この大追放について明らかになってきたのは1990年代になってからであった。

    ここからⅡ。第四章はアルメニアの建築文化について。トルコによる1915年の虐殺にもふれる。7章までが建築、あとはⅢになり10章までが文学について。

    四章以降はよく読まなかった。
    この地域について詳しい事情がわかって三章までは面白かったが、もう少し総合的で(一般向きで)まとまったものが読みたい。
    総じてカフカス土着の民族はチェチェン始め恵まれず不当に虐げられてきた人々との印象しかない。
    ヨーロッパより古い文明があり、白人の故地とみなされているにもかかわらずなぜか未開の民族のように扱われるのが謎。
    各著者のカフカス愛は感じるけれども。

  • コーカサスに関する論文集だが、内容がてんでバラバラ。建築史の視点からアルメニアを分析するのはいいが、カフカースと謳っているのに、対象がロシアのカフカス進攻、その背景にあるロシア思想の文学的分析、グルジアとイランの関係、アルメニアの建築史と支離滅裂。アゼルバイジャンが出てこない。そもそもいくら科研費で当たった研究とはいえ、最低限の歴史と現代をあげた上でここの論文を論じるべきだと思う。価格も高過ぎる。本としての出版が困難であれば、pdfでウェブ上に公開すればいい。それでも研究業績になるのだから。

全3件中 1 - 3件を表示
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×