若山牧水の百首 自然に漂う未来の人 (歌人入門 11)

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  • 本 ・本 (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781416915

作品紹介・あらすじ

◆百首シリーズに若山牧水が登場!――自然に漂う未来の人



白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

(『海の声』)



愛誦歌のアンケートがあると、つねにトップの地位を占める有名歌である。「白鳥」は鷗だろうか、スワンだろうか。一羽なのか、数羽なのか。空を飛んでいるのか、海に浮かんでいるのか。青海原をイメージしたらいいのか、海岸近くを思い描いたらいいのか。すべては読者の想像にまかされているのが魅力である。二句と四句で切れる五七調のゆったりした調べがその魅力を支える。ポイントは結句の「染まずただよふ」。周りのどんな色にも染まらず自らを貫く純粋さ。この結句まで読めば、第二句の「哀しからずや」が感傷などでないことは明らかだ。

感想・レビュー・書評

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  • 酔いどれで彷徨う旅の歌人、若山牧水。なんともとらえどころのない歌が並ぶ。
    ただし牧水は西行を慕い、また西行の系譜の歌人と言われてるらしい。
    大きく異なるのは、西行が出家した一人身であったのに対し、牧水には妻と四人の子どもがいたことである。いかに俗っぽいのか、ある面どこにでも居るだらしのないのん兵衛に映る。

    でも、そのだらしなさを、わが身で感じ、わが身で歌に詠む。
    そこに歌人としての自らを貫く純粋さがある・・・。

  • 「白鳥は~」や「幾山河~」の歌のイメージで寂しげな歌詠む印象だったんですが、恋・酒・旅・自然と、ロマンチックで少しユーモアもありだいぶ印象が変わりました。「恋しさの歌人」という編者の評が言いえて妙と感じた。歌集未収録歌の発見談もドラマチックで非常によかったです。

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著者プロフィール

昭和18年、宮崎市に生まれる。早稲田短歌会を経て、「心の花」に入会し、現在も会員。
歌集に『海号の歌』(読売文学賞詩歌俳句賞)、『新月の蜜』(寺山修司短歌賞)、『微笑の空』(迢空賞)、『月の夜声』(斎藤茂吉短歌文学賞)、『待ち時間』(小野市詩歌文学賞)、また歌集『土と人と星』及び評論『若山牧水─ その親和力を読む』により現代短歌大賞・毎日芸術賞・日本一行詩大賞を受賞。平成三一年、第3回井上靖記念文化賞
特別賞受賞、令和四年旭日小綬章受章、令和五年『牧水・啄木・喜志子 近代の青春を読む』(ながらみ書房)を中心とした永年の功績により第15回日本歌人クラブ大賞受賞。他に歌集『光の庭』(ふらんす堂)他がある。
若山牧水記念文学館館長。宮崎市に住む。

「2024年 『若山牧水の百首』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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