パリの国連で夢を食う。

著者 :
  • イースト・プレス
3.93
  • (75)
  • (96)
  • (73)
  • (9)
  • (1)
本棚登録 : 771
感想 : 118
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781612430

作品紹介・あらすじ

世界一のお役所の舞台裏は、驚きの連続だった!新田次郎文学賞を受賞した川内有緒が、パリと国連での5年半におよぶ体験をユーモラスに描いた、30代女性のライフストーリー。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 憧れていた職業に就いても
    実際の仕事は思ったより地味で
    憧れていた「華やかさ」はその仕事のごく一部だけだったと気付く。
    国連に限らず、世の中の「憧れの仕事」ってみんなそうだなあ、と。
    憧れの仕事に就いても、私は「私」のまま。「憧れの誰か」にはなれない。
    結局は自分で道を切り拓いていかないといけない。


    海外で働きたいとか
    国際機関で働きたいとか
    私も憧れたことあったけど
    実際問題、仕事の流れや生活に関するすべてが根本的に違ってて、イメージしてた仕事と現実の仕事も全く違ってて、よほどのバイタリティがないとやっていけないなと読んで思った。
    作者はタフ。

    国際機関で働くことになったのは、「世界を変えたいから」という大層な理由じゃなくて、「たまたま求人を見つけて、応募してみたら2年越しに当たった。そのとき現状に悩んでたところだった。パリで働くなんてわくわくする」というミーハーな理由だった。

    「周りからすごい努力家だと言われたが、行き当たりばったりの生き方だ」と振り返っているが、
    「すごい職業」についてる人の人生って、案外そんな感じなのかもしれない。
    「世界を変えたかったのではない。私は自分を変えたかったのだ」。



    …それにしても、誤字脱字が散見したのがものすごく気になった。
    「てにをは」が抜けてたり、「男ははすでに」とあったり、「〜だった。、」となっていたり…。
    初めて聞くような出版社だからだろうか。
    読んでいたのが第1刷だからだろうか。
    出版されている本を読んでて、こんなに気になったのは初めてだった。

  • 仕事に縛られすぎない。
    内なる声を聴く。

  • 《人は、「アメリカに留学して、現地で就職して、大手シンクタンクを経て国連に入り、英語の他にもスペイン語とフランス語を多少話せる」ということを知ると、私のことを「すごい努力家!」と思うようだが、それは誤解である。私はただその場の思いつきに身を委ね、「なんとかなる」と行き当たりばったりに決断し、タイミングよく転がってきたサッカーボールでシュートするみたいに生きてきただけだった。》253,254頁より

    それができない!一歩踏み出せることこそ才能、と思いながらアリオさんの魅力にハマっていく。だからこの本を読んでいると、今すぐ何か動き出したくなる。
    前半のパリ赴任パートは特に軽やか、後半の「ディス・イズ・ザ・ユナイテッドネーション」に思い悩む姿も悲壮感はない。
    是非とも他の作品も読んでみたい。

  • これは面白い。アメリカ留学後現地で就職、日本のコンサルタント会社に転職し、そこからさらに国連の正規職員に転じて(倍率2000倍だって!)パリのサンジェルマン・デ・プレ教会近くのアパートに暮らした日々を綴ったもの。おお、こんな風に紹介したら、どんなセレブライフが披露されているのかと思ってしまうなあ。いやもうこれが、全っ然違うのである。

    そもそもこの本を知ったのは、高野秀行さんが「はぐれノンフィクション軍団」に入会(入団?)希望する酔狂な人がいると紹介していたからだ。高野さんは、川内さんは既に新田次郎文学賞を受賞しているし、その華やかな経歴からして、こんなはぐれ者の集まりに入れちゃうのは悪いなあ、でも是非にと言ってるから喜んで迎えようと書いていた。それで俄然興味が湧いて読んでみた次第。

    川内さん、あなたは立派に高野軍団の一員だ! 自分のやりたいことを求めて、あまり後先考えずに新しい環境に飛び込んでいく行動力といい、どこへ行ってもその場になじんでいく懐の広さといい、まったくたいしたものだと感心する。お金や地位や世間体などより、自由と好奇心を満たすことを優先し、結局は、これ以上ない労働条件で安定を約束された国連も退職しちゃう。このあたり、「放っておいても明日は来る!」で高野さんが紹介していた自由人の方たちと同じだ。

    でもこの川内さん、決して突飛な変わった人ではないのである。企業人としても国連職員としても真面目で(もちろんとても優秀で)、職場では周囲にさりげなく気を遣い、一人暮らしがちょっと寂しくて恋人が欲しいなあと思い(後にちゃんとできる。その顛末がステキだ)、お父さんが病気で亡くなり涙にくれる。そういうごく当たり前の人としての暮らしが自然に書かれていて、共感を持って読み進めていけた。

    国連と言っても、描かれているのは著者が勤務した国連の一機関だが(ぼかされているがユニセフかな?)、その実態もとても興味深かった。巨大組織であるだけに問題も根深そうで、漠然としかイメージできなかった国連の仕事というものを少しだけ身近に感じることができた。そういう「お仕事もの」としても優れた一冊だと思う。年の初めに良い本に出会えました。

  • 国連って、投資銀行なんかと比べてキャリア的にはあまり面白くないと聞いたことがあったが、なるほどこんな職場なのかと納得。でもワークじゃなくてまったりライフを重視する人にとっては良い職場のようだ。福利厚生のレベルは高い。1年まで無給休暇が取れたり、有休は1ヶ月に2.5日付与され、しかも前借りができたり、クリスマスの時期は5日の一斉休暇があったり。3年目で月給50万円。まるで天国だ。入るのはかなり大変そうだし、性格的に向き不向きはありそうだけれど。
    日本でも近年女性活用とかダイバーシティがどうのといっているが、国連のダイバーシティは凄い。日本で言ってるダイバーシティとはレベルが違う。信仰する宗教の行事に気兼ねなく参加できるように、自分で「宗教の日」を指定して休める。勤務時の服装がバラバラで、スーツだけじゃなく、サリー、セクシードレス、民族衣装、浴衣、ジャージと何でもあり。日本の掛け声だけのダイバーシティと大違い。
    著者のバイタリティーにも驚いた。フランス語があまり話せないのに、いきなりフランスで働くとか、ソルボンヌ大学で教えるとか。人がうらやむまったり高給な国連をあっさり辞めるとか。思い切りがいいというか、ちょっと羨ましい。平凡な暮らしをしてきた自分には中々選べない道だ。

  • 国連のイメージが音をたてて崩れていく。国連だけじゃなくて、評価基準がハッキリしない組織は似たようなものなのかもね。
    で、国連の目標って何だったっけ。世界平和だったかな、

  • 「そして、旅人は恋人になった」というフレーズにやられました。

    川内さんの人間性が、すごく魅力的で、今回ランダムに三作目。

    最後の写真を見て、このベンツ運転してたんだーって思わず拍手。チャーリーズエンジェルの例えも、なるほど納得でした。

  • 読んでいて伝わってくる著者の川内さんの人柄が、懐が深く柔軟で、オープンだけど無神経さがなく、エネルギッシュで、とっても好感が持てるなと思った。
    フランスで生きる日本人達や国連機関で働く人達(キャラが濃い!)、国連機関内部の様子などは面白くて興味深かったけれど、自分が人生や仕事に求めるものについての川内さんの悩みや惑いは私自身にも当てはまるところがあり、考えさせられた。
    コロナ禍以降は自分が停滞しているように感じていて、でもまた何か動きたい・前に進みたいと考えていたのだけれど、この本を読んで力をもらえた気がする。読んで良かった一冊だし、今出会えたのも何かのご縁かもしれない。

  • 日本の激務のコンサルト会社で働く女性が、国連の職員に採用されてパリで働く話。
    そんなにホイホイと身軽に海外で働ける?と思ったらこの女性、大学卒業後アメリカの大学院で修士号を取得。英語だけでなくスペイン語も使える!というすごい人だった。文章も読みやすいし、巻末の写真はなかなか美人だし、自分の気持ちに正直でエネルギッシュで卑屈なところがなくて素敵な人。と、同時に学費は相当出してもらっただろう、とか帰省の時に垣間見える親子関係が良くて羨ましい、とも思ってしまった。自分だったら事後報告で「結婚したよ」ではとても済まないと思う。
    国連でのエピソードがたくさん語られていて面白い。同僚や仲良くなった人たちがどんどん転職してしまうのを見ると、海外と日本の違いを感じた。(しっかり最初から最後まで登場するのは上司のミローシュくらいかな?)
    そして主人公も最後は国連を去る。ドロドロしたところがなく、爽やかな本だった。

  • 仕事ってなんだろう?と思わせる本。国連という組織がこんなにも硬直化しているとは知らなかったし、でもそれは多くの国の利害が対立する中の仕事ゆえに仕方がない面もあるという事も知らなかった。
    なかなか就くことができない仕事だし、福利厚生は申し分なし。身分は保証されていて、年金もたくさんもらえるのに、何が不満なのかと思えるが、著者にとってはもっと自由に行きたいところに行ってしたいことをし、文筆業で身を立ててい
    きたかったのだろう。
    パリという街に住むということの魅力も多く書かれている。
    多くの発見があった。

全118件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

川内 有緒/ノンフィクション作家。1972年、東京都生まれ。日本大学藝術学部卒業後、米国ジョージタウン大学で修士号を取得。米国企業、日本のシンクタンク、仏の国連機関などに勤務後、ライターに転身。『空をゆく巨人』(集英社)で第16回開高健ノンフィクション賞を受賞。著書に『パリでメシを食う。』(幻冬舎)、『パリの国連で夢を食う。』(同)、『晴れたら空に骨まいて』(ポプラ社/講談社文庫)など。https://www.ariokawauchi.com

「2020年 『バウルを探して〈完全版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川内有緒の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×