ふれる社会学

制作 : ケイン 樹里安  上原 健太郎 
  • 北樹出版
3.58
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779306181

作品紹介・あらすじ

わたしたちをとらえて離さない社会。メディア、家族、労働、余暇、ジェンダー、セクシュアリティ、差別、人種等の視点から、身近な、そしてエッジのきいた14のテーマを読み解くことを通して、社会の大きな仕組みにふれる。また、執筆者と研究との出会いを記したコラム「研究のコトハジメ」や、初学者読者応援ページ「コトハジメるコツ!」では、大学での学びのお役立ち情報を掲載し、より深い学びをサポート。 
【主要目次】
第1章 スマホにふれる(ケイン樹里安)
   (スマホ片手に何をする? いま・ここ・なんとなく ふれさせられている? スマホで社会に触れる 等)
第2章 飯テロにふれる(菊池哲彦)
   (飯テロが浮かび上がらせる社会のかたち 共食と孤食 孤食の時代と飯テロが開く共同性 等)
第3章 就活にふれる(上原健太郎)
   (「就活やねん」 就活世界を形づくるモノ・人 自己の発見・演出・修正 等)
第4章 労働にふれる(上原健太郎)
   (頭を下げ続ける社会 サービス産業化社会 感情を管理する 賃金による帳尻合わせ? やりがいの搾取 等)
第5章 観光にふれる(八木寛之)
   (地域イメージと「観光のまなざし」 「ディープな大阪」という地域イメージをめぐって 等)
第6章 スニーカーにふれる(有國明弘)
   (「コートの中」から「ストリート」へ 「黒い」スパイダーマンと「エア・ジョーダン」 スニーカーが反映するストリートの人々の価値観 AJやラップは「黒人」だけのものなのか? 等)
第7章 よさこいにふれる(ケイン樹里安)
   (踊り子の「学習」 文化の経路 どこの/誰の文化? 調整と組み上げ 等)
第8章 身体にふれる(喜多満里花)
   (身体について考える 「理想」という規範 抵抗の場としての身体 等)
第9章 レインボーにふれる(中村香住)
   (レインボー、「LGBT」、「ダイバーシティ」の普及? フェミニズムの歴史 セクシュアル・マイノリティの運動の歴史 LGBTブーム」を超えて 等)
第10章 「外国につながる子ども」にふれる(金南咲季)
   (学校に広がるエスノスケープ みえなくする/みえなくなる 「コンタクト・ゾーン」としての学校の可能性 等)
第11章 ハーフにふれる(ケイン樹里安)
   (帰属の政治と人種化 技芸と折衝 交差性を抱えて 等) 
第12章 差別感情にふれる(栢木清吾)
   (看板の向こう側への想像力 反-反日感情が見ない現実 自己感情の自己点検 等)
第13章 「障害」にふれる(佐々木洋子)
   (障害とはなにか 家族と障害 「障害のまわり」について考えること 等)
第14章 「魂」にふれる(稲津秀樹)
   (「魂」にふれる 儀礼が可視化する「魂」 権力に晒される「魂」 社会構想における「魂」 等)
◇ コトハジメるコツ!

感想・レビュー・書評

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  • 社会学に興味を持った人が一番はじめに読むべき本!!ギデンズの社会学とか、有名な基本書はもちろん沢山あるし、それらは、知識量とか普遍性とかはある。でも、この本はなによりも現代の人々が「ふれ」やすい。スマホ、飯テロ、ハーフ、就活LGBTQ…聞いたことある現代の事象が、社会学としてはどう考えられるのかというのが解説されている。自分は学部4年生だけれども、この本を読んで社会学勉強していてよかったなあと思えるくらい面白かった〜。
    節々に書かれていた、社会学とは何か。「常識を疑う学問」、「『他者の立場に立って考える』ことを学ぶ学問」(塩原良和2017:9 分断と対話の社会学)どちらも共感する。
    そこで考えた、自分にとっての社会学は「居場所をくれる学問」とも言えるかも知れない。例えば、社会の当たり前とされていることを疑問視することに意味を与えてくれる。フェミニズムや就活が、私にとってそれの典型例。社会通念的価値観を疑問に思うことが「つれない」とか「逃げだ」とか言われることに自分を責めるのではなく、社会学として考えることで、その疑問視に意味を与えてくれて、「居場所」を与えてくれるのである

  • 2022.7.3市立図書館
    少し前に著者(ケイン樹里庵さん)の夭折と言ってもいい訃報を思いがけなく聞いて、そのうち読もうと気になっていたこの本を借りてみた。
    社会学でレポートや論文を書こうとする学生にとってヒントになりそうな身近で現代的なテーマ14(スマホ、飯テロ、就活、労働、観光、スニーカー、よさこい、身体、レインボー、外国につながるこども、ハーフ、差別感情、障害、魂)についてどんな論点やアプローチがありうるか知ることができる。それらをひと通り見た上で、そうしたテーマに取り組むときに避けて通るわけにいかない社会学的なものの見方を示す古典として、デュルケーム、ウェーバー、ジンメルを最終章で紹介している。
    それぞれの章末のコラム「研究のコトハジメ」がおもしろいし、巻末の「コトハジメるコツ!」の中の書店員との対談もよかった。分野にもよるけれど、ことに社会学は図書館でも書店でも文献さがしがたいへんだろうというのは想像に難くない。大学図書館と公立図書館、学内の本屋、ネット通販、街の大小の書店の特徴を知って使い分けるというのも、いまや教わらないとなかなかできないことなのかもしれない。

  • 社会学に興味を持てるような切り口、かつ平易な言葉で書かれていて非常に読みやすかった。

    以下読書メモ
    ーーーーーー
    ・社会学的な「ものの見方」 を習得することは、わたしたちが暮らすこの社会について考えることである。社会について考えることは、わたしたちが暮らすこの社会を「より良いもの」に変えていくひとつのきっかけとなる

    ・わたしたちの日々のふるまいや考え方が、社会の影響から「自由」ではないこと、そして、わたしたちのふるまいや考え方が、社会を作り、社会そのものを変えていく、ということだ。

    ・ゴフマンによれば、人々は、舞台に立つ役者のように合わせて、自分の印象を管理したり(印象管理)、「友人らしさ」や「恋人らしさ」を演じ分けている(役割演技)という。

    ・人類学者の澤田昌人は、異なる集団同士が食物を分配しともに食べることでお互いを同一集団のメンバーと錯覚してきた可能性を指摘し、人類はこの錯覚を通して暴力的手段に訴えずに社会の規模を拡大してきたと論じる。共食は、平和のうちに共同性を生み出す「幻想」なのである(澤田2015:21)。

    ・偶然がきっかけで問題が解決したり、あらたな価値が生まれたりすることを「セレンディピティ」と呼ぶ。

    ・デュルケーム(EDurkheim)は、個人の行為の総和では説明できない、人々の意識の外部にあり、人々の行為を拘束するものを社会的事実と呼んだ(1895=1978)(第15章を参照)。

    ・自己のあり方を観察・反省し、あらたな自己を構成し続けていく営みを、社会学では自己の再帰的プロジェクト(Giddens 1991=2005)と呼ぶ。

    ・マートン(RMerton)は、個人の価値観や態度、行動様式に影響を与える集団を準拠集団と呼んだ(Merton 195=1961)。社会状況、ジェンダー、生育環境等といった構造的な条件が、個人の進路選択の幅や内実に影響することはくり返し主張されてきた(松岡2019;難波2014ほか)
    19:56 田村まり 黄色い帽子をかぶり、ランドセルを背負って集団で登校するという「日本らしい」通学風景もまた、グローバル化の進展とともに刻々と変化しているのだ。こうした多文化化する風景、すなわち「エスノスケープ(民族の地景)」(Appadurai1996=2004)はいまや珍しいものではない。

    ・塩原良和は、社会学とは「他者の立場に立って考える」ことを学ぶ学問であると定義している(塩原2017:9)。

    ・イギリスの社会学者レス・バックは、「社会学的想像力」を身につけるためには、他者が語る現実についての説明に含まれる「洞察と盲点」の両方に関心を払いつつ、「同時に私たち自身の思い込みや予断を反省する謙虚さと誠実さ」をもつことが必要になると述べている(Back 2007:12=2014:36)

    ・デュルケームの「社会学的方法の基準』、ウェーバー(M.Weber)の『社会学の根本概念』、ジンメル「社会学の根本問題』である。およそ100年前に書かれたこれらの作品は、社会学の根本的な「ものの見方」を示した古典として読まれており、社会学の教科書で必ず紹介される。

    ・ウェーバーによれば、社会学の目的は、行為の意味を動機にさかのぼって理解することにある(Weber 1922=19214)

    ・私たちのプライベートな生活課題と、公共的な課題を結びつける思考法のことを、ミルズ(C.W.Mills)は社会学的想像力と名づけた。

  • Chapter1第4節“「普通の人々」の指先がスマホ画面に「なんとなく」ふれるたび、その指先はだっれかの声明にふれているかもしれない”とは意外と大事な視点で,Twitterなどでも軽々しく差別を垂れているのを目にするがその先には非差別者として命の危険に晒されている存在がいるのだ.

  • 15ものテーマを数ページずつ語っているのでこれ単品では物足りなさがある…が、日常生活から見える対象を通して社会や自分自身について考えるヒント集、として読めば社会学専攻にうっかり進んで調査のネタ探しに苦しんでいる学生以外も使える本。
    15のテーマにそれぞれついた読書案内と参考文献を片っぱしから読んで芋蔓式に広げていけば読む本が無くて困る、ってことには当面ならないはず。

  • 社会学は好奇心の学問だと思う。社会に起こる出来事に興味を持つ。そして実施に出かけて調べる。それをふれると言うフレーズで表している。そう、何事も触れてみると新たな発見があるものだ。海は見ているだけでは本当の海は理解できない。実際に海に触れてこそ理解できるのだ。

  • 読みやすく面白かったようにも思うが何も残らなかった…というのが正直な感想。

  • メインの対象読者は、これから研究を始める学生さんだと思うのですけど、
    「飯テロ」から「差別」まで、身近なキーワードを、学問の入口としてそれぞれ解きほぐしていく本。

    そこから深く考えるための書籍、方法も紹介されています。

    なので学生さんに限らず、ちょっと物事を深く学びたいな、なんて人にもよいテキストなのではないかなあ。

    身の回りのキーワードをこういう風に展開していくと、深く考えられるのね、的な書籍です。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00272229

  • 系・院推薦図書 総合教育院
    【配架場所】 図・3F開架 
    【請求記号】 361||KE
    【OPACへのリンク】
    https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/volume/455946

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著者プロフィール

元 昭和女子大学特命講師,社会学者

「2023年 『プラットフォーム資本主義を解読する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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