魔術 芥川龍之介 幻想ミステリ傑作集

著者 :
制作 : 長山靖生 
  • 彩流社
4.33
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本棚登録 : 46
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779125430

作品紹介・あらすじ

「謎解き」と「解かれざる神秘」という二重の意味で
ミステリにこだわった芥川の
犯罪、探偵、風刺、幻想、神秘、そして心の声が聞こえてくる
ミステリアス傑作集。

芥川龍之介の文章は、身辺の出来事を写生しただけのような
心境小説風の小品から、それどころか
随筆として書かれたものさえ、ほのかに神秘が匂い立っている。

今もよく読まれている芥川は、その意味では
現役の、生きているといってもいいほどの存在なのだが、
その作品にも人生にも死にも、
まだ解かれていない謎があるのである。

現今のアンソロジーにもあまり入らない名作が
現代仮名遣いで甦る!

感想・レビュー・書評

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  • 私が紹介するのは芥川龍之介の「魔術」という作品です。
    主人公は、彼の友人で魔術を使うことができるミスラ君の家へ訪問し、魔術を実際に見せてもらいます。最初は主人公も魔術が本物なのか半信半疑でしたが、テーブルクロスに描かれている花をつまみ上げて本物の花を出したり、火のついたランプがコマのように勢いよく回ったり、そこら辺のマジックとは明らかに異なる魔術に魅了されていきます。
    そんなすごい魔術を「練習すれば誰でも容易に扱える」とミスラ君が言うものですから、主人公は自分も魔術を使えるようになりたいと思うわけです。
    しかし、欲がある人間には魔術を使うことができないという条件がありました。もちろん主人公は魔術を教えてほしいので欲を捨てられると言います。ミスラ君は彼を疑いつつも翌日に教えてくれることになりました。

    ―おばあさん。おばあさん。今夜はお客様がお泊りになるから寝床の用意をしておくれ―

    ここで場面転換します。主人公がミスラ君に魔術を教わってから約1月後、銀座の倶楽部の一室で友人たちと雑談している場面です。魔術というのは誰しも興味があるようで、彼は友人たちに魔術を見せてくれと頼まれます。そこで彼は何でもないような顔で暖炉の中で燃えている石炭を手に持ち、それを全て金貨に変えたのです。友人たちはこれなら億万長者になれると褒めそやしましたが、欲を出したら魔術は使えなくなってしまうので彼はちゃんと金貨を全部石炭に戻そうとするのです。
    これに友人たちは大反対。もったいないと思ってしまったんですね。そこで、一番狡猾な友人が金貨をかけてカルタをしようと持ち掛けます。彼が勝ったら金貨を石炭に戻し、負けたら金貨を全て渡すという条件で。
    彼は抗議しましたが、なんだかんだでカルタをすることになってしまいます。最初は気乗りしていなかった彼ですが、いざやってみると面白いくらいに勝ちが続き調子に乗ってしまいます。
    友人も負けすぎて、最後のカルタで互いの全財産をかけようと言いだします。これを聞いた瞬間、彼は欲が出てしまいました。もし次に運悪く負けてしまったら、自分が出した大量の金貨だけでなくカルタで勝った金もとられてしまうと思うとにっちもさっちもいかなくなってしまい、最後の賭けでこっそり魔術を使ってしまうのです。負ける余地がありません。
    勝ち誇った彼が出したキングのカード。しかし次の瞬間、不思議なことにカードの中のキングが首をもたげ、気味悪い微笑を浮かべてこう言いました。

    ―おばあさん。おばあさん。お客様はお帰りになるようだから寝床の支度はしなくてもいいよ―

    そう、場面が変わってからの出来事は全てミスラ君が彼に見せた幻覚だったのです。彼はミスラ君に試され、結果、欲を出してしまったのです。彼が魔術を教わる資格がないことは明白でした。

    …というお話です。最後に夢を見させられていた事に気づき、自分の欲深さを痛感する所やなかなか欲を捨てられない人間を皮肉っているような所が面白いですね。

  • 芥川三昧!

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    「謎解き」と「解かれざる神秘」という二重の意味でミステリにこだわった芥川の犯罪、探偵、風刺、幻想、神秘、そして心の声が聞こえてくるミステリアス傑作集。

    芥川龍之介の文章は、身辺の出来事を写生しただけのような心境小説風の小品から、それどころか随筆として書かれたものさえ、ほのかに神秘が匂い立っている。

    今もよく読まれている芥川は、その意味では現役の、生きているといってもいいほどの存在なのだが、その作品にも人生にも死にも、まだ解かれていない謎があるのである。

    現今のアンソロジーにもあまり入らない名作が現代仮名遣いで甦る!
    http://www.sairyusha.co.jp/bd/isbn978-4-7791-2543-0.html

  • 「私」はインド人のミスラ君に魔術を見せてもらうため、雨の降る夜に彼の家を訪れる。華麗な魔術を実際に見て、「私」は是非自分にも魔術を教えてくれとミスラ君に頼む。そんな「私」にミスラ君が提示した魔術を教える条件は「欲を捨てること」だった。しかし、ミスラ君が見せた幻の中で「私」は自分の利益のために魔術を使ってしまう。そのため、欲を捨てきれなかった「私」は魔術を教わることができなかった。
    ミスラ君が言った、魔術を使うには欲を持ってはいけないということは、魔術は自分のためではなく周りの人のためのものであるということだと思う。自分ひとりの利益のために利用するのではなく、多くの人を楽しい気持ちにさせるために魔術はあるのだとミスラ君は言いたかったのである。誰でも方法さえ覚えれば形だけの魔術は使える。しかし、本当の意味で魔術を使いこなせるかどうかはその人の心の持ち方によって変わるのではないだろうか。そのことを「私」が理解しているかどうかを問うため、ミスラ君は「私」に幻を見せたのだと私は思う。そして、ミスラ君が使ったこの魔術もまた「私」をたしなめるための優しいものだったのだ。

  • 幻想ミステリ傑作集。だけど、今の時代で思う「ミステリ」とはやや違うかな。でも「幻想」は大いにあります。かなり短い作品ばかりですが、インパクトは抜群。
    お気に入りは「浅草公園」。シナリオとして書かれているからというのもあるだろうけれど、断片的なシーンの中に魅力的なモチーフがいっぱいに詰め込まれていて、とても美しい情景が思い浮かびます。これぞ幻想。
    「疑惑」も好きだなあ。じわじわとした不安感がたまらない作品でした。

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著者プロフィール

小説家(1892-1927)。東京帝国大学文科大学英文学科卒業。創作に励むかたわら、大阪毎日新聞社入社。「鼻」「蜘蛛の糸」など数多くの短編小説の傑作を残した。1927年、服毒自殺。

「2021年 『羅生門・鼻・蜘蛛の糸 芥川龍之介短編集 Rashomon, The Nose, The Spider Thread and Other Stories』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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