若者よ、マルクスを読もう (20歳代の模索と情熱)

  • かもがわ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784780303605

感想・レビュー・書評

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  •  1800年代のマルクスの著作から,現代に生きるわたしたちが学ぶべきものはないのか。具体的にマルクスの著作の文章を挙げ,その内容から現代的な意味を見いだしていこうという,とても意欲的・創造的なお仕事の本である。内田樹さんと石川康宏さんという2人の学者の書簡を通して語り合う形で編集されている。文章から受ける雰囲気からは,おふたりの立場はやや異なっているようだが,それもまた刺激があっていいのではないか。わたしは内田樹さんのファンなので,こっちの文体の方が慣れているし読みやすく感じた。
     本書には『共産党宣言』をはじめとして,初期のマルクスの著作が取り上げられている。で,せっかくなので,本書と並行してマルクスの著作を再読してみようと思っている。学生時代以来だが,わたしもまた,マルクスの著作や彼の生き方の現代的な意味を考えてみたい。どのくらいできるか,わかんないけど。
     退職して無職になった今だからこそわたしにとって興味深かったのは,内田さんが『ドイツ・イデオロギー』を取り上げて述べている次の部分である。

     分業によって人間が「ある特定の範囲にだけとどまること」を強いられ,特定の職業に縛り付けられるとき,その労働は「かれにとって疎遠な,対抗的な力」となる。マルクスはそのような言葉づかいで分業を批判しました。同時に猟師であり,漁夫であり,牧夫であり,批判家(これはイデオロギー批判をする人,ぼくの先ほどの言い方で言えば「額縁をつける人」,すなわち知識人のことです)であるような人間を理想として掲げたこの言葉はたぶん『ドイツ・イデオロギー』の中でぼくがもっとも感動したものです。(p.229)

     その日によって,畑をしたり,草刈りをしたり,魚をさばいたり,保全活動に出かけたり,こうして本を読んだり,サークル用にレポートを書いたり…こういう生活は,まさにマルクスのいう共産主義社会の人間の姿だ。ただ給料はあたらない。賃労働じゃない点が違うけど。

  • 全ての事象を疑ってみる。額縁の中の作り物について、個々人で解釈してみる。人を見る時にその人の本質ではなく、行動を見る。分業なき社会、好きなことをどんどんやっていいんだよ。内田樹氏の言葉で、少しだけ青年期のマルクスの考え方を理解出来たかも。それにしても、マルクスのエネルギー、凄い。

  • この本の最も大きな目的はマルクス主義を伝えることにありません。肝はサブタイトルの “20代の模索と情熱”にあります。若い時代のマルクスの葛藤の軌跡から今を生きる若い人たちに考え葛藤してほしいとのメッセージが本書なのです。

  • 時間をおいて再読したら、もう一歩先に進めそうです。
    今回、学んだことは、「~すべき」という言い方は「しなさい」と命令するより効果があるということ。

  • 少年マルクスの幸福感(p. 75)
    「地位の選択にさいしてわれわれを導いてくれなければならぬ主要な導き手は、人類の幸福であり、われわれ自身の完成である。・・・」

    類的存在(p. 91)

    人間の成熟(p. 159)

    社会的な人間こそが人間である、というような解釈が印象的だった。
    これは内田の解釈だと認識しているが、実際そうなのか、またマルクスは何を言っているのかの確認は原書をあたる必要がある。

    私欲の追求に生きるのは動物的な生き方。
    私欲を超え、公人として社会の幸福や社会的(公人的)私人の完成を追求するのが、まさしく人間的な生き方である。

    「共産主義は、われわれにとって、つくりだされるべき状態、現実がしたがわなければならない『であろう』理想ではない。われわれが共産主義とよぶのは、現在の状態を廃棄する現実的運動である。この運動の諸条件は、いま現存する前提から生じる」(p. 185、『ドイツ・イデオロギー』からの引用)

    「かれらがなんであるかは、彼らの生産と、すなわちかれらがなにを生産し、またいかに生産するかということに一致する」
    (p. 220、 『ドイツ・イデオロギー』)

  •  本著はマルクスの入門書として活用できる。マルクスの著作に対する両著者の読者としての視点が大変興味深いし、マルクスの著書への愛着やノスタルジーが伝わってくる。
     入門書と言ったが、むしろ入口書と言ったほうがいいかもしれない。自然にマルクスが読みたくなる一冊だ。

  • ずっと読みたかった本
    マルクスもだけど、2人の噛み砕いた言葉にヒントがたくさんあったような
    ちゃんと集中できてなかったけど

  • f.2020/7/31
    p.2010/6/21

  • イデオロギーとか、フレームワークを疑うということについての本。
    そしてそれにより、メタなポジションを得て、優位に立つこともできる。
    (って、それはマルクスが望んだことだとは思わないけど)

    貪欲に知的領域を広げていくマルクスのパワーに打たれるのはよいことだと思う。

    20代に読んでいたらッて?
    それは分からないけど。

  • お盆のお休みに読みました。
    マルクスの理論をバリバリ丁寧に説明してくれる(でも少し小難しい)石川先生と、マルクスの面白いところを抜粋して語ってくれる内田樹(でもかなり断片的で体系的じゃない)のバランスが良かった。
    ずーっと知りたい、でも中々手が出ないマルクスについて、結構しっかり土台を知れたかなと思うし、満足。まだまだ足りないが、私的マルクス理解を積み上げる際の一つの有効なレンガとなりました。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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