- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784779170669
作品紹介・あらすじ
三島のマゾヒズム、谷崎のサディズム。
ノーベル賞候補者としてのライヴァル関係を
はじめとする深い因縁関係にありながらも、
これまであまり関係性を論じられることのなかった
三島由紀夫と谷崎潤一郎。
谷崎作品に重ねられる三島の実生活、
三島作品と谷崎作品に登場する女性の意外な共通性、
福島次郎との同性愛から解く三島像……
サディストの三島由紀夫、
マゾヒストの谷崎潤一郎のイメージを覆す新たな文学論。
S(サディズム)とM(マゾヒズム)の視点から、
文面下に隠された二人の真性を暴き出す!
感想・レビュー・書評
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強度のサディズムと強度のマゾヒズムが古代ローマのコロセウムの決闘のようにぶつかる三島作品と、サディスムの女たちに対応してマゾヒストとしての男たちが描かれる谷崎作品、その両者を生涯と作品から記した一冊。
冒頭から四つの章、そして結びまで失速せずこれでもかと話が出てきて面白かった!
例えば、三島は『金閣寺』(1956年)をピークとして没するまで10年以上のスランプに陥るのだが、その直前の『潮騒』(1954年)からゲイの三島が異性愛しか取り上げていないことが1958年の彼の結婚と絡めて考察されている。結婚に先んじて三島は「『結婚』という観念が徐々に私の脳裏に熟してきたのは、一昨々年ころから」と記しており、また、その結婚はゲイの息子を結婚させることで愛息子を独占しようとした母・倭文枝とのマザコンとも関係していた。その結果、高橋睦郎が記した「最晩年の三島さんは夫人を極端に怖れ、怖れることに疲れ果てていましたが、これは自ら蒔いた種」という妻との確執がうまれ、三島の割腹自決(森田必勝との情死ともいえる)に至ったのではないかとも指摘も興味深い。
尚、三島が結婚したのは日本画家の巨匠・杉山寧の長女・瑤子(日本女子大英文科の学生)である。当時三島は33歳、瑤子は21歳であった。夫婦の関係については、1967年に三島が福島次郎に送った書簡において「先だって一寸した事件があって」それ以来妻が三島宛の書簡を秘書的に開封してもよいことになったと記されている。まさに谷崎の『鍵』同様の場面が三島の現実に生まれていたのだ。
このように両作家の生涯と作品が混ざりあいながら記されていく。
結びでは、『天人五衰』(三島)と『少将滋幹の母』(谷崎)を比較し、両者の崇拝の相違がまとめられており面白かった。情報量が多く、話題も豊富に出てくるが文章も平易で読みやすい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小説は書き終えた時点で作家の手から離れて、それは作家の実生活とはリンクしていないという考え方で読むことが多いけど、少なからず影響はするとこの本を読んで思った。
不在の話は面白いし共感。
著者プロフィール
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