それでも、生きる。 NHK取材班が聴いた被災地3000人の声
- イースト・プレス (2012年12月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784781608754
作品紹介・あらすじ
2012年3月6日、震災後一年の被災者の現在を描いたNHK「クローズアップ現代」。 番組で取り上げた宮城・高泉元幸さん、岩手・志田由紀さんの姿は大反響を呼んだが、直接取材した記者が、番組内に収まり切らなかった二人の思いや背景も含めて執筆。また、番組では取り上げることができなかった原発事故の地、福島の男性も新たに追加取材した。第二部は、NHK報道局社会部が実施し延べ3000人以上から寄せられたアンケートの中から、被災者の想いがあふれ出た自由記述欄の一部を紹介する。
感想・レビュー・書評
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あれから12年も月日が経ったとはおもえない。
ついこの間のような気がする。
でもきっと何も知らないのだと思う。
何もわからないのだも思う。
あの日に起こったこと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東日本大震災から丸一年の昨年3月に、『クローズアップ現代』枠で放映された震災ドキュメントの単行本化。
副題の「3000人」はアンケート調査をした人数で、全員の声が本書に収録されているわけではない。
宮城・岩手・福島の被災者家族一組ずつに取材したルポ3編と、アンケートの記述内容の一部紹介からなる本。
アンケートの紹介は、1人に2ページも費やしてスカスカのレイアウト。しかも、記述内容をただ並べただけ。ひどく安直な作りだと思う。
全部で200ページに満たない本だし、内容も薄い。NHKの震災報道をまとめた本はほかにも複数出ていて、それらに比べると見劣りがする。NHK出版から刊行されなかったのも納得。
ただ、3本のルポのうちの1本――岩手県大船渡市の志田由紀さん一家が主人公の「母の最期の言葉かみしめ、もがき、苦しみ続けた一年」は、素晴らしい。松井裕子という記者がまとめたものだ。
「母の最期の言葉」とは、家族で津波から逃げようと車に乗ったとき、まだ乗っていなかった老母が残した言葉。
津波が間近に迫るのを見て、病気で動きも鈍い自分が乗っている余裕はないと判断した老母は、車のハンドルを握る夫と、家族に向かって言う。「(自分を乗せずに)行け!」と……。
そして、離れていく車に向かって叫ぶのである。
《「生きろよ! こっち見るな! 後ろを振り向くなよ、がんばって生きろよ! バンザイバンザイ!!」》
「バンザイ」というのは、ダウン症で盲目の孫娘を先に車に乗せたことで、彼女の命を助けられたと確信しての一言だと思われる。
そして次の瞬間、老母は家族の目の前で津波に呑まれたのだった。
「肺腑をえぐる言葉」とはこのことで、この場面は涙なしには読めない。
だが、残された家族にとってこの言葉はあまりに重い十字架ともなり、家族の絆に深い亀裂が入ってしまう。その亀裂を、少しずつ修復していく「家族再生」のドラマでもある。
本としての出来はイマイチながら、このルポだけは一読の価値がある。 -
NHKクローズアップ現代放送の書籍版。
取材された内容のうちのホンの一部でしょう。
これだけでも充分伝わりましたが、
悲しみが癒えることはないでしょう。
それでも前へ進む、いや、進むしかない。
業 -
「生きろよ! こっち見るな! 後ろを振りむくなよ、がんばって生きろよ! バンザイバンザイ!!」
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直接、支えになれることは少ないかもしれない。しかし、いまこの瞬間にも被災地では、多くの人たちが復興を成し遂げようと懸命に生きている。それを忘れないこと、そして見守り、寄り添い、何が出来るか自問し続けること、それは私たち一人ひとりにも出来るのではないか。(本文より)
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震災にあって、肉親を亡くして、心がどん底まで落ちて、でも少しずつでも生きていこうとがんばれるようになった人…でも久しぶりに記者があったら、前より元気が出ない彼女がいて…もがいてもがいて、一歩ずつ必死に前に進んで、周りに助けてくれる人もいて、でも後退してしまうこともある。ものすごくリアルで、苦しくなった。