亀のピカソ 短歌日記 (2013)

  • ふらんす堂 (2014年6月1日発売)
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  • 本 ・本 (388ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781406749

感想・レビュー・書評

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  • 坂井修一さんの歌集ですね。
    坂井修一さん(1958年、愛媛県生まれ)歌人、工学博士。大学の教授と歌人の二足のわらじを履き続けられています。数々の賞を受賞されています。
     あとがきに、「『亀のピカソ』は、私の九番目の歌集。初出は、ふらんす堂の『短歌日記』として、二〇一三年の元旦から大晦日まてま毎日一首発表したもの」と紹介されています。
     坂井さんとしては、日常の歌のみならず、毛色の変わった歌に挑戦されたそうです。

     水槽の亀のピカソがその主の
       進歩史観をしづかに笑ふ
     オリオン座暗黒星雲
       ひとのもつ心が壊す安全・安心
     うすぎりのカチョカバロ焼く静寂は
       すっぴんのわが妻をつつめり
     ひかり呼ぶこころの暗ささびしさへ
       月光来たりラボラトリウム
     ほほゑみの皺増ゆるたび地位高く
       こころは低く愛は怪しく
     世過ぎなり胡椒の実よりかすかなる
       星の言葉をつぶやきながら
     七十億のひとりのきみをなだめつつ
       地球まわれば空気もまわる
     とめとなく積乱雲がふくらんで
       大音響にいかづちが飛ぶ
     温度計横目で見つつだんだんと
       シティーのきみのテンションあがる
     きみの道つひにいっぽんとなる朝の
       憂愁が門のかたちをしてる
     羨(とも)しきは渡るかりがね
       夜が明けて北風がわれの窓ざわめかす
     付箋の端つまんで噛んでひつぱつ
       本からはがす付箋とわたし
     あまいあまいチェンバロの音
       いくたりのをみなを君は愛せしと問ふ
     物理学、文学いづれよかりしや
       けぶるよけぶる古今東西

     本や音楽、絵画、映画、会議の様子、日常の歌等々が、ユーモアも交えながら詠まれています。
     文学者の命日等も詠まれいて、興味深く親しみやすい歌集ですね。

       

  • あとがきに「これまでの歌集とは違って、いささか猥雑な私、奔放な私を歌うのに躊躇を欠いたところもある。」とあるように、いつにも増して固有名詞が多く、歌人として、またITの研究者としての坂井氏の日常が垣間見える歌集だった。
    ユーモラスな歌の中にときたま過労を思わせる歌があり、心配にもなる。
    白い表紙の装幀やサイズもとても美しい。

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著者プロフィール

東京大学大学院情報理工学系研究科教授

「2022年 『サイバー社会の「悪」を考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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