交響する社会―「自律と調和」の政治経済学

制作 : 井手英策  半田正樹  菊地登志子 
  • ナカニシヤ出版
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レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779505454

作品紹介・あらすじ

「経済」「政治」「社会」はいにかして調和しうるのか。市場の暴走を防ぎ、市場と国家、共同体が調和した社会のあり方を、マルチエージェント・シミュレーションと実証研究をもとに考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 社会の編成原理は「市場」、「国家」、「共同体」の3類型にあるというフレームワークを冒頭で紹介し、さらに現在の日本では市場原理の力が突出しつつあり、そのことからくる様々な社会統合の危機が生じているとの問題設定を掲げている。

    そして、この社会統合の危機を克服するための新しい社会システムのあり方を検討している。

    社会が統合されているということは、その社会制度を社会の構成員が共有しているという感覚を持ち得ていることが重要である。しかし、3つの編成原理のいずれかが突出すると、この社会に対する参画や相互承認の感覚が、構成員のなかから失われていく。市場原理の突出による格差の拡大による社会からの疎外が広がっているということなどがその事例である。

    本書では、福祉国家、新自由主義、さらにそれらのアイデアを参考にしつつも日本独自の政治状況、財政状況を背景に生まれた「日本型福祉社会」といった様々な社会のあり方を分析し、そのうえで、新たな社会統合の方向性として「ユニバーサリズム」というビジョンを提示している。

    ユニバーサリズムは、所得の多寡、年齢、性別などによって区別せず、一定の基準のもとに政府サービスを提供するという考え方である。

    非常にシンプルなビジョンに立ち返ったように感じられる提言であるが、持続的で統合された社会を保つためには十分に検討する価値のあるビジョンであると感じた。

    例えば、市場原理の弊害と言われる格差の拡大を、政府による再配分機能で経済的に解消しようとすると、長期的には財政的な持続性が保てない。

    ユニバーサリズムは、そのような制約の中で社会編成の3つの原理の力をバランスよく活用しながら社会の統合を実現しようという提言であり、示唆に富んでいると感じた。

    本書の中間部分で様々な国の事例が紹介されているが、それらが最終章で手際よくまとめられており、全体の見通しがよくなっている。場合によってはこの章を先に読んでもよいかもしれない。

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