- 本 ・本 (388ページ)
- / ISBN・EAN: 9784781406749
感想・レビュー・書評
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坂井修一さんの歌集ですね。
坂井修一さん(1958年、愛媛県生まれ)歌人、工学博士。大学の教授と歌人の二足のわらじを履き続けられています。数々の賞を受賞されています。
あとがきに、「『亀のピカソ』は、私の九番目の歌集。初出は、ふらんす堂の『短歌日記』として、二〇一三年の元旦から大晦日まてま毎日一首発表したもの」と紹介されています。
坂井さんとしては、日常の歌のみならず、毛色の変わった歌に挑戦されたそうです。
水槽の亀のピカソがその主の
進歩史観をしづかに笑ふ
オリオン座暗黒星雲
ひとのもつ心が壊す安全・安心
うすぎりのカチョカバロ焼く静寂は
すっぴんのわが妻をつつめり
ひかり呼ぶこころの暗ささびしさへ
月光来たりラボラトリウム
ほほゑみの皺増ゆるたび地位高く
こころは低く愛は怪しく
世過ぎなり胡椒の実よりかすかなる
星の言葉をつぶやきながら
七十億のひとりのきみをなだめつつ
地球まわれば空気もまわる
とめとなく積乱雲がふくらんで
大音響にいかづちが飛ぶ
温度計横目で見つつだんだんと
シティーのきみのテンションあがる
きみの道つひにいっぽんとなる朝の
憂愁が門のかたちをしてる
羨(とも)しきは渡るかりがね
夜が明けて北風がわれの窓ざわめかす
付箋の端つまんで噛んでひつぱつ
本からはがす付箋とわたし
あまいあまいチェンバロの音
いくたりのをみなを君は愛せしと問ふ
物理学、文学いづれよかりしや
けぶるよけぶる古今東西
本や音楽、絵画、映画、会議の様子、日常の歌等々が、ユーモアも交えながら詠まれています。
文学者の命日等も詠まれいて、興味深く親しみやすい歌集ですね。
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あとがきに「これまでの歌集とは違って、いささか猥雑な私、奔放な私を歌うのに躊躇を欠いたところもある。」とあるように、いつにも増して固有名詞が多く、歌人として、またITの研究者としての坂井氏の日常が垣間見える歌集だった。
ユーモラスな歌の中にときたま過労を思わせる歌があり、心配にもなる。
白い表紙の装幀やサイズもとても美しい。
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