男しか行けない場所に女が行ってきました

著者 :
  • イースト・プレス
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本棚登録 : 447
感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784781612799

作品紹介・あらすじ

お宅のダンナ(カレシ)、
こんな楽しいことしてますよ…。
羨ましすぎるッ! (怒)

エロ本の取材現場を「女目線」で覗いて気づいた「男社会」の真実。


ベストセラー『母がしんどい』『ママだって、人間』の田房永子の最新刊。

女として、男の風俗や欲望を見て、それなりに驚いたり、発見があったとしても、本当に思ったことはレポートできない。「こんなことを思ったから、そのまま書きたい」と編集者に言っても「そういうのはいらないです(笑)」と言われてしまう。(中略)男性向けエロ本の中には、「女」についての情報しか書いてないけれど、私にとっては「女」から一番遠い世界だった。(「はじめに」より)



第1章 男しか行けない場所
第2章 男のための場所で誘ってくる男たち
第3章 男しか行けない場所で働く女の子たち
第4章 エロ本を作る男たちと私
第5章 実は男しか行けない場所

感想・レビュー・書評

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  • テレビ大阪で放映されている「さらばのこの本ダレが書いとんねん!」で紹介された本です。
    手に取るのが恥ずかしい表紙ですが番組にゲストで出ていた著者がとても面白かった上、図書館の蔵書検索でヒットして大丈夫な本であるお墨付きをもらった気がしで借りました。

    著者の田房さんが風俗雑誌のライターとして20年前ほどに取材されたことが女性目線で書かれています。
    取材をを通して女性である著者が何を見てどう感じたか、を読んでいると、可笑しくもあり、滑稽でもあります。
    男女の性に対する不公平さに気づかされ、世の中の性差が少なくなっていくことを願わずにはいられません。

  • この世は男中心にできており、それが最も露骨に現れる場の一つはセックスである。
    誰もが知っている真実だが、誰もが敢えて触れようとはしない真実でもある。フェミニストですらそうだ。なぜならセックスの場において自分と相手との間にある優位と劣位の差に気がついてしまうことは、とんでもなく痛いことだからである。
    だから男向けエロ業界を女が観察してきました、というルポの多くは、男と一緒にエロが楽しめちゃう私、というキャラをかぶったり、冷静な観察者というキャラをかぶって書かれている。この本が他と大きく異なるのはそこだ。田房さんは、自分が現場にいる時に感じるざらっとした感触から目を背けることができるほど、器用な人ではない。
    ていうか、心配になるくらい不器用な人だと思う。なんで男たちが無意識に醸し出す優越感に対して人一倍敏感な人が、わざわざこんな辛くなりそうな仕事を選んじゃったのかと、田房さんが取材する風俗嬢の方ではなく、田房さんのことが心配になってしまうくらいだ。
    田房さん自身は風俗ルポの仕事を選んだ理由を、「そういう仕事に憧れがあった」としか説明していないけれど、たぶん風俗の現場に敢えて踏み込むことで、男の態度にも痛さを感じないで生きていける私になりたかったんじゃないだろうか。酸いも甘いも噛み分けて、男とは女とは世間とはそういうもんだよねと飲み込んでしまえれば、痛さを感じずに生きていける、と。
    でも田房さんはそれほど器用な人ではなかった。だからこそ、この社会の本質が見えるようになったんだと思う。その本質とは、この社会全体が「男しか行けない場所」になってるんだということ。男中心の社会だからこそ、性風俗がこんな形でできあがってるのだ。
    そんなこと、とうに知ってたって?でも自分の痛みを痛みとして感受できなければ見えないことがある。そして自分の痛みを認識するのは決して容易なことではないのだ。

  • 男性中心の、と言うか男性中心が当たり前で、その事に無自覚な社会に対する怒りや諦め、嫌悪感に根差した観察眼や辛辣な意見は面白かった。

    本作は、エロ本に風俗店やAV嬢の漫画レポートを描く仕事をしていた作者による業界ルポである。作者にとって風俗業界は、男性中心社会の象徴でもある。最初は能天気な業界ルポだったものが、だんだんと冷徹な視線による業界分析に変わっていく。エロ本には「女」の事ばかり書かれているけれど、「女」からは程遠いと言う考察もその通りだと思った。

    けれども、風俗嬢やAV嬢といった業界内の女性の記述になると突然鋭さが鈍る。業界内で生きていく女性を羨みながら軽蔑していると作者自身が書いているように、作者の感性は、業界内にいながらも一般人に近い気がする。そこで働く女性との間に距離があるのだ。その点が少し残念な気がした。

  • すごーくよかった。やっぱり田房さん大好き。絵もすごい効果的で、よかった!絶妙ー!単に、こんなんでした、というレポだけじゃなくて、田房さんの意見とか、視点があってすごくいいし、なんども心の中で大きく頷いた。特に面白かったのは、人形のとこのヤーさん3人、阿佐ヶ谷さんの絵(肉まん 笑)、ツーショットダイヤルの20歳さばよむおっさんの絵 (顔がリアルに目に浮かぶ)、他にもいっぱいあるけど。女のためのAV撮影参加のとこもよかったし(こんな機会普通の人には訪れない)、家に終電で帰る男の子育てしてない自覚のなさとか、女には安心安全に発散できる場所サービスがないだとか、名倉がブレないとか、ほんとそうだ。最初に男男男男女、の図がでてくるんだけど、最後のほうに、自分はしずかちゃんの位置になりたかったんだ、だからエロ業界なのだ、というのが自分分析していて、なるほどーと思った。この方には、ぜひとも中村うさぎさんとか、大野佐紀子さんとか、小倉千加子さんとかと、対談してほしいと思う。いや、私が普通におしゃべりしたい、だらだらと。私のかわりに色んなモヤモヤ文章にしてくれて、ありがとう、という感じ。これからも期待しています。

  • エロ雑誌でルポ漫画を描いている筆者が、エロ雑誌には書けなかった女だからこそ感じるあれこれを綴ったエッセイ。
    下世話な好奇心で手に取った男性陣はぶったまげるだろう。
    エロや下の話もあるにはあるが、むしろ筆者が膨大な量のフィールドワークをもとに、風俗の世界に如実に表れるジェンダーとセクシュアリティの問題、ダブスタ、男から見る女の分類、などなどについて真面目に考察した社会学に分類されるべき一冊である。
    ジェンダーを語る上で風俗はやはり切り離せるものではないと改めて感じた。

    最終章のAKBに関する考察が秀逸。
    こんなにも分かりやすく、モー娘。との違いも絡めてAKBを論じたものを読んだことがなかった。
    私自身、とある事情でAKBのことはデビュー前から知っていたが、ずっと気持ち悪いという思いが拭えずにいた。
    それを何となく許容できるようになったのは、13年のAKB選抜総選挙で指原梨乃が1位になった頃からであり、AKBの枠を飛び出して単独でTVに出る彼女を見てみたら、指原梨乃は自分の考えをしっかり持ち、それを自分の言葉で語ることのできる人で、いわゆる「女に嫌われる女」ではない。
    彼女を応援している人の中には相当数の女性も混じっているように思う。
    しかしAKBという男が作った男のための集団を、女性も享受しているという今が、いいことなのか悪いことなのかよく分からない。

  • 男って馬鹿で自分勝手だなと思いながら読了。そしたらあたし気づいちゃんったんです、あっ!あたくしも男だって。

  • 女性の漫画家の筆者が男性にしかいけないところ(風俗店など)のレポートについての体験をエッセイとして記載した本。

    前半は風俗レポートが書かれている。様々な風俗店があること、女性からみて何の需要なのか理解できない滑稽さ(男性の自分からもよく分からないもの多数)が面白い。
    人の好みは多種多様で、他人にとっては無駄なくだらないものでも、それを真にを求める人がいる。でもそのくだらなさが人間らしく面白いな、とか思う。

    ここまでだと単純に色モノ的なレポートにとどまる印象なのだが、このエッセイの魅力は中盤から後半にある。

    中盤から後半に関しては風俗店のレポートではなく、筆者が漫画を掲載していたエロ本の編集者だとか、身近な人々との関係性の話になってきて俄然面白くなる。筆者とのコミュニケーションの中で見えてくる人間の業のようなものを鋭く切り取っている。

    世の女性にとっては常識な感覚なのだろうが、女性目線で見た場合の男性は、いつまでも幼稚な部分があり、女はその男性の性質をわかったうえで、純粋だったり何もわからないふりをして、男性を立てるような振る舞いをする。

    この筆者もそのようなふるまいを仕事などを潤滑に進めるための技として当然のように使ったいるのだが、心の底ではその男性のニブさなど、男女差の不条理さなどに違和感を感じている。

    そんな中男性しかいけない場所に行くことで、女性として男性目線を体験をすることは、女性としては非常に無理のある、ばからしい行為であるからこそ、男性の滑稽さ、女性が女性を演じる滑稽さが浮き出てくる。

    私は男性なので、やはりこのような目線で男性の性に関する考え方を語られることが非常に新鮮だった。というか、女友達とかからこのような発言を断片的に聞いたことがあるので、今更ながら腑におちて理解しやすかった。という感覚に近い。

    最後の方に記載してあるAKB48への考察が非常に面白かった。モーニング娘とも違うAKB48の立ち位置と、お母さんと息子の関係、おばあちゃんと息子の関係性に例える部分の、絶妙さ。

  • 話題のチョイスも、知りたかったかゆいところに手が届く、イイ感じなのだが、

    それよりも何よりも、筆者の人物や社会に対する観察眼がもんのすごい。

    近くにいると、仲良くなれそうな方だと思った。

  • 澄ました顔で入ってくる男がムカつく

    ピンク映画館で自由にくつろぐおじいちゃんが羨ましい

    男はそこそこでも満足するが、女は対象の外見や性格や態度、言動にこだわる

    くわえ方や握り方はみんな彼氏から教わっていた

    女から男への施しは、まず男の方からのこうしてほしいという要望から始まる

    男の方からむしゃぶりついてきて、それに対応しながら自分の気持ちよさを探す

    女よりも物知りで頭が良いふうに振る舞いたがる
    現実がそれと違う場合は、自己をあたらめるのでなく不機嫌になることで圧力を感じさせ凄いというように誘導する

    男性目線と女性目線の違いが参考になる

    優しくしたり気遣ったり女扱いする事で、だんだん一番の適任者に思えてくる

    自分が幸せかどうかという視点

  • この本はただのエロレポートではない。作者はこれでもかこれでもかと男性のショーもなさ過ぎる性欲発散方法について読者に突きつけてくる。男は自分達は開放的な性活動を行っているのに女が同じ事をしようとすると途端に軽蔑視したりする。この身勝手さ。この身勝手さは性風俗に限らず色々な場面で遭遇する。日本の男性はもっと自立すべきではないだろうか。

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著者プロフィール

1978年東京都生まれ。漫画家、エッセイスト。武蔵野美術大学短期大学部美術科卒業後、漫画家デビュー。2001年第3回アックス新人漫画賞佳作受賞。2012年、母との確執による葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を刊行。そのほかの著書に『しんどい母から逃げる!!』(小学館)、『キレる私をやめたい』(竹書房)、『ママだって、人間』『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』(共に河出書房新社)、『大黒柱妻の日常』(MDNコーポレーション)などがある。

「2021年 『なぜ親はうるさいのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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