男しか行けない場所に女が行ってきました

著者 : 田房永子
  • イースト・プレス (2015年1月30日発売)
3.69
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  • レビュー :33
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781612799

作品紹介・あらすじ

お宅のダンナ(カレシ)、
こんな楽しいことしてますよ…。
羨ましすぎるッ! (怒)

エロ本の取材現場を「女目線」で覗いて気づいた「男社会」の真実。


ベストセラー『母がしんどい』『ママだって、人間』の田房永子の最新刊。

女として、男の風俗や欲望を見て、それなりに驚いたり、発見があったとしても、本当に思ったことはレポートできない。「こんなことを思ったから、そのまま書きたい」と編集者に言っても「そういうのはいらないです(笑)」と言われてしまう。(中略)男性向けエロ本の中には、「女」についての情報しか書いてないけれど、私にとっては「女」から一番遠い世界だった。(「はじめに」より)



第1章 男しか行けない場所
第2章 男のための場所で誘ってくる男たち
第3章 男しか行けない場所で働く女の子たち
第4章 エロ本を作る男たちと私
第5章 実は男しか行けない場所

男しか行けない場所に女が行ってきましたの感想・レビュー・書評

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  • この世は男中心にできており、それが最も露骨に現れる場の一つはセックスである。
    誰もが知っている真実だが、誰もが敢えて触れようとはしない真実でもある。フェミニストですらそうだ。なぜならセックスの場において自分と相手との間にある優位と劣位の差に気がついてしまうことは、とんでもなく痛いことだからである。
    だから男向けエロ業界を女が観察してきました、というルポの多くは、男と一緒にエロが楽しめちゃう私、というキャラをかぶったり、冷静な観察者というキャラをかぶって書かれている。この本が他と大きく異なるのはそこだ。田房さんは、自分が現場にいる時に感じるざらっとした感触から目を背けることができるほど、器用な人ではない。
    ていうか、心配になるくらい不器用な人だと思う。なんで男たちが無意識に醸し出す優越感に対して人一倍敏感な人が、わざわざこんな辛くなりそうな仕事を選んじゃったのかと、田房さんが取材する風俗嬢の方ではなく、田房さんのことが心配になってしまうくらいだ。
    田房さん自身は風俗ルポの仕事を選んだ理由を、「そういう仕事に憧れがあった」としか説明していないけれど、たぶん風俗の現場に敢えて踏み込むことで、男の態度にも痛さを感じないで生きていける私になりたかったんじゃないだろうか。酸いも甘いも噛み分けて、男とは女とは世間とはそういうもんだよねと飲み込んでしまえれば、痛さを感じずに生きていける、と。
    でも田房さんはそれほど器用な人ではなかった。だからこそ、この社会の本質が見えるようになったんだと思う。その本質とは、この社会全体が「男しか行けない場所」になってるんだということ。男中心の社会だからこそ、性風俗がこんな形でできあがってるのだ。
    そんなこと、とうに知ってたって?でも自分の痛みを痛みとして感受できなければ見えないことがある。そして自分の痛みを認識するのは決して容易なことではないのだ。

  • エロ雑誌でルポ漫画を描いている筆者が、エロ雑誌には書けなかった女だからこそ感じるあれこれを綴ったエッセイ。
    下世話な好奇心で手に取った男性陣はぶったまげるだろう。
    エロや下の話もあるにはあるが、むしろ筆者が膨大な量のフィールドワークをもとに、風俗の世界に如実に表れるジェンダーとセクシュアリティの問題、ダブスタ、男から見る女の分類、などなどについて真面目に考察した社会学に分類されるべき一冊である。
    ジェンダーを語る上で風俗はやはり切り離せるものではないと改めて感じた。

    最終章のAKBに関する考察が秀逸。
    こんなにも分かりやすく、モー娘。との違いも絡めてAKBを論じたものを読んだことがなかった。
    私自身、とある事情でAKBのことはデビュー前から知っていたが、ずっと気持ち悪いという思いが拭えずにいた。
    それを何となく許容できるようになったのは、13年のAKB選抜総選挙で指原梨乃が1位になった頃からであり、AKBの枠を飛び出して単独でTVに出る彼女を見てみたら、指原梨乃は自分の考えをしっかり持ち、それを自分の言葉で語ることのできる人で、いわゆる「女に嫌われる女」ではない。
    彼女を応援している人の中には相当数の女性も混じっているように思う。
    しかしAKBという男が作った男のための集団を、女性も享受しているという今が、いいことなのか悪いことなのかよく分からない。

  • 女性の漫画家の筆者が男性にしかいけないところ(風俗店など)のレポートについての体験をエッセイとして記載した本。

    前半は風俗レポートが書かれている。様々な風俗店があること、女性からみて何の需要なのか理解できない滑稽さ(男性の自分からもよく分からないもの多数)が面白い。
    人の好みは多種多様で、他人にとっては無駄なくだらないものでも、それを真にを求める人がいる。でもそのくだらなさが人間らしく面白いな、とか思う。

    ここまでだと単純に色モノ的なレポートにとどまる印象なのだが、このエッセイの魅力は中盤から後半にある。

    中盤から後半に関しては風俗店のレポートではなく、筆者が漫画を掲載していたエロ本の編集者だとか、身近な人々との関係性の話になってきて俄然面白くなる。筆者とのコミュニケーションの中で見えてくる人間の業のようなものを鋭く切り取っている。

    世の女性にとっては常識な感覚なのだろうが、女性目線で見た場合の男性は、いつまでも幼稚な部分があり、女はその男性の性質をわかったうえで、純粋だったり何もわからないふりをして、男性を立てるような振る舞いをする。

    この筆者もそのようなふるまいを仕事などを潤滑に進めるための技として当然のように使ったいるのだが、心の底ではその男性のニブさなど、男女差の不条理さなどに違和感を感じている。

    そんな中男性しかいけない場所に行くことで、女性として男性目線を体験をすることは、女性としては非常に無理のある、ばからしい行為であるからこそ、男性の滑稽さ、女性が女性を演じる滑稽さが浮き出てくる。

    私は男性なので、やはりこのような目線で男性の性に関する考え方を語られることが非常に新鮮だった。というか、女友達とかからこのような発言を断片的に聞いたことがあるので、今更ながら腑におちて理解しやすかった。という感覚に近い。

    最後の方に記載してあるAKB48への考察が非常に面白かった。モーニング娘とも違うAKB48の立ち位置と、お母さんと息子の関係、おばあちゃんと息子の関係性に例える部分の、絶妙さ。

  • 借りたもの。
    男性のための性風俗店に行った田房永子氏のルポ。
    そこは男尊女卑な性の世界だった。同じ女性としては、ただただ胸が苦しくなる。
    女性目線で(男性が「楽しむ」という視点ではない)書かれたことに称賛。
    コミックエッセイかと思っていたが、文章だった。その分、生々しくないのだろう。

    風俗店の4つのタイプ、その違いをまとめたリストは、女性にはなかなか知りえない事だったので納得。
    それを知り、そうしたトラブルで警察沙汰になっている報道を思い出すと、ジャンル的にそういう仕事ではないのに“本番”を求めた男たちの、客としての低レベルさが理解できた。

    労わるふりをして優位に立とうとする男と、それを受け入れ醒めた/冷めた/褪めた眼で男を見る女たち……
    風俗の世界で働く女性たちは幸せなのだろうか?
    田房氏の他の著書から、氏がある種の抑圧を受けていた事からも、氏がそうした女性たちの抑圧を感じ取ってしまうのかも知れない。

    私が聞いた話で、セックスワーカーは仕事に従事する前に性的経験がある女性が多い――それは時に、性虐待の被害者である事が多い――というのが本当なら、風俗がエロ犯罪の抑止になっているとは到底思えない。

    AV撮影の現場ですら、AV女優とスタッフ女性の美醜を比較するという。
    脱ぐAV女優への気遣いのつもりだろうが、男性原理的な上下関係で、優越感を与えることで胡麻化すという天邪鬼で気遣いのかけらもない。

    モー娘。ファンとAKBファンの違いに、秋元康氏の反則技――一種の禁忌を超えた――という指摘は、正しい。
    日常と非日常の境界を下げすぎる事(ライブが演出であることが曖昧になり、アイドルとファンの垣根が低すぎること)がいかに危うい事なのか……日常の女性たちにまで、「幻想がリアル(常識とか正常)である」と求めかねなくなる事――を暗に示唆しているようにも思えた。

    理想的なセックスに関してはアダム徳永『スローセックス実践入門』( http://booklog.jp/item/1/4062724014 )などが本来だと思う。
    田房氏が「ガスコンロSEX」と称したものが、上記本で言うところの「ジャンクセックス」という、一番ダメなセックスだった……
    ここに書かれている男性も含めて、セックスが本来、男女ともに幸福になることができる事を知ってほしい。

  • すごーくよかった。やっぱり田房さん大好き。絵もすごい効果的で、よかった!絶妙ー!単に、こんなんでした、というレポだけじゃなくて、田房さんの意見とか、視点があってすごくいいし、なんども心の中で大きく頷いた。特に面白かったのは、人形のとこのヤーさん3人、阿佐ヶ谷さんの絵(肉まん 笑)、ツーショットダイヤルの20歳さばよむおっさんの絵 (顔がリアルに目に浮かぶ)、他にもいっぱいあるけど。女のためのAV撮影参加のとこもよかったし(こんな機会普通の人には訪れない)、家に終電で帰る男の子育てしてない自覚のなさとか、女には安心安全に発散できる場所サービスがないだとか、名倉がブレないとか、ほんとそうだ。最初に男男男男女、の図がでてくるんだけど、最後のほうに、自分はしずかちゃんの位置になりたかったんだ、だからエロ業界なのだ、というのが自分分析していて、なるほどーと思った。この方には、ぜひとも中村うさぎさんとか、大野佐紀子さんとか、小倉千加子さんとかと、対談してほしいと思う。いや、私が普通におしゃべりしたい、だらだらと。私のかわりに色んなモヤモヤ文章にしてくれて、ありがとう、という感じ。これからも期待しています。

  • 男って馬鹿で自分勝手だなと思いながら読了。そしたらあたし気づいちゃんったんです、あっ!あたくしも男だって。

  • 女性風俗ライターの著者が様々な店に潜入する。挿し絵もなかなか味わい深い。人形だけが待機している風俗もあるそうで、深い闇を覗いている気分になる。風俗で働く女の子の実態や、その女の子らを冷静に分析する著者の視点は面白い。しかし段々とジェンダーの話に重きが置かれ、どんよりとした気分になってくる。最後のAKB48の件に至っては苦笑いするしかない。なんとも後味の悪い本だった。

  • 自分の中の分類でいくとエッセイになってしまうのだが、一般的にこの分類で想定されるものよりもかなり強いメッセージ性のある作品だと思う。
    知らず知らずのうちに、男性の性欲というものがしょうがないものとして社会に受け入れら、女性はそれを優しく見守ることという考え方が当たり前のものになっている「男性中心社会」について、筆者の実体験を通じて異議を唱えている。
    男性自身、女性自身でさえ気づかなくなっていることを気づかせてくれる作品。男女問わず読むべき。

  • 毒親問題の急先鋒ともいえる田房さんの本。男は性欲に対してオープンなのに、女はあまりオープンだとよろしくないとする現代社会はまだまだ男尊女卑が残っているのだろう。将来は腹減った、と言うのと同じくらいオープンに出来ればいいのかも知れないけれど、男女では行動様式が違う以上、なかなかそうもいかないのか。
    取り敢えず今は、時の流れが変えてくれるのを見守ることにしようか。

  • 度々噴きだしました。見方によっては少しフェミニズムっぽいところがありますが、確かにと納得させられる鋭い視線。男と女ってやっぱ根本的に違うということがありありとみえた。エロ本から広がるファンタジー。

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