音楽の在りて

著者 :
  • イースト・プレス
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レビュー : 56
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781605999

感想・レビュー・書評

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  • 思えば、この人の場合、見えるのは常に後ろ姿だったよう気がする。

    ラブコメ全盛の少女漫画界にあって、その王道ラブコメも描けば、一方でSFやファンタジーや吸血鬼や心理系も描く。2歩も3歩も先を行くこの人の背中を追いかけついて行くのがやっとで、それが誇らしく楽しかったのだ、読者は。

    1977年〜91年の、短篇小説が12本と、漫画が1本。
    最初の短篇「ヘルマロッド殺し」と、最後の漫画「左ききのイザン」が呼応する。

    「ヘルマロッド殺し」での設定は、1970年代のジョン・ヴァーリイ「へびつかい座ホットライン」やら2001年の平山夢明「テロルの創世」やら、SFとしての作品を経て、今や「わたしを探さないで」の純文学にも使われる設定となっている。「ヘルマロッド殺し」が書かれたのは1970年代終わりなので、その揺籃期に、既にその設定を先取り、共有していたということになる。

    読みながら、やはり文字の向こうに存在する絵が見える。漫画が存在していることを感じる。
    何の先入観も予備知識もなしにこの作品を読んだら、物足りないのだろうか?
    物足りないというのとは違うように思う。文字でしか書いていない、という意味では小説なのだけれど、絵が見えてくる、という意味では、小説でも漫画でもない、その間にある別のジャンルのようにも思われる。

    「CMをどうぞ」はちょっとシニカルなオチを用意しているところが星新一のようだし、「守人」はドタバタの感じが筒井康隆のようでもある。「闇夜に声がする」は少々オトメチックでまとまりもいい(タイトルもいい)。

  • 海外物のSF小説を読んでいるようだった。
    絵のない萩尾望都も、やっぱり天才だった。

  • 萩尾望都さんの短編集。巻末の1作を除き小説。初出を見ると古いものばかりだけど、小説も書かれるんですね。
    表題作「音楽の在りて」が一番面白かった。よくまとまっていてじんわり感動。
    一番長かった「美しの神の伝え」がわたしには今ひとつちゃんと理解できず、残念。
    巻末の漫画「左ききのイザン」は巻頭の短編小説「ヘルマロッド殺し」の続編だったのね。漫画のほうだけどこかで読んだことがあったけど、両方読むと内容が深くなって感慨深い。
    SFとまではいかない内容の短編も入っていたり、バラエティに富んだ一冊。

  • 文字だけでも萩尾先生の絵が脳内に浮かぶ。凄い。

    ヘルマロッド殺しから他短編、音楽の在りて、全てにおいて満足した本でした!それぞれの話が同じ世界の別の場所で起きた出来事かもしれないと想像してワクワクしました。話は終わっても登場人物達の物語はまだまだ続いているような、ワクワク?
    萩尾先生の作品は私の読解力、想像力が乏しいせいか一回読んでも理解出来ない時がある(それでもストーリーや美しい絵、キャラ達の動きに否応なしに萩尾先生の世界に引き込まれるんですが)。しかし、数年後読み返してみると、あー!そういうことね!とストンと納得できる時が来るんです。読み返せば読み返すほどに新しい発見がある。
    美しの神の話は、あー萩尾先生の世界だな、とか何となく雰囲気を掴めた程度なのですが、また数年後、何度か読み返した時に新しい発見がある作品なのかな。

  • 正直、あまり期待していなかったので、おもしろくてビックリしました。(←すごく失礼ですが…)
    前半は普通の古典的なSFだったので、単純に「久々のSFだ♪」という感じで読んでいました。小説にすると萩尾望都っぽさはなくなるけど、SFってやっぱりおもしろいな、と萩尾さんの作品だということをすっかり忘れて読んでいました。
    でも、後半の「美しの神の伝え」は、すごく萩尾望都さんらしくて、マンガの世界と空気が同じで、またまたビックリ。
    なんだ、小説でも萩尾望都さんの色は出てくるんだ!と前半で感じた感想がひっくり返ってしまって、ある意味感動しました。
    きっと作者にとっては、小説にするのとマンガにするのとで、手法というか、物語の詰め方とかアプローチはずいぶん違うのではないかと思うのですが(あくまで推測ですが)、この「美しの神」に関しては、読み手の私は全く表現手法の違いを感じませんでした。
    一番好きな作品は「子供の時間」です。古典的なSFという感じで、この作品じたいに萩尾さんカラ―は特に感じられませんでしたが、ぬいぐるみにぐっときました。

  • 意味など後つけるものにすぎないから、美しいさえあれば十分さ!

  • SFを通して、人の存在に問いかけるタイプの短編集。
    未来へ向けて悠久の時を感じるのもいいですね。

  • 中編「美しの神の伝え」がおもしろかったけど、よくわからない。よくわからないのにおもしろいというのが、不思議だが。ここに出てきた『つなぎめ』はどんなものか全然イメージできなかった。ところどころ挿絵を入れてあったらいいのにな・・・。
     巻末の漫画「左利きのイザン」は、収録短編小説「ヘルマロッド殺し」の後日談。「左利きのイザン」は発表当時地味過ぎて面白くないと思ったが、「ヘルマロッド殺し」は文句なしだった。「ヘルマロッド殺し」を読んでから「左利きのイザン」を読むと、イザンがずっと深く見えます。

  •  じんわりと心に染みこむ魅力的な言葉がたびたび出てきて、それがとても心地よい。
     特に少年達の描き方が好きだなあ。読んでいるこちらには分かることを、物語の中にいる少年達は分からないで、不思議に扱っておかしな処理をしたりする。それがとても愛おしい。
     「美し神の伝え」とても面白かった。登場人物の愛しい混乱から変化していく箱庭の様子がいい。
     短編だと「おもちゃ箱」が好き。

  • 独特の雰囲気があるよな〜

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著者プロフィール

漫画家。1976年『ポーの一族』『11人いる!』で小学館漫画賞、2006年『バルバラ異界』で日本SF大賞、2012年に少女漫画家として初の紫綬褒章、2017年朝日賞など受賞多数。

「2017年 『美しの神の伝え』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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